分け合っても足りぬ。奪い合えばもっと足りぬ。~交付税マクロの話~
こんにちわ。些の件です。
コロナの猛威で、報道は小さかったと思いますが、3月末に大阪府泉佐野市が3年連続で特別交付税が減額されたというニュースがありました。
全国の約1,700ある市町村の約95%が交付団体(交付税が交付されている団体)です。
だからといって、不交付団体の税収黒字分が、他の市町村にまわっているわけではないので、過疎地域の住民としては、大都市圏や不交付の自治体にお住まいの方々に、そこだけ誤解のないように強く訴えたいです。
交付団体の自治体の住民や企業が払った税金も交付税財源にまわっています。不交付の自治体住民や企業も、地方出身者が多かったり、地方から原料仕入れて加工していたり、輸入した商品を地方にも売ったり。地方の人が都内に遊びに行って、払ってきた消費税も。
それでも、既存の税金を全てその地域の地方税にしても足りないような自治体は山ほどあります。山林・田畑が多ければ、固定資産税も多く取れません。建物がないって事は、人が住める場所もないので、住民税も多く取れません。構造的に無理です。
そんな、構造的に儲からない自治体は、切り捨てるかといったら、そういう自治体・地域には豊かな自然環境があります。全てが日本国家の領土で、その地域での国民生活の営みを国が放棄すれば、国土を放棄したことにもなります。水資源を生み、鉱物資源などもあります。温室効果ガス削減の役割もあり、それらは、国民で共有している財産だと地方は自負しています。
そういった税の徴収機能が及ばないところがあるので、交付税という税の調整制度が必要なんだと思います。
私は、そんな交付税制度を肯定的に考えています。
否定的な意見の方は、例えば企業誘致して税収が伸びたら、その分交付税が減らされる。結果、その自治体の収入状況がよくなるわけではない、というところですが、前にもその捉え方が違うと思うんだという事は述べさせてもらっていますが、例えば、企業誘致で社員50人規模の事業所が誘致された場合、その家族も合わせると100人くらい人口増えるかもしれません。
中学生以下の子供の数も30人増えました。1部の学年でクラスが1つ増えました。学校の経費増えます。保育所も臨時の保育士1人増やさないといけません。ただ、新たに学校校舎新設するほどでもないです。教育委員会の学校担当の職員増やす必要もないです。保育所も建物自体は改修の必要ありません。新生児や乳幼児は数人なので、保健師さんも増やす必要はありません。
交付税算定額が増える要因(人口、小中学校クラスの数など)があり、担当する役場職員を増員する必要がないとか、実際の歳出は増えない部分もあります。規模拡大によって合理化できる歳出が絶対にあるはずです。
頑張って企業誘致しても、お土産品売っても、交付税制度のせいで、自治体財政よくならないと考える、そんな市町村長、地方議員、市町村役場職員がいるとしたら、自治体財政の分析が不十分なんじゃないかなと思います。
それを地域ぐるみで理解するのも、相当大変で、それも目指す必要はないと思っていますが、ミクロの交付税の話は、また今度。
冒頭で触れた、泉佐野市の特別交付税減額という話ですが、普通交付税と特別交付税の違いも省略させて頂いて、簡単に言えば、泉佐野市はふるさと納税で税収増えたから、交付税減らしますっていう話です。
泉佐野市からすると、面白くないでしょう。自分たちが知恵を絞って、あの手この手で苦労して集めたのに、その分交付税減ったら、その努力は何だったのかって考えるのはもっともです。
私は、泉佐野市民ではないので、マクロで考えてみました。交付税とふるさと納税。
泉佐野市にふるさと納税した住民が住む自治体は、税収が減少します。総務省の資料によると、ふるさと納税による減収額の75%は、地方交付税の基準財政収入額に減少分として参入するとされています。
逆に泉佐野市のように、ふるさと納税額を多額に集められた自治体は、寄付額は基準財政収入額に反映しないとなっています。
ふるさと納税で減収となった自治体には交付税手当をして、その分ふるさと納税で増収となった自治体の交付税財源減らすとは言ってません。泉佐野市に言わせると、それなのに減額はおかしいとなりますが、国家予算で考えると、ふるさと納税がある事によって、交付税歳出増要因はできますが、交付税財源の歳入が増える要因は、ほとんどありません。
交付税財源の歳入増えるとしたら、返礼品で利益出した事業者の税収が増えるくらいですが、基本的には納税額の3割です。そのうち原価考えれば、事業者の利益は納税額の1割いくのかいかないのか。その利益の法人税増収額って半分もいかないでしょう。って事は、ふるさと納税による税収増の効果って納税額の5%にもいかない。納税額分を、国民の日常生活の範囲で市場経済に流した方が、よっぽど経済効果高いと思います。
ふるさと納税が、交付税財源の税収増には、ほぼ繋がらず、逆に減収する自治体のために調整機能の役割を果たすため、交付税歳出を増やさなければいけないものです。
泉佐野市のような、ふるさと納税勝ち組自治体を作っていくと、同じ額だけふるさと納税負け組自治体を生んでいきます。ただでさえ足りない交付税財源が、ますます必要になります。交付税歳出総額が増えると、その負担は全国民で負うことになります。
だから、総務省が泉佐野市への交付税を減額する措置を行ったことには、正当性があると思います。もし、泉佐野市がふるさと納税の本旨に従って、返礼品含めて、寄付額を地域のために充てていれば、交付税減額されても、税収も伸びて、行政サービスも充実しているはずで、異論を唱える必要ないと思うんです。
交付税は、自治体間で税を分け合う制度です。
ふるさと納税は、自治体間で税を奪い合う制度だと思います。
交付税財源は、もう20年も財源が足りずに、臨時財政対策債という地方債なんだけど、国が負担するという、また複雑な制度を使って、自治体財政をやりくりしています。
長年分け合っても足りていません。
ふるさと納税は、分け合ってたら足りないことに不満な地方自治体側の意向を受けて、奪い合えるようにした制度だと思いますが、分け合っていた財源すら奪いかねない制度です。
奪い合うためには、分け合う以上に労力も必要だと思います。その労力って、ほぼほぼ公務員の人件費、つまり税金です。
全国で市町村が約1,700あって、都道府県が47。仮に、ふるさと納税の担当者が市町村が平均で1人、都道府県が5人くらいにしてみます。全国で2,000人くらいの地方公務員がふるさと納税の仕事に従事しているとして、平均年収5,000千円くらいにしてみますか。
2,000人×5,000千円=100億円!
これに、国家公務員も仕事が増えます。ふるさと納税を管轄する総務省職員もそうですが、財務省も交付税と税務関係で仕事増えます。市町村・都道府県単位でも税務の職員の仕事も増えます。いったいいくらの公務員の人件費がふるさと納税に充てられているのか…
せっかく集めた税金を、その限られた中で、自治体間の奪い合いのために使うのは、もう辞めた方がいいと思います。