よくたベルコがいたってさ
娘と出会った7割くらいの人は、娘の印象をこう話す。
「とにかくよく食べる」
と。
皆、娘をよくたベルコという
確かに彼女はよく食べる。好き嫌いも気になるほどはない。出された食事は大概、煮物や野菜からなくなり、むしろ肉が最後になることもある。
だから「いいねー!苦労しないね!良い子だね!」という言葉を友人、親戚、ママ友どこでもいただく。
ありがとうございます。なんなら私もちょっとネタにしちゃってます。
あれ?きづけば娘の印象それ一色!?
こうなると、他の子の食べない悩み相談には、あんまりのれないし、共感もしてあげられず、全然野菜食べない子のお母さん同士の会話には入っていけない。
それは、それでさみしい。
もちろん娘にだって嫌いなものはある。レタスとか、牛乳寒天とか。牛乳寒天なんて、一緒に作ってみたときは待ちきれなくて、何度も冷蔵庫見に行ってた。のに、満を持して一口入れた瞬間に逆再生で塊が出てきた時の……娘の表情ったら……顔のパーツが全部線になっていた。
でもレタスや牛乳寒天を食べなくても、生きていけるので、そんなに気にしていない。この世の食べ物全てを好きになる必要はないと思っている。
家のご飯を残すこともしょっちゅうある(盛りすぎ問題)。そのときは「じゃあママが食べるね」と、即私が食べる(だから、一人っ子とは思えないがっつき具合なのか)。捨てるのがもったいないからだ(そして母食べ過ぎ問題)。
食が細い子や、決めたものしか食べない子のお母さん、大変だろうな。少しでも、と野菜を練り込んだパンケーキ。涙の努力が報われればいいなと思う。
そして、その子の嫌いにも何か理由があって、その感覚の鋭さは、実はもって生まれた素晴らしい才能かもしれない。大人になるにつれ、味蕾はどんどん退化するそうで、食べられるものが増えるのは、成長じゃなくて退化なんだと……。だから、無理強いしなければ、きっといつか報われる時がくるよと、伝えたい。そして、その子の才能は、うちにはない、素晴らしいものなのよと。
よくたベルコは良い子なのか
前に、おんなじ様な、よくたベルオくんのお母さんと話す機会があった。
「赤ちゃんの頃からですか?」
「ミルクも良く飲んでて、こんなに飲んで良いのかと心配になりました。」
や、
「我が家では、ご飯の前に何か口にいれないと、食材奪っていくんです」
「わかります。おやつも凄い勢いですよね」
など。話が弾む。
よくたベルコ、ベルオだって、いろいろ大変なんですよね。
台所は戦場です。
時々、猿山でご飯作っているのかなと思います。
いつもいきなりゴングがなるコース料理方式だから時間とのたたかいですよね。
そんな表現かどうかはさておき、普段、食べない子ちゃんの前ではあんまりできないから、食べる子あるあるの話が楽しかった。
確かに、“今の食”でみたら、うちは育てやすい子なのかもしれない。
とはいえ、台所の戦場以外にも、よく噛んでるのかとか、カロリー塩分どうなのかとか、心配なところもある。
そして数年後はわからない。
太ってきて悩むかもしれない。
思春期、食が細い子の方が良いとされる時期もくるだろう。
舌が敏感な子、鈍感な子、いろんな子がいなければ、いざというとき人類が生き残れない。
なんでも口にして生き残るタイプもいれば、毒に当たらずに生き残るタイプもいる、と思っている。
そのときの状況で、いい悪いは変わる。
だから、よく食べるから良い子、食べないからダメな子、とだけは思ってほしくないし、周りも言わないでほしいなと思う。
比べてしまうと気になるけど。
遥か昔、保育士1年目。1歳児を担任していたうら若き私は、つくづく思ったことがある。
育児の悩みというのは様々で、パーフェクトに苦労のない子なんていないんだな、と。
比べるものが変われば、育てやすくもなるし、育てにくくもなる。
穏やかな女の子はアレルギー持ちで、除去が大変で。
よくたべる子でも、遊びの場面で手や口が出やすくてお友達とのトラブルになりやすかったり。
しっかりさんでもお昼寝全然寝なかったり、
発達がゆっくりでもニコニコさんだったり、
言葉が遅くても、よく周りを観察していたり。
よく考えている子が、行動が遅かったり。
優しい子が、よく泣いたり。
成長とともにそれも変わっていく。
100パー育てやすい子なんて、この世には存在しないんだな。だから、100パー悩んでない保護者の方も、きっと存在しない(もちろん、子によって大変度も様々で、保護者の方のおかれた状況や性格、適切な支援が入っているかどうかでも、悩みの深さは違って来ると思うけども)。
ひとつの場面で、良い子かどうかなんて、決められない。
裏を返すと、みーんな良い子なんだと思う。