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高級老人ホーム 私がお客様におすすめする時の着眼点

老人ホームの中でも、入居金が数千万円以上と設定されている、いわゆる高級老人ホームへの入居を検討されている方からご相談をいただくことがあります。
大きな買い物だけに、悩む方も多いようです。

私がお客様に高級老人ホームをご紹介する時に、何を見て、何を重視しているのか、記事にしてみました。

高級老人ホームとは

高級老人ホームの明確な定義はありませんが、一般的に言われる特徴は以下の通りです。

費用

入居する際は、初期費用として入居金(入居一時金)を支払う必要があります。入居金には、家賃の前払いという意味合いがあります。
想定居住年数の家賃の全額や一部を入居金として設定しています。
高級老人ホームでは数千万円が多く、関西には入居金が数億円という老人ホームも複数あります。

共用設備

温泉やフィットネスジム、ダイニングルーム、卓球場、麻雀室、シアタールームなどを備えている場合が多く、お元気で活動的なシニアにとって魅力があります。

お元気な時からの入居

「老人ホーム」と聞けば、介護が必要な方のための施設とイメージしますが、高級老人ホームでは、お元気な時に入居する方が多く、入居時の条件に「自立(ご自分のことができる)」としている場合もあります。
また、介護が必要になった時には、介護専用の居室に移る、または居室はそれまでと同じで介護サービスを利用するという2パターンがあります。

立地

都市部や利便性の高い地域に建てられています。
ターミナル駅から徒歩圏内であったり、駅からの送迎シャトルバスがサービスとして組み込まれていたりします。

建物、内装

高級リゾートホテルや豪奢なマンションのような外観です。
内装も、コンセプトに沿った雰囲気で、ヨーロッパ調、和モダン、ナチュラルなど、どれも趣向を凝らしています。

介護・医療体制

元気な時から入居される方が多い高級老人ホームですが、介護や医療サービスにも力を入れています。
介護福祉士や看護師、理学療法士などの有資格者を配置していたり、職員を多く配置していたりと、手厚い介護サービスを提供しています。

見学時から手厚いサービス

見学者には、駅からの送迎、食事の試食、おみやげなど、見学時から丁寧な対応をします。中には自宅からの送迎をするところも。
パンフレットやアメニティグッズもセンスの良いものが多いです。

高級老人ホームへの間違ったイメージ

高級老人ホームに入居すれば、幸せな老後が約束されると思う方がいますが、私はイコールだとは思いません。
理由は、以前書いたこちらをご一読ください。

私がおすすめする時の着眼点

高級老人ホームといっても、それぞれに個性があります。
というより、一般的な老人ホームよりも、尖った個性を持っています。
その個性を知り、理解し、自分と合うかどうかを熟考する。それが高級老人ホームを選ぶ時の重要ポイントです。

Aホームの場合

例えば、Aホームは、高級リゾートホテルのような豪華な外観、ホールでは毎月クラシックやジャズのコンサートが開催されます。
居室からの眺望はすばらしく、全室オーシャンビューです。
すべてにおいて、きらびやか。入居されている方も華やかで、アクティブな雰囲気です。
入居定員が多く、大規模の利点を活かした充実した設備を誇ります。
温泉、カラオケルーム、スカイラウンジ、シアタールーム、音楽室、マッサージ室などがあり、飽きることなく毎日楽しめそうです。どこを見ても、掃除が行き届いて、気持ち良く利用できます。
サークル活動もたくさんあり、ほとんどのサークルでプロの講師を招いています。

介護が必要になったら移り住む介護居室では、ICTを活用した最新機器が揃っています。センサーを使い、お体の状態を常時モニタリング。管理体制がしっかりしています。
介護方法については、介護員さんの経験から決めるのではなく、各専門職が協議をした上で決めます。
大企業が経営しているので、若い人が就職先として選ぶことも多く、活気があります。

眺望で老人ホームを選ぶ人も

Bホームの場合

一方、同じ価格帯のBホーム。
閑静な住宅街にそっとたたずむような、目立たない外観の建物です。
定員数もさほど多くはなく、職員さんと入居者さんとの心の距離が近いのが特徴です。ご家族からも「○○さん、母の最近の様子はどうですか?」と、名指しで尋ねられる間柄です。
創立20年以上の実績があり、創立当初から継続して勤務している方も珍しくないそうです。
個々への配慮が行き届いていて、入居者さんの小さな変化に早い段階で気付いてくれます。健康寿命を長く保てて、90代でもお元気に暮らしている方が多いのは、気配りが行き届いている何よりの証拠ですね。
派手さはないけれど、安定感は群を抜いています。

もちろん、高級老人ホームらしく、大浴場や美容室などの設備があり、イベントもありますが、Aホームと比較すると少なく感じるかもしれません。

Bホームの施設長さんが「うちは、『どうぞご覧ください!』と胸を張ってお見せできる設備はあまりないんです。でも、スタッフの目配りや、さりげないお声がけは、他のホームに負けていません」とおっしゃっていたのが印象的でした。

そして、AホームBホーム、どちらの施設長さんも共通しておっしゃったことがあります。それは、
「私どものホームの特徴を理解して、それが自分の老後には必要と思ってくださる方に入居していただきたい。そうでないと、入居後にトラブルになったり、転居という選択をされることになります。必ず、複数の老人ホームと比較してください」です。

私がお客様へおすすめする老人ホームはAかBか

結論から言うと、「AもBもそれ以外もおすすめする」です。

私は老人ホーム選びの講座の講師をしていますが、常々「老人ホーム選びはご自分の価値観と向き合う作業です」とお伝えしています。

個別のご相談に来られたお客様にも同様の説明をします。
何を大切にしたいのか、どういう老後を過ごしたいのかに向き合っていただきます。
それなしには、納得いく選択ができないと考えているからです。

アクティブな性格で、大人数の輪に入ることを楽しめる。ご自分のことはご自分で管理したい、スタッフとはほどよい距離を保ちたい、ゴージャスな雰囲気の中にいると元気になるタイプの方は、Aホーム向きです。

一方、シックな雰囲気がお好きで、1対1のコミュニケーションが落ち着く、スタッフから声をかけてもらえることが嬉しいと思う方は、Bホーム向きです。

でも、おもしろいことに、ご相談に来られた当初はAホームを好む傾向にあった方が、Bホームを見学して気に入られることがあります。
逆もしかり。
だから、どちらかだけではなく、Aホーム、Bホームそしてその他のホームもお連れして見学することにしています。

人はいくつになっても価値観がひっくり返る可能性があります。
複数の老人ホームに足を運び、雰囲気を体感し、それでも優先したいポイントが変わらないかを考え、相対的に比較する。
一見まどろっこしい行程に思えますが、入居後の違和感を少しでも減らすためにこの方法をおすすめしています。

その他の大切な着眼点

見学をされたとしても、お客様が気付きにくいことに関しては、遠慮なくお伝えしています。
主に3点あります。
・介護、医療の充実度
介護や医療の充実度は、同じような価格帯や人員配置であっても差があります。
年老いて介護が必要になるとはどういうことなのか、その時人は何を求めるのか、お元気な時の生活と、介護が必要になってからの生活、どちらに重点を置くのかを冷静に考えていただきます。
正直なところ、どちらも満点という老人ホームは少なく、大概がどちらかに重点を置いています。
どちらを選ぶかは、まさしく価値観の違いです。
ただ、お体が弱ってきてから、期待していた介護や医療が満足に受けられない場合の負担は大きいとお伝えしています。

・最近の評判
以前は高級老人ホームとして人気を誇っていたとしても、経営状況などの理由からサービスの低下を耳にする老人ホームは要注意と思っています。
長期間入居率が低い老人ホームも、私はおすすめしていません。

・費用
老人ホームの料金体系は複雑です。
入居時の年齢、居室の種類などで支払額は大きく変わってきます。
また、オプションサービスの内容も様々です。
一度の見学で理解するのは難しいと思います。
数多くの老人ホームを見ている私でも、初めて行った老人ホームでは
「ん?これは何の費用ですか?」と、何回も質問します。

ごくまれに、高級老人ホームのサービスの良さに魅かれて、資産額ギリギリでようやく支払える老人ホームを選ぶ方がいます。今や100歳超えのご長寿も珍しくありません。
費用は、お亡くなりになるその日までかかってきます。
不要な料金の設定がないか、長生きをした場合でも無理のない料金なのか、そしてそれをお客様が充分に理解されているかどうかに気を配ります。

高級老人ホームは選びやすい

ほとんどの方にとって、大きなお買い物となる高級老人ホーム。
それだけに迷ったり、よくわからなくなって悩んだりするものです。
しかし、前述したとおり、高級老人ホームは個性が突出している場合が多いため、その個性を正確に理解すれば選びやすいとも言えます。

悔いのない選択ができるよう、実際に足を運びましょう。

はる社会福祉士事務所
代表 佐々木 さやか

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