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Let’s 実証実験! 松本城への登城道をフルフラット化してみた

世界各国から訪れる人が絶えない松本城。その入り口までの約300mにわたる「大名町通り」は、いわば登城道です。左右には、松本市立博物館をはじめ飲食店やお土産店、ホテルなどが並び、いつもにぎやか。

松本市のメインストリートたるこの「大名町通り」を、もっと魅力的な空間にしよう! という、再整備への動きがはじまろうとしています。
その布石として2024年12月22日に行われたのが、「フルフラット化」の実証実験でした。今回の◯◯◯APマガジンでは、その模様をお伝えします。

と、その前にそもそも「フルフラット化」とは、どういうことなのでしょう? それは、この日撮られたこんな写真を見ていただければわかるかもしれません。

通りの一部に木の板を敷いて、フルフラット状態を仮設!

そうです。簡単に言えば、車道と歩道の段差をなくしてしまうということ。この日は地元大工さんをはじめとするスタッフが暗いうちから集まって木の板を敷き、フラットな状態を実現しました。

この実証実験は、2022年に作成された「松本城三の丸エリアビジョン(以下、エリアビジョン)」に基づいて行われたもの。というわけでその策定から関わってきた有限会社ハートビートプランの園田 聡さんに話を聞きました。

園田さん、どうしてこの実験を行うことになったんですか?
園田:松本城周辺のまちづくり像を示すエリアビジョンの策定にあたり、ここ大名町界隈では大名町通りの「フルフラット化」とともに、街灯デザインや街路樹の選定なども見直し、歴史や風格を感じられる景観を目指すという目標が掲げられました。この実証実験は、そうした話し合いで出てきたなかから、まずは道路のフルフラット化をリアル空間に現出してみよう、という試みです。図面だけではわからないことも実体感として理解できますから。

……ってことは、道路を平らにするだけじゃなく、松本を代表する道路景観を創るための検討にも、この実験が位置づけられているのですね?
園田:はい。そのため行政や地元町内会を中心とする整備委員会の方はもちろん、公共空間の景観デザインを手掛ける設計事務所・株式会社Tetorの山田裕貴さんにも入っていただき、視覚的効果や社会的経済的な利活用を推進するためのデザインを長期にわたって考えてきました。

木の板が敷かれた道路が珍しいためか、観光客もたくさん集まりました。

なるほどー。では山田さん、この実証実験の具体的なデザインポイントを教えてください。
山田:いちばん大きなポイントは、16m幅の道路の構成を変えていることですね。

 【現状】歩道=3.5m/自転車専用道路=1.25m/車道=3.25m
             ↓
 【実証実験時】歩道=4.5m/路肩=0.5m/車道=3m

この変更の目的は「歩行者中心の道路」にすることです。そのため、段差をなくすフルフラット化に加えて、歩道幅を拡げてウォーカブルな空間を創出しています。

実験中は大名町通りの一部が歩行者天国に。
街なかでのこうした大規模な実証実験は、全国的にも珍しいのだそう。

フルフラット化には、どんなメリットがありますか?
山田:道路が平らになると、視覚的効果もあって空間的な広さを感じるようになります。また、イベントなどに活用したい時には、汎用性が高くなりますよね。
確かに、段差がなければいろいろ活用できそう。例えば街なかでサッカーやバスケの試合をするとか!

園田:今回は現地でもパネル説明しかしていませんが、今後は、車道と歩道のデザインや街灯のデザインなども、より具体的に見直しを図っていきます

山田さんがデザインしたボラード(車止め)兼照明器具を仮設して、
車道と歩道の分離を図りつつ、明かりの雰囲気を確かめました。

山田:そうですね。今回は数種類のサンプルをもってきましたが、歩道と車道で素材や色を変えたり、石畳風に並べたりなど、松本の歴史や風格を踏まえて最適なデザインに落とし込めるよう、もっと検討を重ねていきます。

用意された石畳のサンプル。
素材感、色などで通りの雰囲気もかなり変わりそう。

お2人とも、今日はお話ありがとうございました。
大名町通りが、ますます歩きたくなる街並みになりそうで、とっても楽しみです。


写真/文責:◯◯◯ap Magazine編集部


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