少ない選択肢の中から
自分大賞2024
2024年も残り少なくなった。能登の大震災から始まる不穏な幕開けだった。我が家も大きな揺れに襲われ、当時は気が付かなかったが、数カ月してトイレの便器の亀裂を発見。すぐさま家を建ててくれた建築事務所さんに連絡して対処してもらった。
運良く一部損壊の補助が出たことで、ほぼ無償でトイレ交換ができた。無傷で胸を撫でおろしていたが、どうしてどうしてしっかりと我が家も被災した。改めて地震の恐ろしさを見せつけられた。
幸いトイレのみで済んだが(壁紙もちょっと怪しい)、これが半壊、全壊となった場合を想像するとゾッとする。と同時に被災に遭われた方が、一日でも早く日常を取り戻されることを願ってやまない。
復興は思ったほど進んでいないと聞く。現地に足を運んでいないから確実なことは言えないが。雪国の冬の寒さは心身に堪える。温かい環境で新年を迎えられるように政府は手を尽くしてほしい。
前置きが長くなってしまった。2024年を書籍、スポーツ、イベント、仕事、カレーの5ジャンルで振り返りたい。
『死にたい夜にかぎって』(爪切男さん)
まずは、書籍。今年もたくさんの素敵な本と出会った。本を書かれた方、編まれた方、運んでくれた方、販売してくれた方、本に携わってくださったみんさんに感謝したい。ありがとうございました。日々が華やかになりました。
今年のマイベストは、爪切男さんの『死にたい夜にかぎって』。爪さんの実話をもとにした、手あかのついた表現で申し訳ないが笑って泣けるエッセイ。
個性の強い彼女をはじめ、初体験の相手、恋に落ちる女性はいずれも魅力的で、人間て相手の欠落した部分がどうしようもなく愛しく思えてしまうのだなと再確認した。
「本の選び方」noteでも触れたが、爪さんは燃え殻さんのエッセイに登場され、気になって本屋で買ったのが「死にたい夜に…」だった。あまりにも面白いので、他のエッセイも立て続けに購入。どれもが面白く、『クラスメイトの女子、全員好きでした』はドラマ化され、原作とはまた違った味わいで楽しませてもらった。木村昴さんを知るきっかけを作ってくれた貴重な作品だ。
爪さんは今年ご結婚された。きっと一筋縄ではない方と想像できる。結婚を題材にしたエッセイも今から楽しみで仕方がない。
ルヴァンカップファイナル「アルビレックス新潟対名古屋グランパス」
移り住む前の土地にも、移り住んだ土地にもJクラブがある幸せ。J1~J3まで60クラブもあるのだから当たり前と思われるかもしれない。でも、まだJクラブ空白地帯はあるわけで、そう考えるとやっぱり幸せ者だと思う。
移り住んだ土地のクラブ、アルビレックス新潟は熱狂的なサポーターで知られる。公言している人、密かに応援している人と、熱にグラデーションはあるが、やっぱりアルビサポは身近に必ずいるほど地元に根付いている。
移り住んでから栃木SC愛が強すぎるあまりサッカー関係の仕事は断ったり、避けてきた。サッカーは好きでも、栃木でなければ愛は注げないと思ったからだ。一方で、体がサッカーを欲してもいた。そして、今年、関わることになった。
折しもルヴァンカップファイナル目前、レギュラークラスの選手と一緒に仕事をすることになった。触れ合ってしまえば、情が移るのがサッカー好き。元々、好きな選手でこちらでPICKUPさせてもらったが、リクエストが通ったので仕事でご一緒できた。
彼らが先発した名古屋とのファイナルは、キックオフから目頭が熱くなった。まるで栃木戦を見ているように前のめりになった。パス、シュート、インターセプトに、ブロックと、あらゆるプレーに一喜一憂した。久しぶりに集中してサッカーを見ることができた。
結果はご承知の通り、殴り合いの末、PK決着で名古屋に軍配。追う展開は理想的ではなかったが、カップ戦のファイナルという慎重になりがちな試合でもアルビらしさ、テンポの良いパス回しと崩しはできていた。特に前半に名古屋のハイプレスを的確なポジショニングとパスで潜り抜けたシーンには鳥肌が立った。これぞ、アルビ。その感動を多くの人が味わい、今回のルヴァンカップは語り継がれるほどの名勝負となった。
見るものを没頭させるサッカーの醍醐味を味わわせてくれたアルビに感謝したい。
「本を読むこと」GUEST TALK 島田潤一郎さん
”ひとり出版社”として名高い夏葉社の島田潤一郎さん。幼い頃はそれほど本を読んだわけではなく、就職が難しく、身近な人を亡くされて、その遺族に本を送りたいがために出版社を立ち上げた異色の経歴の持ち主。
書かれる本は愛に満ち満ちていて、作家を目指されただけあり平易でありながらも心にすっと入り込んでくる言葉の連なりが心地いい。ご自分について書かれたエッセイも、夏葉社から出版社された本も素晴らしく、どれもがブックオフに持ち込めないものばかり。装丁も凝られていてクリエイティビティを刺激される。
憧れの島田潤一郎さんが、ボクが住む街に来る。居ても立っても居られずに、告知を見て悩むことなく、いわゆる秒で申し込んだ。会場でお会いした憧れの人は、想像以上に穏やかで、仏様のようなオーラをまとっていた。と思ったが、知り合いの編集者に容姿をバカにされ怒りを覚えるなど人間臭いところをズバズバと語る人でもあり、雰囲気と中身のギャップがまた興味深かった。
好きすぎると言葉でなくなると言われるが、せっかくお話しできる機会があったのに、たじたじしてしまい、早口でいろいろと話してしまったのが悔やまれる。深呼吸して心を整えてからお話しできれば良かった。でも、今後もお会いする機会はあるだろうから、それまでにまた編まれた本を読んで、気が付いたこと、疑問に思ったことを聞いてみたい。
ちなみに、弟子の秋峰善さんの『夏葉社日記』も併せて読むと面白い。
燕市観光協会ポスター「まちが奏でる燕奏会」
どの仕事も印象深い。ひとつひとつ受注額の多寡に関係なく、心を込めて作っているからだ。妥協は、ほぼしていない。だから、手掛けた仕事は、全てが我が子のようにかわいく、愛おしい。
今年もたくさんの仕事に、パートナーの認知・告知に参画させていただけた。みなさんがいるからボクの仕事が成り立つわけで、お仕事をいただけることに感謝の思いを忘れたらいけない。たまに傲慢になって忘れがちだけども。気を付けないとね。
数々のパンフレット、チラシ、Webサイト、動画の中から、ひとつを選べと言われたら燕市観光協会のポスターになる。はじめてのポスター制作ということで、パートナーさんも軸が定まっておらず、ある意味自由に作れる反面、傾向が掴めずにアイデアが出てくるまで時間がかかった。
魅力はたくさんある。それを伝えるのにポスターだけでは弱いのではないか。ビジュアルをしっかり固めた上で、なにかギミックが欲しい。頭を悩ませた末に出たのが、観光地ごとの音をリミックスして、視覚に加えて聴覚でも燕市を知ってもらうことだった。
そこから燕(つばめ)が、燕(えん)とも読めることから、演奏会をもじって燕奏会が閃いた。あとはデザイナーさんにコンセプトを伝え、思いをビジュアル化してもらうだけだった。
アイデアは他の追随を許さず、ぶっちぎりでコンペに勝利した。元々、商品のみならず、それに付随した音で何か楽しむものを作りたいという思いが数年前からあった。一時はとん挫したが、アイデアを捨てずに持ち続けたことでカタチになった。
いつ何時、どのアイデアが生かされるか分からない。常に考え続けることの大切さを思い知った仕事でもある。ひとりでも多くの方がポスターを見て、音を聞いて、燕市に足を運んでくれたらクリエイター冥利に尽きる。
七つ森 カレープレート
昨年から会社の同僚の影響でスパイスカレーにハマっている。仕事柄、外でのMTGや取材・撮影が定期的にある。
これまではラーメン一択だったが、スパイスカレーという選択肢が生まれた。最初に食べたスパイスカレーがあまりにも美味しく、一発で虜になってしまった。以来、県内各所のスパイスカレー店を見つけては、堪能させてもらっている。
冊子の撮影・取材で県内を回ることになった際、訪れたのが七つ森さん。店主がアウトドアが好きなのか、店内にはアウトドア関連のグッズが揃っており、水もアウトドア用品で出された。
肝心のカレーは、スパイシーで、付け合わせも丁寧に作られていて、少し寒い時期だったので体が芯からぽかぽかして至福だった。ただ辛いだけのカレーは好みではなく、発汗を促すスパイスが効いたカレーに惹かれる。七つ森が、まさにそう。
スパイスカレーは胃もたれしないのもうれしい。ガッツリ系のカレーも、とんかつがプラスされているとたまに食べたくなるが、あとがちょっと怖い。その点、スパイスカレーはもたれない、お腹が痛くならないからありがたい。
七つ森さん以外にも印象に残る店が多く、それは個性が各店舗で光っているからだと言える。店主のこだわりが直に感じられるのがスパイスカレーの良いところ。口に合う合わないは、個々人の好みに寄る。七つ森さんがお石からと言って押し付けたくはないし、万人受けするものなどない。
来年も打合せ、取材・撮影で外に出る機会のランチは、スパイスカレーを第一候補にしたい。次は、最近ちょっとずつ関心を持ち始めている街中華。これもまた、各店舗ごとに個性があって面白い。食事はもちろん、店舗に刻まれた歴史も味わえるのがいいのだ。
まだまだ今年を閉めるには早すぎるが、印象に残ったものを師走らしく挙げてみた。来年も今年以上に楽しいことがきっと待っている。またこの場で報告できるように暮らしを大切に生きていきたい。
おもいのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!