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雲南日本商工会通信2024年6月号「編集後記」
先日放送された宮藤官九郎のドラマ「不適切にもほどがある!」が好評だったそうです。コンプラ遵守でがんじがらめになった日本社会を風刺する物語ですが、共感する人が続出したそうです。私は、肯定的な反響が多かったことにホッとしました。自分もまた、昨今の日本社会の風潮に息苦しさを感じていたからです。
ところで、4月下旬から2週間ほど、仕事で東京に戻りました。東京は不景気な昆明よりはるかに活気がありました。同行した、訪日が2度目となるアシスタントのゴカ君も楽しそうでした。
昆明に戻ってきて、改めて東京の思い出をゴカ君と語っていたら、「歩いている日本人がみんな笑顔だったのが印象的だった」と言います。確かに、コロナ禍の頃と比べれば、東京は圧倒的に明るくなった印象があります。外国人が増えたことも、それに花を添えている気がします。
ゴカ君が東京をほめてくれたお返しに、東京と比べて昆明のいいところを伝えたいと私は思いました。
「昆明は他者に寛容なのがいいね。自分が何をしても周りは気にしないから、とても自由を感じる。タバコだって吸いやすいし、電子タバコならなおさら。」
私は中国の電子タバコを吸っています。タールをまき散らさないし、日本のIQOSと違って匂いが少ないため、吸っていても昆明では誰も気にしません。しかし今回の東京滞在の際、「星乃珈琲」店内の席で吸っているのを店長が見つけ、キツくお叱りを受けたという経験があったため、そう言ったのです。
するとゴカ君は、「私は東京のほうがいいですね。みんなが相手の事を気遣って、むしろリラックスできる」と、私に同意しません。
とはいえ、東京者である私はそれを聞いて嬉しく感じました。しかし同時に、「長く暮らしたら考えが変わるかもな」と思いました。
日本には「唯一神」はいませんが、「お天道様≒世間様」が我々を監視し、じわじわと自由を束縛します。もし日本で仕事をすることになったら、その伏兵である「お客様」が、彼を疲弊させることでしょう。
「喫茶店で店長にお叱りを受けたエピソード」をゴカ君に話すと、「実は私もその喫茶店で電子タバコを吸っていました。でも周りに迷惑がかからないよう、絶対見つからないように吸いましたよ」と私をたしなめました。「他人に迷惑をかけない限り自由」という日本人らしい作法。日本での所作を体得するゴカ君のほうが、私より日本に馴染みやすいかも。そういえば、東京で赤信号を渡ろうとしたときも、彼に止められたっけ……。