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雲南日本商工会通信2022年3月号「副会長の挨拶」
ウクライナへのロシアの侵攻が始まり、「第二次大戦以来の危機」と世界が危機感を持っています。経済制裁という手段がどこまで効果を発揮するのか、どこで経済制裁という手を下ろすのか、手を下ろさないとすると、新しい冷戦となるのか、その場合には今度は東側の方が経済発展のスピードが早いのではないか、など不確実性が高まっているようです。
サラエボの一発から第一次大戦が始まったように、小さなキッカケが次々と事件を拡大し、当事者にもコントロール不能の事態を起こすのは、人間という動物の判断能力の限界で、最終的にはAIに判断してもらうしかないのかもしれません。
専門家でないのでロシアとNATOの詳しい動機はわかりませんが、早い話が、熊や狼など野生動物などが持つ縄張りが、人間に適応されると国の領土ということでしょう。縄張りが増えるのは基本的には種の保存にプラスだし、縄張りが減るのは種の保存にマイナスだから、領土を拡大すれば支持率は上がるし、侵入した敵はやっつけろというのが国民感情という事実は、ホモサピエンス以前の動物と同じ構図で、竹島のように資源の価値が以前の反応なのでしょう。
竹島も北方領土も尖閣も、政権が国民の支持を基盤にしている限りは、交渉によって縄張り(国土)が返還されることはないというのが事実で、最終的には戦闘力でしか解決しないというのが歴史的には事実なのでしょう。
最近、『人体600万年史』という本と『サピエンス全史』という、上下巻のある本を4冊読んだものだから、これまで人間がいかにヒドイものだったかというのを事実として突きつけられて、現在の観念上の人間理解と歴史的な事実の違いに面食らっています。
絶滅した大型動物の半分以上にはホモサピエンスが絡んでいること、デニソア人とかネアンデルタール人など同じホモ族の絶滅もおそらくはホモサピエンスの殺戮(一部は現世人類と混血している)、地球上、すべての所に進出してその生態を変え、環境を変え、自らの種の増殖にひたすら邁進していること、地球環境にもっとも共存していない動物は明らかにホモサピエンスであることに、ほぼ疑いの余地はないようです。
さらにそのホモサピエンス同士は仲が良いかといえば、またこれも複雑で、社会動物として相互に競争や不仲もあれば、お金の為の殺人や恋仲のための殺人、領土のための戦争、言語や民族、肌の色による言われなき差別や闘争もあるということで、どこから見ても平和的とは言いかねるかなり厄介な動物であるのは間違いなさそうです。
最近、マーケティングの書籍を読むことが多いのですが、色やフォントには心理に訴える感情があり、それは認知ではなく、無意識の訴えるバイアスというのが事実として利用されています。赤は力であり、情熱であり、危険であるというのは、火であり、肉食動物の口の中から来ている。黄色が温かさや幸福を意味するのは、秋の実りや収穫時期の葉の変色から来ているそうです。緑が自然や健康をイメージするのは、サルからの進化の過程で多くの時期に野菜を主食にしてきた過程でしょう。それらは進化の中で獲得した感情なので、私たちの遺伝子の中にプログラムされているというコトのようで後天的な理屈ではないようです。
そのマーケティングの論理で言えば、白は清潔、誠実という意味となり、黒は注意や安全という区分になります。しかし、これはさらにややこしい問題を孕んでいて、白人と黒人という区分けにも繋がってきます。
黒人や白人の問題は西洋やアメリカのコトでアジア人には関係ない、と思っていても、日本語で「ブラック企業」「ブラックバイト」という言葉を使って悪い意味が簡単に理解できるのも、「ホワイトニング」「ホワイトカラー」「美白」などの言葉がほとんど肯定的な意味になるのは私たちも確かにバイアスの影響を受けているからでしょう。
おそらく世界もこうなっていて、アフリカで紛争が起きて黒人が何人死のうと世界的な関心が広がることはなく、白人としてのウクライナとロシアの問題は現に世界的な関心を引き起こします。もちろん経済的な影響の大小はあるでしょうけど、ここにも人種的な要素があるのではないかと思います。なにしろそれはバイアスであって理屈ではないからです。
当然ここで問題になるのは、北朝鮮、台湾など、日本が関連せざる得ないアジアの問題が起きた時の世界の関心と対応です(ミャンマーや香港にも最近、問題は起こりましたが)。
紛争は領土か資源の拡大(生存と生殖に有利になる)を動機に起きるというのが人類の進化の歴史的事実とすれば、アメリカや欧米がアジアの紛争にどこまで正義という義務感で犠牲を払うかは論理的には起こり得ないことでしょう。アフガニスタンやベトナムなど領土や資源が関係しない場合のアメリカ介入は、ほとんど失敗しているようですから。
「同盟国」「価値観を共有する国」という理性での約束はありますが、感情や本能としては微妙な状況です。
科学技術の発展は目覚ましいものですが、ホモサピエンス自体が進化しているようには見えず、進化の歴史から見るとかなり不完全な人間の思考や判断は、いっその事、科学技術としてのAIに判断していただく時代になった方が、人類は幸福になるのではないかとも思えてきます。
将棋と同じようにAIの判断を学びながら、人間が自分の判断力を鍛える、しかし、どこまでいっても人間はAIには及ばないわけで、政治や外交のような大切な問題はAIにお任せし、自分の個性を加えない方が間違いないようになるのでしょうかね。そうなると政治家などはヘタに自分の個性を加えない平和的な犬か猫にお願いする方が投票率も上がり良いのかもしれません。
未来は不合理なバイアスを持つ人間には任せられないという事が結論で、人間疎外というのは、産業革命ではなく、情報革命でいよいよその正体を見ることになるのかもしれません。