めぐりゆく季節を知らせる風に「待って」なんて言葉は届かなくて。
朝、目が覚めて熱いお湯を浴びたくなる。
ふと手を伸ばした先には、七分袖のブラウス。それも、ブラウンの。
玄関に鎮座しているビーチサンダルを靴箱に戻し、かわりにちょっとヒールのあるえんじ色のローファーを出す。
あんなにも待ち遠しかったはずの夏は一瞬にして過ぎ去って、秋がすぐ近くまでやってきている。
***
なんだか、不思議な夏だった。
浴衣を着て花火大会に行ったり
屋台ではしまきを食べたり
山の中で眠るおばあちゃんのお墓参りに行ったり
はたまた飛行機で旅をしたり……。
どれもこれもやり残したままだというのに、無情にも吹いてくる風は紛れもなく秋の訪れを知らせる風で。
なんだか、不思議な夏だった。
子どもたちの夏休みが始まっても
あめ、あめ、あめ……
太陽が顔を出し始めたのは、8月も1週間を過ぎた頃から。
でもそれは、わたしの夏休みが始まるとほぼ同時で。おかげで、大好きな人を連れて大好きな場所で、みたかった青空をのんびりと眺めることができた。
「いつもどおり」の夏はやってこなかったけれど、大好きな人と大好きな場所で夏を過ごせたんだから「いつもとちがう」夏も、なんだか悪くない。
ついこの間までそう思っていたというのに。
いざ秋の風に吹かれると、夏が名残惜しくて仕方がない。
夏が秋になって
秋が冬になって
冬が春になって
また、夏がやってくる。
日本という四季のあるこの地で生き続けるのであれば、きっと(少なくともわたしが生きている間は)当たり前のように移りゆくことなのだろう。
頭では分かっていても「待って」と呟かずにはいられない。
きっとわたしは、まだじっくりと見つめ、考えていたいのだと思う。
どんなわたしでいたいんだろうか
日々の中でなにを大切にしていたいのだろうか
そんな漠然とした何かを、ぐるんぐるんと。
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