【イベントレポート】個人事業主の悲喜交々 #3 『さっこちゃん、あなたの「夢中」教えてください』
こんにちは!1166バックパッカーズスタッフの村上(スーさん/SUE)です。
2/16(火)にオンラインにて開催された、「個人事業主の悲喜交々 #3 『さっこちゃん、あなたの「夢中」教えてください』」のイベントレポートを書かせていただきました。
「個人事業主の悲喜交々」はその名の通り、ゲストハウスオーナー等の個人事業を営む方の想いや苦労に迫るイベント。毎回ゲストをお招きし、お話を伺っています。
前回は、長野県飯田市で『yamairo guesthouse』を営む高橋瑞季さんをゲストに迎え、ゲストハウス開業に至った経緯や地元への想いを伺いました。
今回のゲスト、森岡咲子さん
第3回のゲストは、福井県福井市のゲストハウス『SAMMIE'S』の森岡咲子さん(以下・森岡さん)。
福井市の出身で、大学進学を機に上京。大手建設会社での6年半の勤務を経て、地元福井にUターンをし、ゲストハウスを開業しています。また、ゲストハウス開業後に結婚し、現在は2児の母でもあります。
そんな森岡さんに、学生時代から現在にかけての「リソース」を軸に、その変遷について語っていただきました。
※下記にて掲載している画像は、当日の資料より抜粋をしています。
"とにかく行きたかった”東京での原体験
中学・高校時代は勉強と部活動に没頭。地元の福井が好きというわけでもなく、とにかく東京に出たい一心で受験勉強に励み、東京大学に進学します。しかし、周囲の学生たちのレベルの高さに地方出身の森岡さんは驚き、挫折感を味わうことになります。
このときに経験した接客のアルバイトが、森岡さんにとって原体験になったといいます。用意されたマニュアル以上にできることを考え、行動するチームで仕事をするなかで、「仕事自体が楽しくて頑張る」という感情が芽生えました。
さらに、当時のバイト先の先輩からかけられた言葉が森岡さんを動かします。
「日本人が海外に出たら何を聞かれると思う?日本のことだよ。」
この言葉を聞いた森岡さんは、自分が今いる日本のことを全く知らないということに気付き、一人旅に出るようになります。そして旅先で出会った土木建築に惹かれ、いつしか建設業界の道を志すようになりました。
替えがきく仕事と、自分にしかできない仕事
大学卒業後、大手建設会社に就職。日々の業務に忙殺され、当時は「ほぼすべてのリソースを仕事に割いていた状況」だったといいます。
そんな日々のなかで転機となったのが、2011年の東日本大震災。自分の命や生活について改めて考え直したときに、「替えがきく会社員の仕事よりも、自分にしかできない仕事が何かないだろうか」と考えるようになります。
就職した建築業界では、新しくて大きな建物を造るプロジェクトが花形とされ、既存の建物を残す、メンテナンスするという事業は亜流とされていました。新しい建物を造ることも、古い建物を残すことも、両方が好きだった森岡さんにとって、業界のこうした風潮は違和感があったといいます。
とはいえ、当時の森岡さんにとっては「会社でやっていること=自分がやりたいこと」だったため、すぐに会社を辞めて何かをする、という気持ちはなかったと振り返ります。
そんな森岡さんに、さらなる転機が訪れます。
情熱と計算の間で
同じ時期、地元の福井では知人たちが『福井人』という、福井県嶺北地方の”人”に特化したガイドブック制作に取り組んでいました。その活動を知った森岡さんは、「地元のゲストハウスに宿泊して、『福井人』で紹介されている人々を訪ねる旅がしたい」と思い立ちます。
しかし、当時はまだ日本に(宿泊施設としての)ゲストハウスがほとんどなかった時期。福井にもゲストハウスはありませんでした。
「誰かゲストハウス、やればいいのに。」
そう思った森岡さん、ここで閃きます。
「私がやればいいんだ」
”自分にしかできないこと”をついに思いついた興奮で、「冷や汗が止まらなくなった」と森岡さんは振り返ります。
同時に、「福井が嫌いで東大に行って大手企業に就職したのに、Uターンしてゲストハウスをやるというのは売りになるのでは」という計算もあり、地元福井でゲストハウスを開業することを決意します。
ここから2年間をかけての開業準備。当時は数年先まで期間の決まった大きなプロジェクトに携わっていたこともあり、会社員を続けながら福井に通い、準備を行いました。
そして2015年に会社を退職。「会社を辞めたい気持ちは強くはなかったものの、自分の足で歩く面白さが勝った」と当時を振り返ります。そしてこの時期に「面白いこととお金を稼ぐことが一致」したといいます。
スタッフへの嫉妬と信頼
2015年8月、ゲストハウス『SAMMIE'S』はオープンを迎えます。
ゲストハウス開業後、森岡さんは結婚。開業翌年の2016年には第一子を出産。出産後はほぼすべてのリソースを子育てに割くことになりますが、当時は森岡さん1人で宿を運営していたこともあり、産後2ヶ月で営業を再開します。
子供を育てながら宿を運営する中で、「この子にとっての親は私だけだから、時間を取って接したい」という気持ちと、「ゲストを迎えるのだからきちんとしないといけない」という気持ちの間で葛藤する日々が続きます。
その後スタッフを雇うことになり、森岡さんが現場に立つ機会は減少。現場での接客はスタッフが中心となり、自分が知らないゲストが増えていくことに対して”嫉妬心”が芽生えるようになったといいます。
そこで、Slack上でスタッフがゲストと話した内容や案内したことを集積し、ミーティングでもその内容を共有することに。こうすることで、森岡さんのモヤモヤは軽減されていったといいます。現在では、そうして共有される情報を踏まえて、「自分の宿を客観的に見られるようになった」そうです。
イベントの最中には、寝かしつけていたお子さんが泣き出し、森岡さんのトークが中断する場面も。葛藤を乗り越えながら、子育てと宿の運営を両立する森岡さんの今後が楽しみです。
次回の「個人事業主の悲喜交々」
次回の「個人事業主の悲喜交々」は、神奈川県鎌倉市のゲストハウス『亀時間』代表のマサさんをゲストにお迎えします。
◇個人事業主の悲喜交々 #4『マサさん、 開業10年目 どう過ごしますか?』
日時:2021年3月2日(火) 21:00〜22:30
定員:20名
参加費:1200円
配信方法:Zoom(開催当日までにメールにてURLなどをお知らせします)
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