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麻酔vs私

本当に怪我をしているかわからないシュレディンガーの膝の中身を確認してもらう手術をしました。

手術が終わり開口一番
「やっぱり靭帯切れてましたか?」
と先生に質問すると
「そうだね、切れてるね」
と優しく、淡い期待を鋭く切り刻む回答をしてくれました。

まだ体内に残っている麻酔の効果を使い切るように眠りにつこうとする朧げな意識の中で私は麻酔に負けたことをゆっくりと自覚したのでした。


手術前、同じ病室で仲良くしてくれてる方や、リハビリの先生が、私がさぞ緊張しているのではないかと心配して声をかけてくれました。
みんなが想像していなかった「ワクワクしています」という私の見当違いな回答で、こいつは心配いらねえなと思っていただけたのか、「麻酔の効き目はすごいから、麻酔の力に勝てるかどうか抗ってみたらいいんじゃないか。」という見当違いな提案をご教授していただきました。
やってみようと思いました。

手術当日の朝はなんとなくソワソワしていました。
これは緊張からなのか、早く手術をしてもらいたいとはやる気持ちからなのか…。

手術着に着替え、その上からコルセットをつけると、防御力が低いんだか高いんだかはわからないけど、重病人感が果てしなく高い私が完成しました。恥ずかしい。

経験豊富そうな先生が、「いい髪色しているね」と手術室に入るなり褒めてくれました。
テレビっ子だった私は、ドラマでしかみたことない手術をする類のお医者様になんとなくとっつきにくい、威厳に満ちているイメージを抱いていましたが、
そんなイメージをボロボロに砕いてくれた先生に親近感が湧いて、「やっぱりそうですよね。お気に入りなんです」と、今から手術するとは思えない緊張感のない会話をすることができました。
実はここは病院ではなく美容院だったのかと一瞬考えてしまいました。
美容院に行くと連絡したつもりが、病院に行くと連絡してしまう変換ミス誤字あるあるの実写版かなと思いました。

そんなこんなで手術台の上に寝転がり、いよいよ麻酔との対峙です。
脳内ではゴングが鳴り響き青コーナーの私が防戦一方、赤コーナーiPhoneの充電コードのようにぶち刺された点滴の管から入ってくる麻酔のジャブを喰らいます。
腕がピリピリすると思った直後、サウナ入った後の外気浴をしている時と似たような浮遊感に包まれました。

よし、戦いはここから。絶対に寝るもんか。

と思っていた私を遠くで呼ぶ声が聞こえます。
「意識大丈夫ですか?手術終わりましたよ」

…ん、?
あれ私寝っ、?えっ?
今起き、?え、?

負けました。
遠くで私を呼んでいた声はだんだん近くなり、私を起こしてくれていることに気づくのに時間がかかりました。
寝てる意識のないまま起こされました。
セーブし忘れたRPGの主人公はゲームの中できっとこんな気持ちなのでしょう。混乱するからやめてあげてください。
そして冒頭の私へと繋がっていくのです。

実際手術台の上に寝転んだ時からすでにあれなんか眠いかもって感じてて、空気中に麻酔が漂っているのかななんて思ったりしてたんだけど、そんなことは当然ありません。
手術台の上に横になっただけで眠くなるプラシーボ効果の恩恵を受けまくってる私が麻酔に抗おうなんて100年早かったのかもしれません。

とはいえ、今回の戦いは前半戦に過ぎません。
あと一回手術があるので、後半戦の私にも乞うご期待!
鍛えたところで厄介にしかならないし、そもそもどうやって鍛えていいか分からない麻酔への対抗力を鍛え、麻酔にリベンジ、かまします。

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