保護者の視点で新しい三ヶ根駅を考える
幸田町深溝地区にある三ヶ根駅は、1967年(昭和42年)に開業した。当時は地域の振興のため、深溝地区の住民を中心に熱心な駅設置運動が展開され、行政のみならず町民自ら建設費用を負担したという。それから半世紀以上が経過し、駅も町も住民も風景も変わった。
現在の三ヶ根駅は無人化され、バリアフリーにも対応していない。そこで、4~5年後を目途にエレベーター設置に伴う駅舎の改修が予定されている。この事業費は幸田町の税金が投入される。ならば、幸田町民の未来の生活に相応しい駅に生まれ変わらなければならない。単なる改修工事ではなく、駅周辺が住民を主体としたまちづくり拠点にならなければならない。今年の6月以来、幸田町民が欲しい三ヶ根駅の姿・ニーズを探るために三ヶ根駅未来会議を定期的に実施し続けている。幅広い世代・立場の町民に参加して頂くために、平日の昼間と夜間に実施しているが、「子育てが忙しくて参加できない」という声をたくさん頂戴していた。そこで、子育て世代を対象に、三ヶ根駅に程近い深溝保育園と里保育園に出張する未来会議を実施した。
深溝および里保育園の保護者たちによると、三ヶ根駅は積極的に利用したい駅ではないようだ。雰囲気が怖い、駅ホームの屋根が短い、ベンチが少ない、子ども連れでは危険を感じる、汚い、発着本数が少ない等、多数の課題点が指摘された。
今回の参加者で、三ヶ根駅を毎日利用する人はいなかったが、小学生になると三ヶ根駅は通学路にもなり、高校生になると通学で日常的に使う駅になり、三ヶ根駅は生活と教育に密着した存在だ。参加者の議論はとても真摯で議論は白熱した。
では、課題点をどう解決するのか?三ヶ根駅にあるべき機能とは何なのか?
安全・防犯の強化、明るい空間の確保、清掃の改善、空間視認性の確保、人員配置等を求める声は大変多かった。続いて、同じ幸田町内にある相見駅前と比較して、深溝地区には子ども連れで遊べる公園や広場、商業施設が少ないという声が多く、三ヶ根駅にも同様の機能を求める声は多かった。三ヶ根駅の近隣には小学校や保育園があるため、駅に児童館を移転・併設させれば、子育てがしやすい駅前になる、という声も多かった。
駅〜歩道橋〜地下道〜コミュニティを結ぶ動線をバリアフリー化して欲しい要望はとくに多かった。屋根で機能を一体的につなげて欲しいというものである。ベビーカーや小さなお子様連れの場合、現在の三ヶ根駅には全く配慮がない。
今回の参加者の大半は、保護者であり子育て中の女性だった。しかし、彼女らは普段は自家用車で日常生活をこなし、三ヶ根駅は遠い存在だ。だが、子育ての将来を考えると、三ヶ根駅を何とかしたい!という強い気持ちが伝わってきた。三ヶ根駅の目の前に小学校・保育園があり、かつ駅構内が通学路であることから、駅構内に子育て機能を備えることで、鉄道は利用しなくとも、駅を積極的に利用したいと考えている層なのだと、司会を努めた株式会社イチバンセンの川西は感じた。
三ヶ根駅の利用者は、少子高齢化の影響で大きく減少している。伸び代を観光客に期待できないため、彼女らのように「鉄道は利用しないが、子育てのために駅を活用したい、こんな機能が欲しい」という声を、今後も真摯に聞く必要がある。
(本稿は、幸田町内で掲示・配付している壁新聞と同一内容です)