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雲南日本商工会通信2022年4月号「編集後記」

 好評をいただいている「都市伝説と言う勿れ」シリーズ。今回は「日本ラブマシーン構想」です。
 コロナに続きウクライナ戦争が起きた結果、これまでの常識が目まぐるしく変わっています。しかし、かつては数十年をかけて、ゆっくりと変化してきました。
 たとえば以前は、子供が老いた親の面倒を見るのが当たり前で、老人ホームに送れば「親不孝」「人でなし」とディスられていました。
 しかし今では介護保険制度が整備され、「介護をひとりで抱え込まないで」的なキャンペーンが行われ、国または地域全体がそれを引き受ける動きになっています。つまり、長い時を経て常識が変わったわけです。
 ではなぜこれまで、自分の親を老人ホームに送るとディスられていたのか。
 古来からの麗しい伝統を守らないから? いいえ。それはうわべの理屈であって、要するに、これまで苦労して親の介護をしてきた人にとっては不当に見えたからでしょう。彼らにとって老人ホームに親を送る人は…

家庭や社会におけるフリーライダーであるとも言えます。……(フリーライダーに)激しい攻撃を加えることが共同体の秩序を守るための『正義の行動』だと信じて……叩きのめそうとするのです。この『正義の行動』には快楽をともなうという仕組みも、脳には備え付けられています。

中野信子著 『不倫』(文春新書、2018年、「はじめに」)からの引用。
実はこの部分は、「不倫を非難する人」について解説したものです。

 俯瞰的に見ると、常識は「個人的願望と社会的願望のバランス」によって成り立っており、そのバランスが崩れることで常識が変わるということがうかがわれます。たとえば個人の負担が重くなり、社会の代表たる政府が支援し始めると「個人的願望」の方に寄るという具合です。
 そういえばかつて、子連れ出勤したアグネス・チャンさんに林真理子さんが「いい加減にしてよアグネス」と噛みついて大論争になったことがあります。それから30年、政府が子連れ出勤を必死にサポートしています。少子化を食い止め、生産性を向上させたいのでしょう。変化の遅かった時代でも、30年も経てば常識は変わるものですね。
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 長い前置きになりました。日本が「なすすべ無し」になった大きな原因の1つは少子化です。それを止める現実的な方法がない以上、現実を受け止めつつ、たとえ非常識でも前向きな構想を考えなければなりません。
 私が日本に2年ほど住んで感じることの一つに、「(若者も含む)子供たちに対する微笑ましさ」があります。中国にいたときは1ミリも思わなかったのですが、子供が微笑ましいと感じるのはその国籍に原因があるというよりも、老人ばかりの街にあって、ひときわ輝くキラキラする存在に見えたからです。
 子供が減りすぎると、当然ですが子供の希少価値が高まります。するとどうなるか。
 よそ様の子供まで自分の子供のように愛しく思えるようになることでしょう。すると、家族が面倒を見るというより、社会で面倒を見るべきという気運が高まっても不思議ではありません。
 その結果、育児保険制度(介護保険制度の子供版)みたいなものが整備され、小児性愛障害者から守りつつ、社会あるいは近隣の人々で育てるケースが増えるでしょう。つまり子供は親からの祝福ではなく社会からの祝福を得て育つようになるのです。
 すると、結婚したカップルにとっても、子育てのプレッシャーからある程度解放されます。たとえ子供がいても、相手がいやだったらさっさと離婚しても大丈夫です。そうなると、「望まない結婚≒できちゃった婚」は減り、また、子育てしたくない親は社会に子供を託すので、「ネグレクト」も減るでしょう。
 そのような社会が定着すると、結婚という概念の必然性が薄れます。それに伴い「不倫」の意味も薄れることになります。「不倫に対する非難は、独占欲という自身の劣情の裏返しなのでは?」といった意見が説得力を持つことになるでしょう。
 また、肉親以外に育てられた健やかな子供が増えるにつれ、「血は水よりも濃し」ということわざが必ずしも真実ではないことが明確になります。
 その結果、日本の至る所で、老若男女問わず、恋をする人々であふれることになるでしょう。
 すなわち「ニッポンの未来は♪世界がうらやむ恋をしようじゃないか」になるのです。出生率も増加に転じ、今の子供たちが「明るい未来に♪就職希望だわ」と思える国が誕生します。これが「日本ラブマシーン構想」です。
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 常識が目まぐるしく変わる時代、我々はどう対応していけばいいのか。私の考える対応方法は「望ましい未来は何かを考え、先回りして新たな常識を提案すること」です。では「望ましい未来」とは何か。それは自分自身、または人間、または日本にとって本当に好ましいことは何かを自問することで見えてきます。
 「日本ラブマシーン構想」もそれによって作られました。つまり、先日見た「新垣結衣に『旦那はいるんですけど、恋しませんか』と言われちゃう」という夢が、予知夢になるためにはどうしたらよいのかと考えて生まれたものです。信じるか信じないかはあなた次第!

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