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大会参加報告:日本TA協会第36回大会

 TAとは私が専門とする交流分析 Transactional Analysis の略称です。日本TA協会は、日本で唯一、国際TA協会(ITAA)と提携している団体で、ITAAが定める国際資格取得を目指す会員を中心に、交流分析の学びを深めています。交流分析を勉強したいと言われたらこの団体に入ることをお勧めしています。
 私がTA協会の大会に初めて参加したのは1996年で、「短期の解決を目指して」というテーマで研究発表しました。この辺の事情は以前のnoteに書きました。協会のNewsletterは毎回楽しみに読んでいるのですが、大会に参加するのは20数年ぶり!?かな。


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日本TA協会第36回大会
日時:2024年6月15,16日
会場:大正大学(ハイブリッド開催)
テーマ:和やかなこころ・傷つくこころ
https://taaj.or.jp/program/conference36/
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 プログラムは以下の通りです。

1日目
午前 基調講演1 「心の傷(トラウマ)と支援」
午後 ワークショップ1「TAミニ講座」
   ワークショップ2「子どもの笑顔が見たいから」
2日目
午前 ワークショップ3「生かされている -心の平穏の在処-」
   ワークショップ4「こころの距離を図式化する」
午後 ワークショップ5「ダークサイドを直視しよう」
基調講演2「TA and social engagement」 

 私は両日とも午後に予定が入っていたので当初は参加をためらったのですが、4月の交流分析学会で門本先生から、「来てね~」と言われ参加を決意。参加して良かったです。

▼1日目 「心の傷(トラウマ)と支援」

 1日目午前は基調講演1にオンライン参加。上智大学准教授で、被害者支援都民センターにて犯罪被害者の支援をしている齋藤梓先生。私の専門の一つは「トラウマ臨床」ですが、ここのところ自分の知識を整理する必要性を感じていたので、齋藤先生の話はとてもいいまとめになりました。そして齋藤先生の、優しく、しなやかな話し方を聞きながら、こういったセラピストに巡り会ったクライアントは幸せだろうなと感じました。
 講演は心的外傷論の歴史から始まり、PTSDの定義、複雑型PTSDのことなど、いくつも重要なことを話してくださったのですが、ここでは2つだけご紹介します。

●逆境的小児期体験 (ACE)

 逆境的小児期体験(ACE:Adverse Children Experiences)は、うつ病や依存症などの精神疾患の発症だけでなく、喫煙、肥満、糖尿病、性病、心臓病、脳卒中、HIV、COPD、骨折など、さまざまな身体疾患の発症に関わっているという調査結果の紹介でした。そうだろうなあとは思っていましたが、改めて示されると考えこんでしまいました。日頃、産業医として生活習慣病の指導をしていると、この人が健康的な生活習慣に切り替えられないのは、生育史上に困難があったのではないかと感じることが少なくないからです。極端な言い方をすると、生活習慣病を防ぐには健全な子ども時代を過ごさせろ、ということになるのかもしれません。

●トラウマの中核は無力化と他者との断絶

 もう一つは齋藤先生が紹介したジュディス・ハーマンの言葉、「トラウマの中核にあるのは、無力化と他者との断絶の経験である」です。これは首がもげそうなほど激しく同意します。逆に言えば支援で必要なのは、サバイバーのエンパワーメントと他者との新たな関係の構築となるわけです。さらにコントロール感を取り戻すことも重要です。被害者が、「こうなったのは自分の責任なんです」と語ることがあるのは、自分の責任と考えた方がまだコントロール感が残るから、という言葉にハッとしました。「あなたに責任はない」と一言で片づけられてしまったら、「じゃあこのとてつもなく苦しい状況をどう受け止めればいいのだ!?」となってしまうわけですね。
 トラウマ臨床については金剛出版が6月に開催した「トラウマ臨床の現在(いま)」にも参加しましたので、その報告も兼ねてまた取り上げます。

▼2日目 「生かされている -心の平穏の在処-」

 2日目はワークショップ3、「生かされている -心の平穏の在処-」にオンライン参加しました。講師は虎ノ門病院の疋田尋子先生。本当は両日とも現地参加するつもりだったのですが、土曜朝、起きたらかなり疲れているなあと感じ、オンライン参加に切り替えた次第。

●日曜も疲れていた

 そして日曜。朝起きるとやはり疲れている。今日もオンラインでボケッと聴いていようとアクセスし、トイレに行って戻ってきたらもう始まっていて流れが把握できず。間もなくブレイクアウトルームが設定され自己紹介と。えっ!…シャツ1枚だしひげも剃ってないしなあ…とりあえずスルーしました。どうしようか。このまま傍観者として参加しようか、それとも抜けようか、しばし葛藤。今は人と話すの、しんどいし、頭を使いたくない。コミットしたくない…と思って30分くらい経ったところで退出してしまいました。
 実は同時間帯に開催されていた金剛出版の「トラウマインフォームドケア」のワークショップも申し込んでいました。後日アーカイブを見るつもりでいたのですが、せっかくだからとリアルでちょっと覗いてみました。こちらはある程度予想通りの内容。

●研修離脱から再アクセスへ

 さてどうしようか…改めてTA協会の方のダウンロードした研修資料を眺めていたら、「あなたの心の平穏が失われた時のことを思い出してください」というワークが目に留まりました。「あ、俺、いま心が平安じゃないじゃん!」と気づいたのです。
 先週、あるオンライン動画研修に参加したのですが、200分にわたる動画を見続けて、めちゃくちゃ疲れました。気持ちが悪くなるくらい。もう見たくない!と思うほど。研修動画の話し方が、まるでAIが喋っているように機械的で、途中寝てしまったくらいです。これをきっかけに見逃していた動画をいくつか見たのですが、心がざらざらしていく感じを抱いていたのです。頭が思考優位になっていて、頭の中がデジタルであふれていたことに気づきました。
 そんなわけで、「心の平穏」ワークショップに再アクセスしました。「心の平穏」「生かされている」という講師の話に心が癒やされました。「生かされている」は、「中動態」にも通じる言葉だと思いました。
 研修の最後に、講師に感謝のコメントをチャットで入れました。すると、せっかくだから喋ってくださいと指名されてしまい慌てたのですが、ここに書いたことをそのまま伝えしました。疋田先生、ありがとうございました。
 心がざらざらしている時は、副所長の春日がコーディネイトしている森林セラピーが有効ですが、すぐには行けないので、せめて移動時に空でも眺めようと思ったのでした。

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