三浦半島釣り魚図鑑(18) キュウセン(オス)
今までスケッチしてきた魚のほとんどは子どもが釣ったものなのだけれど、このキュウセンは正真正銘私が釣った魚。そして、昔した船釣りを除いては多分、私史上最大の大物!とは言っても全長20cmなので、一般的な釣り人からしたら全然小物サイズなのだろうけれど。
でもこの魚についてはけっこう語りたいことがある。まず名前。派手な見た目から想像がつくようにベラの仲間で、キュウセンベラとも呼ばれる。この名前の由来は体に線が9本並んでいるからと誠にわかりやすい。
本当に?と思って数えてみたが、点線のような感じで途中で消えていたりもする上、背ビレにも点々が並んでいるので数える場所によっても違う気がする。でもおおむね9本ということでよさそう。このキュウセンという名前はもともと三浦半島の三崎での呼び名らしい。ちなみに漢字で書くときは、九線ではなく、求仙と書くという。
釣れたのはまだ暖かな秋の日。テトラポッドからのエサ釣りで、この日は他にもニシキベラやホシササノハベラも釣れた。でも、このキュウセンが一番大きかった。釣りエサのイソメが少なくなってきたので、途中から岩場の貝をイソメと一緒にエサに使っていたら、かかってくれた。
で、この絵に描いたキュウセンはオスである。それというのも、見た目がかなり派手だから。キュウセンのメスは地色が白から薄いピンク色に、焦げ茶色の線。オスは地色が黄緑から青っぽく、ラインは赤と、ド派手な上に大きい。
実はキュウセンは性転換する魚として知られていて、小さめの頃はメスとして過ごし、大きくなってくるとオスになるんだそう。
さらには、もともとメスのような見た目の中にも生まれながらのオスが一定数混じっていて、メスのふりをして過ごしているらしい。うーん、面白い。
植物の仲間では、株が充実していないうちは雄株で、大きく育つと雌株になって種をつくる、というものがけっこうあるのだけれど、それの逆パターン。
ちなみに以前紹介したホシササノハベラやマハタも、キュウセンと同じように大きくなるとオスに性転換する魚だそう。でも見た目がここまで劇的に変わるわけではないので、あまり見分けがつかない。
このときのキュウセンを捌いたら、お腹の中にはたくさんの小さなカラスガイのような貝がらがたくさん入っていた。やっぱり貝が好きらしい。岩場についている貝を貝殻ごと食いちぎって食べているよう。そういえばこのキュウセンもほかのベラと同じように、小さな口の割には歯が鋭い。
以前も書いたけれど、キュウセンはうちの子が一番好きだというベラ。なので、シンプルに塩焼きでいただく。柔らかくてくせのない味で、やっぱりおいしい。自分が釣ったとなればなおさら。
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