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算命学余話 #R63「火母に従う」/バックナンバー

 先日パソコン作業中にアラーム表示が出て、「ウィルスの類を検出した、除去しますか」といった内容だったので「OK」をクリックしたら、なんと除去してくれたのは広告ブロックツールでした。お蔭で今まで煩わされずに済んでいたチカチカと目にうるさい広告が画面のあちこちに現れ、大いに仕事の妨げに。このブロックツールは数年前に無料でダウンロードして以来好調だったので触らずに来たのに、何てことをしてくれるのだ。これがユーザーに対するサービスのつもりか。
 現れた広告はもちろん「商品を買わせるため」のもので、売り手からすれば広告ブロックツールは営業妨害になるから外させたいのは判るけれども、商品に興味のない人間の仕事の効率を下げてまで押し売りするつもりかと、不快感でいっぱいになりました。しかもその誘導に「ウィルスの脅威」を持ち出したところが嫌らしい。人の心の弱みにつけ込むとはこのことです。
 結局、旧来のブロックツールはここ数年の間に更新されていて面倒になっていたので、新たなツールを探してダウンロードし直しましたが、その間もちろん仕事は中断を余儀なくされました。迷惑千万です。今日ではこのような迷惑商法が、ネット空間において通例になっているというわけでしょうか。世の中間違っています。

 他にも間違った世の中の話。米国では医者が処方する鎮痛剤として、随分前からヘロイン並みに依存性のあるオピオイド系鎮痛薬が世に出回っているそうです。そしてその過剰摂取により命を落とす一般人があまりに増えて、最近になってようやく問題視されるようになったと。
 当地の医者の話によれば、彼らが医学生の頃は「痛みは克服すべきもの」として認識され、「良い医者なら患者を痛みから解放する処方ができて当然」という価値観の下に鎮痛剤の濫用が奨励されたといいます。しかし痛みの根本原因を除去せず対処療法として薬物を与え続ければ、いずれ患者の体は慣れて、更に強力な鎮痛剤を欲しがるようになる。そういう予測をどの医者もせずに、製薬会社に促されるままに薬を処方し続けた結果、麻薬に手を出しているわけでもない一般市民が次々と薬物中毒に陥り、命を落とすか、更に危険なヘロインに手を出して身を滅ぼすかするようになった。これが現代米国社会の姿だということです。
 オピオイド系鎮痛薬は、頭痛や関節痛、手術後の鎮痛剤として普通の病院が日常的に処方しているので、病院に行ったら最後、患者は中毒の道から逃れられません。危険なオピオイド系薬物を一般医療薬品として合法化したのは製薬会社ロビーです。中毒になれば患者が更に薬を欲しがるようになることは判っている。売り手としてこんなおいしい商売はありません。
 しかしここに商業倫理はあるでしょうか。私は19世紀のアヘン戦争を思い起こしました。良質な茶葉や絹織物を生産する清朝中国からの輸入を膨らませ続けた英国は、自国に貿易赤字を解消するだけの商品がないものだから、代わりにアヘンを清朝に売って貿易均衡を取り戻そうとしたのでした。そして自国民がアヘン漬けになったことに激怒した清朝は英国と戦争し、完敗して植民地へと落ちぶれていったのです。商人とは、こうまでして儲けたいものなのでしょうか。

 算命学的見地から申しますと、最初の広告の話は広告が「伝達」であることから火性と、広告によって儲けたい「財」を司る土性との、コンビの構図です。次の鎮痛薬の話は命に係わる部分は「寿」なので火性の領分、儲けたい製薬業界は「禄」なので土性の領分、オピオイド系鎮痛薬が危険薬物であることを知らずに処方されている一般人たちは「知識」を阻害されているので、「印」つまり水性の減退と見ることができます。
 五行の相関関係より、火性は土性を生じ(火生土)、土性は水性を剋する(土剋水)。それが様相として顕現したのが上記の社会現象です。

 ところで、五行の相関関係はいずれも偏りなく均衡を保っていると考えて間違いはないのですが、厳密に言うなら、この均衡の中にも若干の差があることは知っておかなければなりません。それは火性と土性の関係です。
 算命学では「火母(かぼ)に従う」という格言があるのですが、同じ相生関係の中でも火性と土性の関係は、他の五行に比べて密接です。そしてその強い結びつきは、宿命鑑定の中でも当然考慮していなければならないものです。
 今回の余話はこの「火母に従う」がどういう理屈から言われているのか、その根拠と、鑑定における技法としてどう活かしていくかを考察します。

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