雲南日本商工会通信2018年10月号「編集後記」
以前の同僚で、今は深圳で仕事をしている若いイタリア人デザイナーとチャットをしていたら、「国慶節休暇は彼女(イタリア人)とフィリピンで過ごすよ」と言いました。詳しい場所を聞くと、パラワン州ロハスにある小さな島「リーフ島」だとのこと。昨年もここに行ったのだそうです。
初耳だったので、ネットで検索してみると、日本語情報のほとんどない島でした。そんなマニアックな場所を知っていて、そこに何度も行くなんて、やっぱり西欧の人は違うなと思いました。彼ら2人は金持ちではないけれど、体験に関することに金をいとわないタイプです。そういえば私の会社に在籍していた頃も、香港に行った際に給料の半分ぐらいの値段のホテルに泊まっていたっけ。
「体験消費」が注目される昨今ですが、欧米の人々はとっくの昔から「体験」にお金をつぎ込む習慣が根付いていたんだなと改めて実感しました。
ところで、訪日中国人観光客の「爆買い」が話題になったのは2014年前後。しかし現在「爆買い行動」は鳴りを潜め、すでに「体験型」に移行したと言われます。ちなみに2017年の訪日中国人観光客は年間735万人。100万人を超えたのは2008年で、2000年はわずか35万人でした。
有名観光地を(写真で見たものと同じだと)確認すると同時にショッピングを楽しむ旅行から、誰も知らない体験を求める旅行へ――。わずか数年でこのような劇的な変化があったのは驚きです。
日本の場合、「農協ツアー」や「JALパック」が流行したのが1970年代。2000年代になってからやっと「体験」を重視した旅行者が注目され出しました。ということは、極端にいえば日本で30年かけてやってきたことが、中国では5年ぐらいで起こっていると言えます。
この速い変化に、我々はどう向き合うべきでしょうか。「中国の1年は、世界の6年」と認識すればその変化に付いていけそうですが、それ以上に、数年後には中国が世界を追い越し、トレンドの最前線に躍り出る時代がやって来ることに備えておいたほうがいいのかもしれません。