春の味覚と福島第一原発事故(その3)
コシアブラの根を掘ってみましたの巻
これまでの記事の振り返り
本記事では「コシアブラ新芽で放射性セシウム濃度が高い原因」として、
3つの目の可能性の、
「コシアブラは根を浅く張るため、放射性セシウムを吸収しやすい」について検証します。
土壌中の放射性セシウムの分布について
コシアブラの根が浅く張ることと新芽の放射性セシウム濃度が高いことは一見関係なさそうに見えます。
しかし、福島第一原発事故に由来する放射性物質は、
土壌の表層にそのほとんどが局在していることが分かってます。
例えば福島県伊達郡川俣町の森林内の調査では、2011年7月時点ではF層(落葉・落枝などが、細かく分解され原形は失われているが、肉眼で元の組織が確認できる層)に
アカマツ・コナラ林では90%、スギ林では50%の放射性セシウムが蓄積していました。(JAEA:根拠情報Q & A参照)
その後、数年間かけてF層の放射性セシウムは土壌層に移行しました。
土壌層に移行した放射性セシウムは2019年8月時点では70%以上が表面から3 cm以内に、90%程度が表面から10 cm以内にとどまっています。
もしコシアブラの根が他の樹木に比べて地中に浅く張っているのであれば、土壌中の放射性セシウム濃度の高い部分に根が接触していることになります。
つまり、放射性セシウムは水や他の栄養分と同様に根から吸収されているため、コシアブラが浅く根を張っているのであれば、放射性セシウムを吸収しやすくなっていることは十分あり得ます。
動画中にあるように、得られた結果として、
(1) コシアブラの若木の重量の半分は土壌表面の0〜10 cm以内にある太い根
(2) 根の90%以上が土壌深度0〜10 cm以内にある
(3) 根の主な深度分布(0〜10 cm)に90%以上の放射性セシウム が存在
(4) 放射性セシウム濃度は、地上部では上部の葉で、地下部では細い根で高い → 成長している部位で高い濃度
(5) 同様に養分の通り道である樹皮で高い濃度
→ 放射性セシウムは養分とともに吸収される
つまりコシアブラは、
1. 放射性セシウム濃度の高い土壌表面に根を張り
2. そこから栄養を吸収して、地上の成長部に送り込む
3. 結果として、新芽の放射性セシウム濃度が高くなる
と考えられます。
ということで...
私も実際に掘ってみました!
写真からわかるように、コシアブラは土壌に入った途端にぐいっと曲がっていて、土壌表面と水平方向に根を伸ばしていました。
そういえば、以前に購入したコシアブラの苗も根の部分で急に曲がっていました。(下の写真)
この若木は1.5 m程でしたが、一番長い根の長さは2.4 mもありました!
こうしてコシアブラの根と格闘すること30分…
取ったどー!
この調子で、11本のコシアブラを堀り起こしました。
結果は以下のようになりました。
土壌表面から10 cm以内にある根の重量割合は、個体ごとに75%〜100%までとばらつきがありました。
結果として個体の大きさに関係なく、コシアブラの根は、算術平均で90%が土壌表面10 cm以内にあることがわかりました。
この結果はコシアブラの新芽の放射性セシウム濃度が高い原因として、
根が地中に浅く張っており、土壌中の放射性セシウム濃度の高い部分に根が接触している可能性が考えられます。
もちろん、同じようなことを他の樹木(例えばタラノメ)なんかでもやってみて、コシアブラのみが土壌の浅い部分に根を張ることを証明しないといけません。
しかし、私の体力ではもうこれ以上根を掘るのは困難です。
もう少し洗練したやり方で確かめた方が良いかもしれませんね。