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雲南日本商工会通信2023年8月号「編集後記」

 会議のために訪れた北京で、たまたま中国人女性と話をしました。ゴカ君(私の同僚)から、「コラボしたいそうです。北京にいるうちに会ってあげてください」と連絡が入ったからです。
 彼女は日本の大学で建築を学び、日本の設計会社で数年働いてきました。日本で知り合った旦那(中国人)と結婚することになり、中国に戻ったのが去年のこと。ところが就職先が見つからず、仕方なくフリーで設計の仕事をしています。フリーといえば聞こえがいいですが、発注者がほとんどいない状態。
 「外国の大学院で学んだ人が就職できないなんて、数年前はあり得なかったですよ。20社くらい応募したけど、ぜんぜんダメ……。旦那も建築系だけど、インテリアデザイン業務担当としてやっと北京の会社に就職できた」などの恨み節が続きます。
 私が「旦那さんが働いているなら、ちょっと安心だね」と慰めると、「でも月給が6000元なんです。そしてマンションの家賃は6500元。この時点で赤字なんです……」と返ってきました。
 インテリアデザインの仕事は建築系よりも専門性が低いため、給料が低くなるのは分かりますが、北京で6000元とは……。
 彼女が「昆明の景気はどうですか?」と聞くので、「こっちも同じ。みんな景気が悪い、悪いって言ってるよ」と答えると、「いまの中国経済はまるで20年前の日本ですね。特に不動産や建設、店舗系はまるでダメ……。金融ぐらいかな、少しまともなのは」と返ってきました。
 いま日本では「給料が安い」という不平不満が多いですが、景気が悪くなったとたんに給料が激減する中国って、やっぱり日本以上に庶民にとって暮らしにくい国と思わざるを得ませんでした。
 その一方、先進国なみのインフラが整う北京の街を見ていると、「日本で学んだ経験」の価値は失せつつあり、彼女が就職できない理由は不景気だけにあるのではないとも思いました。もちろん、これは「日本」で飯を食う私にとって他人事(ひとごと)ではありません。
 ところで彼女の夢は幼稚園や病院、老人ホームのような福祉系建築を設計することだそうです。その分野なら日本がすこし先行しているので、微力ながらもなんとか手助けしたいと思いました。
 

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