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庭には4羽にわとりがいる 小屋づくり
にわとりとの暮らしについて書いているシリーズ3回目。だいぶ実際の時間とのタイムラグがありますがご容赦を。
ひよこが届いて2週間ほどは加温しながら育てることになるので、室内の段ボールなどでも大丈夫だけれど、その後は外の鶏小屋に放つことになる。ひよこの成長は案外と早いのだ。飼うことを決めてからわずか1ヶ月ほどで小屋をつくらなければいけない計算になる。大丈夫かな。
「自然卵養鶏法」の中島さんの本では、トリには新鮮な空気が必要、ということが強く言われている。基本的には全面ネット張りが好ましく、壁などはつくらないほうがいいらしい。ということで、まずはチキンネットを購入。鶏小屋をつくる費用のほとんどはこのチキンネット代となった。
ニワトリは寒さには案外強く、暑さには弱いのだそうで、鶏小屋は家の北側の裏庭につくることにする。冬は日が当たらないので寒くないか少し心配だけれど、夏、直射日光がガンガン当たるよりはよさそう。
養鶏場のニワトリは、普通何段にも積み重ねられたケージに入れられて、一生をそこから出ることがないまま過ごすらしい。このニワトリたちは、1㎡あたり16羽ほどという過密飼いされているそうだ。
本によればニワトリが気持ちよく過ごせる小屋の大きさは10羽で1坪(3.3㎡)だという。うちでは4羽飼うことにしたので、1畳もあれば十分だろう。それまで植木などを置いていた場所を整理して、小屋用地として1畳ほど確保した。
小屋造りの材料として、裏山の孟宗竹を使いたかった。庭師だった「おおきいおじいちゃん」が山にあがれなくなってから、私たちの手だけでは十分な手入れが行き届かずにいる竹林だけれども、材木として使う、という理由があれば、不要な竹刈りもはかどるというもの。さっそく立ち枯れたような竹の中からきれいそうな所を選んで竹材を得る。
掘立式だと土に埋まっている部分が腐りやすいので炭化させると良い、と勉強会で教わった通り、下のほうを焼却炉で燃やしてみる。加減がわからず、そろそろかな、と取り出した時にはだいぶ燃えて短くなってしまっていた(笑)
まず、この竹の柱を3本と、たまたま邪魔で切り倒していた榊の木を1本四隅に立てる。榊の幹がほどよく曲がっているのが、なんかいい味になりそう。簡単な図面は書いたものの、ほとんど現場合わせの文字通りの掘っ立て小屋。
このあたりではタヌキやハクビシンを見かけることもあるし、近くではアナグマがいるところもあるという。もちろん、猫やヘビも心配だ。柱の間の辺の地面に接する部分は、地面を掘って獣が侵入することがないように、ブロックを埋めて行き、チキンネットも下の方15cmくらいは埋まるようにめぐらせていく。
臆病者のことをチキンという言葉があるように、ニワトリは強い刺激がストレスとなるようで、大きな音や、猫が小屋の外を通ることなども不安にさせるので避けたほうがいいそうなのだけれど、それには、ニワトリの背の高さくらいを目隠ししておくといいと聞き、そのあたりにも割った竹をめぐらせる。実際にはまだ小さいひよこにはけっこう見えてしまうのだけど、まあ気休めということで。
ニワトリは大人になってもせいぜい30cmくらいの背なので、小屋の高さはそれほど高くなくてもいいのだけれど、人が入れた方が何かと便利だし、止まり木などを設置すればニワトリは高いところにもあがる。夜は高いところの止まり木で寝る習性があるというので、小屋の高さは180cmほどにして、屋根に近い部分は雨避けも兼ねて、竹を貼った壁にした。
屋根は、以前別の場所で使おうと思って買ってあったポリカーボネートの波板があったので、それを利用する。
床面は基本的にその場の地面、土間だ。餌となる残飯、ぬかや草、ニワトリのふんがニワトリの脚によってかき回されて、自動的に発酵肥料(ぼかし)ができる仕組み。
止まり木は裏山の剪定した枝などを組んで作る。風情よく、安定感ある形を目指す。地面に置くものと、小屋の壁近くの柱に打ち付けるものと2か所できた。
小屋作りのほとんどを、私と息子のふたりで作業したのだけれど、テキトーながら案外なんとかなるものだった。これを機に、長年欲しかったインパクトドライバーを購入したのだけれど、割れてしまうのではないかと思っていた竹もネジで止められることがわかり、作業がだいぶはかどった。
ひよこを外に出してもいいとされる時期から10日ほど遅れて、我が家の鶏小屋は完成。どこからどう見ても掘っ建て小屋だけれど、見ようによっては味のある家ができた。環境に優しいおうちだし、なによりこの家に住むのは私じゃない。ニワトリたちが気に入ってくれさえすればそれでいいのだ。
朝晩はまだ肌寒いこともある6月はじめ、いよいよひよこ達を小屋に入れて、夜もそこで過ごさせる。初めの頃は小屋の中のダンボールで寝ていたひよこたちも、案外早くにダンボールのふちに止まって夜をすごすようになり、気がつけば外の止まり木で寝るようになっていた。新鮮な空気にあふれた小屋がよかったのかわからないけれど、病気になることもなく、すくすく育っている。
ニワトリを見ていると、人は欲しいものを手に入れすぎてしまったのではないかと思うことがある。あるいは、自分たちで環境を制御しすぎて、もはやその中でしか生きられなくなってしまってはいないか。
あたたかい服、おいしい食べもの、風をさえぎり、雨を避けられる家。いつでも欲しいときに飲める水。
そんな中で育った私たちにそれは必要不可欠だけれど、それがなくても生きることのできるポテンシャルが人にはもともと人にはあったのに違いない。本当に必要なのは新鮮な空気と一握りの食べもの、安全に夜を過ごせる場所くらいだったんだろう。
雨が降った日、風が強い日、凍るほどに寒い日は、ニワトリたちが弱ってしまいはしないかと心配になる。最初の頃こそ、風除けの板を立てかけたりしてみたけれど、どうやらそんな必要はないとだんだんわかってきた。
野鳥はみんな何もない雨晒しの環境で自由に育っているではないか。ニワトリがもともともっているであろう生命力を信じて、なるべく、外に近い環境で育てる。小屋はあくまでも、鳥がどこかにいってしまわず、鳥を食べる獣が入らないようにするという程度に。
素人の作った掘っ立て小屋は、その後も台風で飛ぶこともなく、今のところ無事ニワトリたちを守り続けてくれている。