ひとつの時代が幕を閉じるそのとき。嵐は、わたしたちの青春だった。
嵐は、わたしたちの青春だった。
2020年の最後の日。わたしは、パソコンに嵐のラストライブを、テレビに紅白歌合をつけながら過ごした。
もちろん、聴覚障害のあるわたしにふたつの音をきくなんて難しい。だから、2つの画面を見ながら、ききたい曲を大きく、他方を小さくしながらだったのだけれども。
この嵐のラストライブは、聴覚障害があっても周りの友人のおかげでとっても心に残るライブになった。
「嵐のラストライブを観ようよ」のその瞬間、聴覚障害があるなんてすっかり忘れてしまっていた
大晦日の夜、実家に帰ることができなくなったわたしたちは、年末のお出かけを自粛して、ひっそりと年越しをすることになっていた。
それならばと、友人が発案してくれたのが
「嵐のラストライブを観ようよ」
だった。
小学生のときには、櫻井翔くんの『よいこの味方』をみて保育士になろうと心に決めたし、中学生のときには松本潤くんの『花より男子』をみて高校生活に憧れて、高校生のときには相葉雅紀くんの『マイガール』をみてイクメンと結婚することを誓った。
まぁ、高校時代に好きだった男の子は他校だった上に庶民だったので、あんなにキュンキュンした高校生活はおくれなかったし、わたしは留学で不慮の事故死もせずに、ピンピンしておりますが。
それでも、嵐はわたしの青春の全てだった。これは観るしかない、と友人の提案に大きく首を縦に振った。
テンションマックスで。
それはもう、映画を観に行くにも、DVDのレンタルをするにも、「字幕はあるか?」と気にしてやまないわたしが、なぜかこのときはすっかり「字幕」の存在なんて忘れてしまっていたくらい。
これが、ある意味ラッキーだったのかもしれない。
嵐のラストライブ、チケットを手に入れるのも大変だなんて、すっかり気付かなかった。
大晦日のお昼過ぎ。
ねぇ、チケット全然買えないんだけど
友人がグループラインに放ったひとことに、みんながかたまった。
ん?今日、大晦日だよね?今日が、ライブ当日だよね?
チケットの販売は、ライブ当日の19:30まで。「当日買えばいいでしょ」と何万人が考えていただろうか。
ええ。例に漏れずわたしたちも「当日買えばいいでしょ」の感覚で生きていました。そして、案の定チケットが買えない。
あぁ。宿題を夏休み最終日にやる人たちの行動だよな、これ。
なんてことを考えながら、一般チケットの購入を試みるものの、買えない。アクセスが集中しすぎてて買えない。
恐るべし、国民的大スター。
そりゃ、学会と会場・ホテルを奪い合う(いや、学会だって負ける)嵐さま。
いくらオンラインと言えども買えないよな。とすっかり諦めた30分後。
え。買えたんだけど。チケット買えたわ。
そう友人から連絡がきて、わたしたちは無事ラストコンサートを観られるようになった。ねばってくれてありがとう。
なお、このときもまだ、配信に字幕がつくのかなんて考えには、及んでいない。
ライブが始まるとみんなが手話で歌い、MCまでも通訳してくれる世界に、わたしはいた。
2020年12月31日20:00
嵐の活動休止前ラストライブが始まった。
1曲目が流れるなか、わたしはやっと気づいた。
あれ。いま、どの曲が流れているの?
そう。補聴器は、機械音声を拾うのが苦手。もちろんパソコンから流れてくる嵐の曲も、なんの曲か分からないと聴き取ることが難しい。
それでも、ライブが始まって楽しんでいるみんなの雰囲気を壊すわけにもいかないなと、ちょっと顔が強張っていたと思う。
あぁ、難聴あるあるだ。場の空気を悪くしたくなくて、分からないと言えないやつ。
なんて思っていた次の瞬間、その場にいた全員がワイルドアットハートに合わせて手話をはじめたのだ。それはもう、ノリノリの笑顔で。
わたしは、歌詞とリズムさえ分かれば、補聴器で聴き取れる音量に合わせると曲の雰囲気が掴めるようになる。
曲に手話がつく。それだけで、水の中でモノクロのように見えていた世界が、地上の色付いた世界に変わっていく。
その後も、受験時代を助けてくれた『サクラ咲け』や5人のMCに、代わるがわる手話をつけてくれる友人たち。
「嵐はわたしたちの青春だったね」
なんて言いながら、友人たちとライブを楽しむ。そして、しみじみと、青春がおわって社会人になっても、わたしにはちゃんと居場所があるんだな。なんてほっこりした大晦日。
嵐の活動休止は寂しいけれど、このライブをきっかけに、わたしはここにいていいんだなと思える場所をまたひとつ見つけた、そんな気がするんだ。
嵐、そしてなによりもみんな、ありがとう。
ところがどっこい、嵐のラストライブには字幕が付いていたらしい。
と、ここまでとってもあったかい気持ちになったのですがね。実はこのラストライブ、ちゃんと字幕配信がされていたとのこと。
生配信だよ!
生で字幕がつくってなにごと?
思えば嵐は、ライブDVDにもいち早く字幕を導入してくれていたし、ライブでも画面に歌詞がちゃんと表示されていた。
それもこれも、聴覚障害者の中にも嵐ファンがたくさんいるから。ということを知識としてちゃんと知っていたのに。
わたしたちが字幕チャンネルに気付いたのは、ライブも終わりかけのタイミング。
結局、このライブのほぼ全てを友人の手話通訳と補聴器で乗り切ったのでした。
チケット購入からライブの最後まで、おっちょこちょいだったわたしたち。でも、そのおかげでみんなのあったかさに触れられたから結果オーライ……かな?
本当にありがとう。
今年もよろしくね。
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