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「夢幻回航」17回 酎ハイ呑兵衛

沙都子は財布の中身と、武器の性能を考えながら、バランスの良い買い物をしたのかどうかと心配になってきた。
心配になった、と言うよりも、まだ不安だった。

力が足りていないのでは無いかと不安なのだ。

世機は沙都子がこんなに不安がる様子を見るのは、初めてだった。
少なくとも、仕事を、本格的に始めてからは、こんな事は無かった。
修行が終わったばかりの頃、仕事をやり始めた頃の沙都子を思い出して、世機は懐かしくなった。

可愛くなったと言えば、沙都子が怒るか?

世機は自分の方もパワーアップしていた方が良さそうだと思っていたが、装備の相談を、西園寺時子に相談するべきかと思った。

西園寺時子は、二人を見比べていたが、商機を感じ取ったか、世機に視線を向けた。
世機はやはり自分も装備を調えるべきか、相談するかと、時子に話しかけた。
「西園寺さん、オレにも何か、使えそうな武器はある?」

時子はゆっくりと目を閉じると、頭の中を検索して、さらに状況を判別してくれたのだろう。

「沙都子の様子と、話しから分析して見ると、世機ちゃん、あんたにもいるかもね、武器が」
武器に関しては、この女は信用できる。
世機は彼女の言葉を聞く事にした。

「あんたの体術だけだと、キツそうだね」
「わかるか」
「徹しだけじゃ、効かなかったのでしょう?」
「そうだよ」
オレはそういった。

徹しとは、格闘技の技を繰り出す力の伝わり方を言う。
打撃の衝撃波を体内に効率よく伝える技だが、世機はこれが得意なのだ。
だが、里神翔子の仲間の鬼には、あまり効いていなかった。
その事に気が付くとは、さすがに西園寺時子。

「何か良い道具でもあるのか」
「はい、ありますよ、お客様!」
時子の目が円マーク!ドルマーク!!
世機は「ハハハ」と、軽い笑いを発しながらも、時子の薦める武器に興味が出た。

「あなたは、ぶった切るような凶暴な沙都子とは違って、棒とかヌンチャク系が良いのかもね。多分性格的にも合っていそう」
時子の言う事に納得してしまう。
こういったところが、この女の凄いところだ。
世機は思った。
霊能力の一種か?こういったことへの感は、時子はすぐれていた。

「沙都子が怒っているよ」
目のつり上がった沙都子が、時子を見て睨んでいる。
時子は知らん顔で無視して、世機に話しを続ける。

「呪文つきの棒でも使って見る?それとも・・・」
時子はカタログを捲っていく。
世機はそれを見ていたが、あるページで、感が働いた。
「ちょっと、これ」

オレが指さしたのは木刀だった。
呪文が彫られた木刀。
「これか、いいかもね」
時子も納得した様子。
「でもこれ、準備が大変よ」
「準備?」
「念を込めるんだよ。自分の気というか念を込めておく必要がある」
「具体的には?」
「気を込めて、手の平で撫でるんだ」
なんかイヤラシいなと、世機は思ったが、口にすると、この美少女風オバさんは気を悪くしそうなので、世機はグッとその気持ちを抑えた。


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