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花束を君に。
友達に、花束を贈りたい。
今年の初め、やりたいことリスト100を作ったときに、パッと浮かんだリストのひとつ。
わたし自身、誕生日とかバレエの発表会とか、そんなタイミングで花束をもらった記憶がある。小さい頃は「花なんてもらってもつまらない」と思っていたこともあるけれど、オトナになるにつれてもらってうれしいものにランクインするようになってきた。
ただ、今のご時世そうそう友達に会う機会もない。かといって、職場に同僚へのちょっとしたお祝いを渡す機会があっても、個人的に花束を贈ることは、あんまりない。
退職とか異動とかの時は、部署から花束を贈るし、誕生日プレゼントに花束を贈ったとして、始業から終業までの間どこに置いておくんだ問題が生じてしまう。考えれば考えるほど、この「友達に、花束を贈りたい」は意外と難しいリストのひとつになってしまっていた。
そんな今日。大きな仕事が一区切りついたわたしたちは、ひっそりと会う予定でいた。がしかし、ご時世は緊急事態。しかも、良いとは言えないこの状況。主要駅を通らず、しかもわたしたちがひっそりと会える場所はどこだろう……と考えた結果、友人のうち一人の家にお邪魔することになった。
わたしたちを家に招くために、きっと部屋の掃除をしたりなんやらと準備をしてくれる。そもそも、お部屋自体を貸してくれるんだからお礼にお土産を持っていこうと、乗り換え駅でウィンドウを眺める。
ケーキ屋さんに、パン屋さんに、お花屋さん。3人とも甘いものが好きだから、ケーキもいいな。パンは食パン専門店だから3人では分けにくい。お花はどうだろう。
そんなことを考えながら、3つのお店の前を云々と唸りながら行ったり来たりしているときに、あのリストを思い出したのだ。
友達に、花束を贈りたい。
あぁ、今がきっとそのタイミングなんだろう。そう思ってもう一度お花屋さんの前に行くと「テーブルブーケ」という可愛らしいブーケが鎮座していた。
どれも似たり寄ったりなのだけれども、その中でも「きっと、この子が一番かわいい」と思うひとつを選んで、レジに持っていった。そして、「プレゼントです」といってリボンをかけてもらった。
自分用に花を買うときはなんとも思わないのだけれども、誰かにあげる花束を包んでもらっていると、なんだか急に恥ずかしくなってきた。この気持ち、初めて自分のために花を買ったときみたいだな、なんてことを考えながら、でもホクホクとした気持ちになった。
あんまりにも云々悩んでいたものだから、ホームに行くと、予定していた電車を一本逃してしまったことに気付いた。まぁでも友達には「乗り換えたら連絡するね」と大体の到着時間を伝えていたから大丈夫。
電車に揺られて待ち合わせの駅に着くまでも包まれた花束を眺めながら、あぁ今から友達にこの花束を渡すのかぁ……なんて考えてまた気恥ずかしくなる。そんなことを考えていたらあっという間に待ち合わせ駅。友人もちょうど駅に着いたところだった。ナイスタイミング。
「今日は、お招きしてくれてありがとう。これ、お土産」
と、花束を手渡す瞬間はなんだかむず痒くて恥ずかしい気持ちになったけれど、「お花をお土産でもらえるなんて思っていなかったよ!ありがとう」なんて満面の笑みで受け取ってくれたから、ほっとした。
友達の家で、ここ最近思っていることなんかをお喋りする間も、あのテーブルブーケがわたしたちをすまし顔で眺めていて、それもまた、なんとも言えない、ちょっと気恥ずかしいような気持ちにさせた。
花束をもらうことにも、お花がある生活も好きだけれど、花束をあげるのはまたひとつオトナになったような、そんな気持ちになるんだな。でもこのこそばゆさも、結構好きかもしれない、なんて思っている。
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