残酷な夢をみた
電気毛布の力を借りないと眠れないようになった。
寒さは確実に冬が近づいているのを知らせている。
昨夜は、なかなか熟睡出来ない夜だった。
350の缶ビールを一本、冷蔵庫から取り出して、ゴクゴクと飲み干した。
再びベッドに潜りこんで、うつらうつらとまどろんだ。
・
夢の中で、ダーちゃん(亡き夫)が、すやすやと寝息を立てていた。植物人間になった姿ではなく、健康だった頃の姿のままで。
でも「植物人間」だと見守る姑も私も認識している。
「目覚めない」
そう思っていた彼が、突如として目をパッチリと開けて私を見た。
「sanngo」
はっきりとした相変わらずの大声で私の名を呼んだ。
「えっ?」
「sanngo」
「起きた?起きたの?ダーちゃん」
思わず、その手を握りしめた。
彼は何事もなかったかのように立ち上がって窓の外を見つめた。
「お〜、心配かけたなぁ〜」
「大丈夫?歩けるの?筋肉落ちてない?」
「大丈夫だけど?」
「バカバカバカ、でも…やっぱり凄いよ。ダーちゃん!!皆が死んじゃうって言ったんだよ。私だけが、私だけが信じてた」
そこへ千切れんばかりに尻尾を振って、ゴンちゃんがダーちゃんの足元へ走って来た。
ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねている。
「ゴンとお散歩行ってくれる?起きるのを待ってたんだから」
「もちろんだよ、なぁ〜、ゴン」
あ〜、夢が、私の夢が、やっと叶った!!
そう思った瞬間に目が覚めた。
「え?此処は何処?」
しばらく、夢と現実の区別がつかなかった。
やっぱり、一人。
一人ぼっちだ。幸せは戻って来なかった。夢の中で流した歓喜の涙が目覚めてからは悲しみの嗚咽に変わった。
時計を見ると午前4時。
こんな残酷な夜を私はこれから何度、乗り越えていかなければならないのだろう。
残酷?
いや、夢自体は「幸せ」そのものだった。私がずっと憧れ願い続けていたもの全てが其処にあったから。
憧憬も願望も手には届かない。
悲しみが色褪せるのは、いつになったら訪れるのだろう。
それでも、今日を生きなくちゃ。
ん?
夢の出演者は全員、生命を喪った者たちだった。
そろそろ私を呼んでいる?
それなら、それでも構わないかとも思う。
でも…
もう少しだけ待ってて。
私はまだ満ちていない。
うちなる花も探せてはいないから。
とりあえず、涙を洗い流そう。
夢になんて、夢になんて、負けるもんか(泣)
二度寝したら寝坊した(笑)
じゃぬーん♪