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11月10日から16日はアルコール関連問題啓発週間です(JES通信【vol.189】2024.11.11.ドクター米沢のミニコラムより)


 2013年にアルコール健康障害対策基本法が制定され、毎年11月10日から16日はアルコール関連問題啓発週間と定められました。以後、厚生労働省や自治体はアルコール関連問題の啓発にさまざまな取り組みを行っています。

▼今年度のテーマは「飲酒運転」

 今年度、厚生労働省がこの啓発週間で重点的に取り上げるのは「飲酒運転」です。飲酒運転の背景にはアルコール依存症や飲酒習慣の問題が隠れていることが少なくありません。今年度のシンポジウムでは飲酒運転とアルコール依存症の関係や、依存症からの回復支援や社会全体での飲酒運転防止について取り上げるとのことです。

 ●オンラインシンポジウム「アルコール依存症が背景にある飲酒運転」
  ~介入・回復への支援と社会全体での安全対策~
  2024年11月15日(金)18:00~20:10
  Zoomウェビナーによる開催
  詳しくはこちらから。

▼11月から自転車の酒気帯び運転が罰則の対象になりました!

 アルコール関連問題啓発週間と直接関係はありませんが、道路交通法が改正され、2024年11月から「自転車の酒気帯び運転」が新たに罰則の対象になりました。運転した本人はもちろん、酒気帯び運転をするおそれがある者に対し酒類を提供した人や自転車を貸した人も酒気帯び運転をほう助した者として罰則が科されます。
 ちなみに電動キックボード(特定小型原動機付自転車)も罰則の対象です。これからは飲酒する際は自転車を使わず、もしも自転車で出かけて飲酒した際は、自転車を押して帰るか、自転車は置いて徒歩かタクシーなどで帰るようにしてください。

▼「酒気帯び」とはどの程度の飲酒?

 「酒気帯び」とはどの程度飲酒した状態を言うのでしょうか。道路交通法では、「血液1mLにつき0.3mg以上又は呼気1Lにつき0.15 mg以上のアルコールを身体に保有する状態で運転すること」と定めています。ちなみに同資料内で「酒酔い運転」は、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で(自転車を)運転する行為」とされています。アルコールの分解能力には個人差があり、どれくらい飲酒したら上記基準を超えるのかを明確に示すことはできないのですが、一般的には純アルコール20g(ビール500mL1本、日本酒1合、7%缶チューハイ350mL1本相当)が体内から消えるまで3~5時間かかるといわれています。

▼飲んだ量と分解時間を計算してみましょう

 厚生労働省は飲んだアルコールがどれくらいの時間で分解されるかを計算できるサイトを公開しています。スマホでも利用できます。

 ●あなたの飲酒を見守るアルコール・ウォッチ

 試しに「ビール中ジョッキ3杯」と入力してみると、分解時間は12時間と出ます。前夜22時まで飲酒したとすると、翌朝10時頃まではアルコールが体内に残っている可能性があるわけです。午前10時の時点で呼気から0.15mg以上のアルコールが検出されることはさすがにないと思いますが、午前7時に車で出勤する場合はどうなのかわかりません。ぜひこのサイトでみなさんの飲酒量と分解時間を確認しておいてください。

▼覚えておこう 飲酒の0123(ASK)

 今年の3月に厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表したことはJES通信vol.178(2024.3.12.)でご案内しました。我が国初の飲酒に関するガイドラインで非常に丁寧に作られているのですが、詳しすぎてわかりにくいのが「玉に瑕」でした。このガイドラインを踏まえ特定非営利活動法人ASKがとてもわかりやすい資料を作っていますので、さらに簡略化した表を作ってみました。

 ●表 覚えておこう 飲酒の0123(ASK作成、米沢が簡略化)
  飲酒ゼロ  飲むのがNGのとき
         20歳未満、妊娠授乳中、運転するとき、服薬中など
  1合まで  翌日に持ち越さない目安
         女性、高齢者、お酒に弱い人はより少なく
  2合以上  男性の生活習慣病リスクが高まる
  3合以上  a.危険な一時大量飲酒
         事故や外傷、暴力事件などが起きやすくなる
        b.危険な大量飲酒の習慣
         飲酒運転、酒気帯び出勤。アルコール依存症に進行する
         危険

 これから忘年会シーズンです。安全と健康に気をつけながら、楽しい年末をお過ごしください。

▼依存症者が抱える生きづらさ - 「依存症といのち」公開シンポジウムより

 本年9月にご案内した日本自殺予防学会・いのちの電話共催による公開シンポジウム、「依存症といのち」は好評のうちに終えることができました。2人のシンポジストの了解が得られ、アーカイブが公開されています。私は司会を務めましたが、司会の立場から感じたこと考えたことを産業ダイアローグ研究所noteに掲載しましたので、お時間あればご覧ください。
 「依存症」という言葉からイメージされるのかもしれませんが、依存症に陥る人は意志が弱い人、甘えている人、未熟な人といったイメージがつきまといます。しかしシンポジストの成瀬暢也先生、高知東生さんの話を聞いていただくと、多くの依存症者は小児期に壮絶な逆境体験を被っており、その過酷な環境を生き延びるために、あるいはつかの間の安心感を得るために、依存物質・依存行為が助けになっていたことがわかります。しかし依存行為を続けることで負の側面が徐々に大きくなり、生活の崩壊や自己破壊的行動に近づいてしまうわけです。
 シンポジウムで高知さんが語ったように、依存行為の結果、自分が傷つけた人たちへの「埋め合わせ」はしていかねばなりませんし、法を犯したのなら罰せられることになります。ただ、彼らが立ち直るために必要なのは、彼らを支えていく人のつながりであり、逆境を生き延びた人への世の中の理解ではないかと思います。今回のシンポジウムが依存症やその先に待ち受けている自死などの問題の理解に役立つことを願っております。 

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