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じゃがいもの花が咲く頃

じゃがいもの花が白いことを、どれだけの人が知っているだろう。

少なくともわたしは、何も知らずに生きてきた。

短期移住している十勝ではじゃがいもがたくさん作られる。そんな地で、身近なじゃがいもを新たな側面で眺める。


じゃがいもの花について


わたしはじゃがいもを毎日と言っていいほど食べる。
タマネギ・にんじんに加えて、じゃがいもは、なくなりそうになったら欠かさず買う、定番選手だ。
けれど、わたしはじゃがいもの花を想像したことがない。
土の中にある「根っこ」の部分をいただいているのだと知ってはいても、その上にある葉や花のことなど、1ミリも。

ここ十勝では、最近一斉に白い花が咲いている畑があり
それがどうやら、じゃがいもらしいと知った。

茶色い畑から、ぐんぐん育ってきた作物。
この作物なんだろうねと言っているうちに、白い花が咲き始め、それが一面に広がって白と緑の綺麗な模様の畑になった。

この辺で作られているのは、小麦、枝豆、とうもろこし、てんさい、じゃがいもあたり。
小麦でもない、枝豆でもない、…と消去法で、じゃがいもに思い至り、
ネットの力も借りて、じゃがいもの花が白いことを知る。

わさわさとした葉っぱの上にふんわり咲く大粒の白い花がかわいらしい。

白い花が広がる畑は圧巻


うちの庭の裏の畑にも白い花が咲き始めて、じゃがいもだったと判明する。
今や広がる畑をびっしり埋め尽くす白い花。うちの庭のすぐ裏に、無数の芋が埋まっていると思うと面白い。

どこまでも無数に広がる白い花。
じゃがいも畑の花は風物詩としても知られる

メークインの買えない店


中札内から帯広へ行く途中、同じくじゃがいも畑が広がっているエリアがある。
白もあればピンクも。
ピンクの花は、品種違いのじゃがいも、「メークイン」らしい。
一面にピンクの花が咲く様子は、さながられんげ畑のようだ。


ここは大正区というエリアで、北海道のメークインの3割を生産しているのだそう。
その道沿いに、「メークイン産業」という立て看板の建物がある。
名前からして気になるが、看板にはさらに、「メークイン」「アスパラガス」「長芋」、
などと農作物の名前が大々的に並ぶ。
ネットで調べたら、JAのやっている、じゃがいもなどを専門的に売るお店だそうな。
行ってみたい。

買い置きのじゃがいもが切れてきたとき、どうせ買うならメークイン産業で、とじゃがいもを目当てに訪ねてみた。

入ると売店のような作りだが、並んでいるのはどこにでもある市販の菓子や、袋詰めの豆、でんぷんなど。
じゃがいもを発見できない。

それでもなにかじゃがいも関連のものをと、とりあえず名物らしい加工品「じゃがバター」を買う。空港でも販売されている人気商品らしい。

レジでお支払いをしつつ、お店の人に、こちらではじゃがいもは売っていないのですかと質問。
すると困ったように、今は売っていませんの答えが返ってきた。

今は、花が咲いているので。という言葉にハッとする。
今は花が咲いている時期で、いもができるのは秋。その頃にはたくさん並ぶんですという。
ちなみに販売は9月中旬から3月くらいまでとのこと

周りの畑を、花だ花だと眺めていたはずなのに、ネットの情報通りにじゃがいもが売られていないと、馬鹿みたいに質問してしまった。

やはり、わたしの中のじゃがいもには、花がない。

わたしの中のじゃがいもは、いつでもそこにある、どこからともなく袋に詰まってやってくるものとして存在している。
それに改めて気づかされ、恥ずかしくなる。

スーパーにはいつでもたくさんのじゃがいもが並んでいるが
今時期並ぶのは貯蔵いもである。
長期貯蔵によって、デンプンが甘くなるというメリットもあり、ホクレンが「よく寝たいも」などをブランド化していたりする。
技術の進化は素晴らしく、
私たちの快適な食生活を支えてくれる。

その一方、収穫時期からしばらくしかイモを売らない産地のお店が、
花が咲き実が太る、そんな実りをいただくという当たり前のことをシンプルに思い出させてくれた。

9月にまた来ますと言って店を後にした。
これからも、わたしは年中じゃがいもを買うだろう。そしてじゃがいもを買うたびに、私はこの店を思い出し、辺りに咲く白とピンクの花を思い出す。
9月には箱買いするぞ、と決意する。

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