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雲南日本商工会通信2023年1月号「編集後記」
話が遡りますが、11月1日夜に昆明空港に到着しました。空港からホテルへ向かうバスから、3年弱ぶりとなる昆明の夜景を眺めました。薄暗い中、ところどころにビルの灯り。そして赤いネオン……。「しばらく見ないうちに激変してたらどうしよう」と不安だったので、以前と変わらない風景にホッとしました。
11月11日に隔離を終え、昆明生活が始まりました。街に出てみると、かつてのような活気がないのを実感します。久しぶりに会う友人たちも「景気が悪いよ」と言います。
ただ、確かにどん底状態にある人がいる一方、「時代の変わり目にどう出し抜くか」というマインドを持つ人もいました。
「金がないよ」と言いつつ、でっかいEV車に買い替えていた友人もそのひとり。「久しぶりだから」と高級料理をふるまってくれました。
1960年代、香港が大暴落したときに逆張りして大富豪になったのは李嘉誠でした。2000年にネットバブルが崩壊した後、一気に成長を遂げたのはアマゾンやソフトバンク、アップルなどでした。
一方、1990年代に日本のバブルが崩壊した際には、「新しい企業が生まれて日本経済を力強くけん引した」というストーリーにはならず、淡々と、かつ粛々と低成長を続けることになりました。
今後の中国経済はどちらに転ぶのでしょうか。いずれにせよ、チャンスを掴むのはおそらく、従来の発想を改め、新たな方程式でビジネスする人であり、そのような話に乗っかれる人なのでしょう。
たとえば最近話題の「蜜雪氷城」。ご時世に合わせ、価格破壊戦略で勢力を伸ばしています。チェーン本部は、加盟料でというより、材料の卸しで儲けるスタイル。これは「コメダ珈琲店」と同じ戦略です。特に二線、三線都市では手堅い商売と言えるでしょう。
「わけあって安い」戦略は他にも、同じくドリンクスタンドチェーンで雲南発の「麒麟大口茶」が品数を1つに絞り込んで低価格を実現しています(私の口に合わない味でしたが)。両者とも消費の変化を先読みしたビジネスモデルといえるでしょう。
しかし「新たな発想のビジネス」は、時にサギ話にも聞こえることがあります。でっかいEV車に乗る友人の語る「新たな発想」を聞いて、センスあるなと思う一方で、少しサギ臭さも感じました。
いずれにせよ、久しぶりの昆明の印象は「前のめりの人が減り、理知的な人が増えている」というもの。つまり良くも悪しくも日本ぽい感じになっている印象で、理屈っぽい私にとっては心地が良いです。