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【特集】 オヤジの科学 "レコードプレーヤーを作ろう”03 ~軸受とベルトを勉強しよう~
さて、おやじの科学もいよいよ3回目、レコードプレーヤーについて勉強しながら、実際に作ってしまおうという企画ですが、まだまだ学習の最中です。
はやく作りたーい!という気持ちを抑えながら、しっかり「科学と学習」しちゃいましょう。
前回までで、とりあえず中国製ユニットがあれば、プレーヤーそのものは簡単に作れてしまうことはお伝えしました。実際、巷に溢れる1万円プレーヤーのほとんどは、この中国製ユニットと筐体の組み合わせだけでできているので、細かな調整はせずともポン付けで製品が完成してしまうという恐ろしさです。
しかし、このnote記事シリーズでは、「ユニット」を利用したプレーヤーと、「ユニットを使わず、一から新造」したプレーヤーの両方を作ってゆきますので、じっくり腰を据えて取り組みましょう。
さて、今回はプレーヤーの駆動系のキモ、「軸受(じくうけ)」とベルト部分を見てゆきたいと思います。
学研さんのトイ・レコードメーカーを作った方はすでに「ベルトをかけた」記憶はあるでしょう。ターンテーブルを回す「ゴムベルト」は必需品ですが、マニアの世界ではゴムだけでなく「糸ベルト」なども開発されていたとか。
国産のプレーヤーは、モーターで直接ターンテーブルを回す「ダイレクトドライブ(DD)」の方向へ発展しましたが、DJ機器として完成されたDDプレーヤーは5万円とかします。そりゃあ、価格帯では中国製に負けてしまうのもわからんでもない。
ひょんなところで、日本とアジアのものづくりの対比が見えてしまい、なんとも言えない失われた20年を実感してしまいますね。
ちなみに国産のプレーヤーのほとんどは、MM型カートリッジ+フォノイコライザー搭載ですから、音質がよく値段が高いです。
中国製はセラミックカートリッジ+フォノイコライザーなしです。このユニットが2000円以下ですから、恐ろしい話。
さて、軸受けの話に戻しましょう。レコードプレーヤーの軸受けは、その多くが「スピンドル軸受け」と言って、いわゆるターンテーブルの中心の軸が、そのままちょっと奥深い軸受けにささっている形になっています。軸受け専用のオイル(グリス)などが満たしてあり、回転の摩擦に耐えるしくみです。
とまあ、これが正式な軸受のしくみですが、中国製のプレーヤーユニットには他では見られない不思議な特徴があって、
スピンドルが回転しない!(固定されている)
という仕様になっています。
これは国産ではみられない形式で、どうしてこんな仕様になっているのか世界7不思議のひとつ(嘘)ですね。
(↑中国製プレーヤーユニットの下部。)
さて、学研さんのトイ・レコードメーカーもかなり変わった軸受けの構造をしています。付録の製作の時には、この部分を意識せずに済むように作られていたので、たぶん誰も気付いていませんが、こちらのマシンは通常のレコードプレーヤーとは異なるしくみになっていたのです。
トイ・レコードメーカーの軸受けは通常のボールベアリングで、ターンテーブルは2重構造になっています。あまりレコードプレーヤーの形式としては見られないスタイルですが、付録として作りやすくする工夫かと思います。
(ターンテーブルを分解すると6200Zのベアリングがはまっています)
(ターンテーブル裏側)
(スピンドル軸)
(ベルト部と、二重ドラム部)
(ドラム部をずらしてみたところ)
☆ベルトは裏側のドラムにかかっていて、軸を通して表のターンテーブルと繋がっています
学研トイ・レコードメーカーはサイズが小さく、5インチ用ターンテーブルなのですが、実は中国製ユニットとドラム経は同じです。モーターも共通なので、回転数とドラム経の関係が同一ということになりますね。
こちらが中国製ユニットのターンテーブル裏側、ベルトをひっかける部分の写真です。本来のターンテーブル径に対して、ベルトのかかっている部分の径が小さいことがわかると思います。(12.5センチ)
というわけで、今回の学習は「軸受」と「ベルト」部分でした。ベルトは計測すると半折で20センチ、両端40センチのベルトが使われているようです。
これらの構造がわかったところで、「さあ、どういう風にプレーヤーを設計しようかな」とワクワクしてみてください。
次回に続きます。