ホームランバッターではなくアベレージヒッター
天才ではないボクの書き方
以前、同業の先輩、大学の先輩でもあるけれども、糸井重里さんが言っていた。プロとはヒットを積み重ねられる存在であると。
野球に例えられたので、野球選手の意見を。ヒットの延長線上にホームランがあるという人もいれば、ホームランの打ちそこないがヒットという人もいる。千差万別だ。
個人的には、ヒットを定期的に打てるのがプロだと思っている。というか、キリンの天才マーケターである前田仁さんを核にした本を読んで、そう思ったのだ。
前田さんはアベレージヒッターのボクとは異なるホームランバッター。いまだに競争の激しいビール業界にあり、堂々とスーパーなどの酒販棚の一角を占める「一番搾り」が、前田さんのホームランバッターぶりを証明している。
ネーミングやタイトルを作る際、素人とプロが勝負したとする。一発勝負は何が起こるか分からない。ボクが素人の方に負ける可能性は大いにある。ただし、何度か勝負すれば負けない自信がある。それは揺るぎない。
書き手である以上、世間的に名の知られた制作物を作りたいという欲求は持ち続けなければならない。ただ、そこにばかり目が向いてしまうと、ニーズとはかけ離れた物しか作れなくなる。
高校ラグビーの絶対的存在、東福岡の監督をされていた方の講演でのことだ。勝ちを追い続けると勝てなくなる、とおっしゃっていた。当時のボクには、その考え方が理解できなかった。
今回、前田仁さんの自伝的な本を読んだことで、その言葉の意味が分かった。答えはお客様が持っている、常にお客様を見ろ。前田さんの持論だ。
振り返ってみると、コピーライターに成りたての頃、ボクは自己欲求を満たすことばかりに腐心していた。だから、修正が多かったし、プロポーザルであっさり負けていた。コンセプトも弱かったように思う。
月日は流れ、ボクも成長した。あらゆることに興味を持ち、自分とは異なる考え方に触れ、戸惑い、苦悶しながら、これまでのスタンスを変えた。前田さんがおっしゃったように、答えはお客様が持っていると。
自己評価のためにプロポーザルや、日々の制作があるわけではない。当たり前だが見失いがちな思いに気が付き、発想を転換させた。果たして、プロポーザルでは勝ちまくり、コンセプトもより太いモノになった。勝ちを意識しなくなったら勝てるようになったのだ。
これからもホームランは飛ばしたい。でも、ボクの中ではヒットの延長戦上にそれがあるという思いは変わらない。狙って打てるほど、まだ実力は伴っていないからだ。ただ、常にヒットを打てるようにはなってきている。空振りは極端に減った。
天才ではないけれども、努力できる才能はあると信じている。これまでの歩みがそうだ。これからもお客様の声に耳を傾け、お客様の求めている以上の物を提供したいと思っている。
おもいのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!
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