見出し画像

ペンと旅【鳥取編】

旅について

旅に出たくなった。人間は制限がかかると、途端に制限されたものが恋しくなる生き物だ。外出自粛の今、ボクは旅への思いが強くなっている。

ボクの旅。それは、いつもペンとフットボールと一緒だった。旅をしたいと言いながらも、基本的には出不精。面倒くさい性格だと思う。

フットボールが仕事になり、チーム遠征に帯同して全国各地を飛び回れたのは、いまにして思えばラッキーだったと思う。

旅に出られない今だからこそ、おうち時間で旅を振り返ってみたい。

【鳥取編】

長閑なまち鳥取、ボクはひとりドタバタ

鳥取といえば、水木しげる先生。と言いたいところだけど、ボクは残念ながら鳥取市内にしか足を運んだことがない。水木先生ご生誕の地、境港には鳥取駅から米子駅を経由して約3時間かかる。試合の前泊でも観光に往復6時間はちょつと手間だ。

ボクの中での鳥取は、石破茂なのだ。なぜ、石破茂なのか。羽田空港に向かう飛行機の便で一緒になったからだ。なかなか飛行機が飛ばないと思ったら石破茂の搭乗待ちだった。

政治家としてというよりも、まんまると笑みを浮かべて自身の趣味を語る、あの石破茂がボクは好きだ。なんとなく、他の政治家よりも信頼できそうな気がしている。接したことがないから全く分からないのだけれども。総理の椅子に座れるのだろうか。

緊張感が高まる鳥取13時キックオフ

鳥取で石破茂が搭乗時間に遅れたのも、ちょっと理解できる。なぜなら羽田への便数が極端に少ないからだ。鳥取で試合があるたびに、ボクは緊張感が増す。乗り遅れたらまたらない。

オフィシャルライターは試合後、最低でも5名の選手からコメントを取らなければいけない。試合に勝とうが負けようが、その人数が増減することはない。チームバスが出るまでの時間内に5名。ホームゲームではバスの出発時間にゆとりがあるが、アウェイゲームでしかも飛行機利用だとスケジュールに余裕はない。きつきつだ。

鳥取の試合で15時に試合終了は、本当にドタバタ。チームもボクも16時半の飛行機に搭乗しなければならないので。試合後に監督会見に出て、その流れでミックスゾーン(取材エリア)に向かい、コメントを取りまくる。ここでは広報との連携が不可欠。もちろん、選手の協力も必要になる。とにかく止まってもらって、一言でも二言でもコメントをもらう。

コメントをもらったら通常はプレスルーム(報道陣の控え室)で作業をするのだけれど、鳥取ではすぐさまタクシーに乗り込んで空港に向かわなければならない。乗り遅れたら19時まで飛行機がない。車中でもコメントを起こして、空港に着いてからも作業は続く。不思議とこの時だけは車酔いしない。

16時半のタイムリミットは迫る。焦る。でも、飛び立つ前にコメントを更新しなければならない。サポーターは試合後の選手コメントを楽しみにしているからだ。なりふり構っていられない。先輩記者とロビーで即席のプレスルームを作り、雑音が気にならないほどの集中力でパソコンを打つ、打つ、打つ。

コメント更新を広報に伝えてチェックしてもらい、OKが出たら作業完了。いつもギリギリで搭乗手続きを行う。だからお土産を物色する時間はない。お土産は試合前に鳥取駅で買って郵送することにしていた。とにかく時間との勝負。石破茂が遅刻する気持ちも分かるのだ。

戦友を送った地での失態

ボクにとって鳥取はスピードが求められ、ハードワークしなければいけない場所だった。一にスピード、二にスピード、三四がなくて、五にスピード。急いで慌てて、しかも仕事に力が入ったあまり、ホテルオークラ鳥取の鍵を自宅まで持ち帰り、封筒に入れて送り返したのもいい思い出だ。その節はご迷惑をお掛けいたしました。

戦友だったY新聞のAちゃんの送別会をしたのも鳥取だった。そういえば、鳥取名物を食べることなく、先輩カメラマンのわがままで焼肉で送り出した。ボクとAちゃんはお寿司が食べたかったけど。

Aちゃんは世界最大の新聞社に勤めているけど、他のスカした記者とは違った。すごくフレンドリーで、ユーモアがあって、なぜだか馬が合った。ベタベタすることはなかったけど、いつも現場ではたのしくわいわい、フットボールを発信した。あの時のままのAちゃんで。社風に染まらないでほしい。

鳥取の日曜日は昼も夜も駅前が閑散としていて食事に困る。夜の試合が終わり食べるお店が見つからずに、先輩を苛立たせたこともある。不便が多いまちだけれど、砂丘があったり、スナックのママが優しくて温かかったり(先輩のご機嫌が直った笑)、人とまちがせかせかしていなかったり、いいところもたくさんある。

観光には物足りなさを感じるかもしれないけど、いろいろな意味で静かなまち、鳥取が嫌いじゃない。ボクはひとり汗を流し、騒がしくしていたけれども。

次回は米子方面を、ぜひとも攻めてみたい。もちろん、ゆっくりと。

おもいのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集