忘れてしまっても、内に刻まれている記憶と感情。「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」を見て


この映画はアニメ「忍たま乱太郎」の3作目の劇場版で、2024年12月20日に公開されて以降、2025年1月には興行収入が13億円を突破、約92万人の観客動員数を記録しています。
ファンの間で名作と言われている「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」を原作としており、著者の阪口和久が劇場版の脚本も手掛けています。

あらすじ
タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に出かけたきり、消息を絶ってしまう土井先生。
学園長をはじめとする忍術学園教師陣が事情を知り、山田先生と6年生たちによる捜索が始まる。
「心配をしないように」という配慮で下級生には土井先生の失踪は隠されていたが、1年は組でただ一人、きり丸だけが偶然現状を知ってしまう。
そんな中、捜索に奔走する6年生の前には土井先生と顔がそっくりなドクタケ忍者隊の軍師・天鬼が現れて…。


大人にとっての忍たま乱太郎って
ところで、忍たま乱太郎と言えば「主要キャラは分かるけど細かいことは忘れちゃった」「子供が見るアニメだよね」という人も多いのではないでしょうか?

実は私も最近までそう思っていました。
幼稚園や小学生の頃は毎日楽しみにしていたけれど、成長するにつれてアニメを見られる日はだんだんと減っていき、社会人になる頃には敢えてチャンネルを合わせて見ることはなくなっていました。
それからはきっと多くの人と同じように、忍たま乱太郎とはすっかり疎遠の日々を送っています。


発端
そんな私がなぜ今回の劇場版を見ようと思ったのかというと、別の作品を見るために映画館へ行ったとき、本編放映前の予告映像でたまたま公開を知ったからでした。

まず、忍たま乱太郎が映画化したことに驚いた。
忍たま乱太郎は過去に2作の劇場版が出ているのですが、私はその存在を知らず…。テレビサイズの彼らしか馴染みの無かった私には、突然に映画館の大きなスクリーンに映し出された乱太郎たちの姿がとても新鮮で、不意を突かれました。

と同時に、自分でも意外なほど強く湧き上がってくる懐かしさ。
まるで何年も会っていない昔の友達にばったり会って「あ、久しぶり」と声を掛け合ったときのように無性に嬉しくなり、不思議な感覚でした。

ストーリーにはシリアスな展開や本格的なアクションシーンが入ることも垣間見れ、かつて見ていたテレビシリーズとはあまりに違う印象に「何年も離れている間に、忍たまに何が起こっているんだ」と、頭から離れなくなってしまい…。
これはもう絶対に映画館で見よう!と決意して、その日から過去の忍たま乱太郎の復習と新作劇場版の予習を始め公開日に備えました。


とにかく思ったのは「見てよかった」
子供の頃は乱太郎たちのドタバタ劇がただ面白かったり「私も手裏剣投げてみたいなー」と忍たまの学園生活に憧れたりしながら楽しく見ていただけだったのですが、大人になって改めて見てみると、忍たま乱太郎の世界の深さに気づきます。

・キャラクターの人間味
今回の劇場版では土井先生の過去に触れる印象的なシーンが度々あり、いつも見せている優しい笑顔からは想像できない悲しみや憎しみ、憤りといった負の感情を心の奥に抱えていることが感じられました。
また、土井先生を中心にキャラクターたちの絆が丁寧に描かれており、各々の個性を通してその思いを表現してくれています。

・たとえば、きり丸。
いつもは飄々と明るい性格のきり丸が、土井先生の安否不明の状況を知り、不安と心配が募り悪夢にうなされてしまう場面があります。
きり丸は戦災孤児で幼いころから一人で生きてきました。土井先生はそんなきり丸を気にかけており、きり丸も土井先生を親のように、兄のように慕っています。
親のいないきり丸にとって、先生を失うことは安心して頼れる存在、帰る居場所を失うことです。
劇場版の終盤、戻ってきた土井先生にしがみつき安堵して泣きじゃくる姿が印象に残っています。まだ幼い10歳相応の様子に、どれだけ不安な思いを押し殺してここまで来たのだろうと思わずにいられません。

・たとえば、6年生。
6年生の6人は、彼らが1年生の頃に当時新人だった土井先生の授業を受けています。
入学したばかりで右も左も分からない1年生の彼らと、忍術学園で教師を始めたばかりの土井先生との間には、今の1年は組とは違った関係性があったと思います。
そんな彼らだったからこそ、失踪した土井先生の捜索が難航した時は当惑し、不安と焦りが勝っていつも以上に感情的になり、意見の食い違いから衝突しまったのでしょう。
また、喧嘩になりながらも、6人それぞれのキャラクターらしさが生きた振る舞いをしていて、妙に納得して見られる場面でした。

・ただストーリーを展開するための登場人物ではなくて
感情のある一人の人間としてそこに存在していて、彼らの間には人間関係がある。その関係は、放送開始から30年以上経っているテレビシリーズと全65巻の原作漫画の中で、長い時間をかけて積み重ねられてきたのかもしれない。そう思わせてくれるほど、全てのキャラクターの人間性が豊かに描かれていたのが、今回の劇場版の魅力だと感じました。


勇気100%
忍たまと言えばおなじみのオープニングテーマ「勇気100%」ですが、今回の劇場版ではオープニングとは違う場面で流れています。
久々に聞きましたが、この曲、聞くだけでとても元気になります。
家でも聞きたい!と思い、レンタルショップへ向かい、1枚だけ残っていた「忍たま乱太郎 20th アニバーサリーアルバム オープニング&エンディング集」を無事にレンタル。

テレビアニメ第1期から第20期のオープニング、エンディングで使われている曲のうち14曲が収録されているものですが、曲名を見てもエンディング曲はどれも思い出せず…。
けれど、1曲目から順番に聞いてみると、全ての曲に聞き覚えがありました。

アニメ放送開始から歌い手を変えながら受け継がれているオープニング曲「勇気100%」ならまだしも、ほとんど記憶に無いと思っていたエンディング曲も、メロディーが流れたら自然に口ずさんでいました。

毎日忍たま乱太郎のアニメを見ていた幼稚園、小学生の頃のものなら分かるけれど、小学生以降のものも思った以上に覚えている。無意識に口ずさめるほどに。
どうやら自覚しているよりも「忍たま乱太郎」は私の中に根強く刻まれているようです。

図らずも、今回見た「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」で、「忍たま乱太郎」が私を形成する一部なのだと知るキッカケになりました。

「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」を見ようか迷っている人...特に、「子供の頃は見てたけど最近のはよく知らないし…」とブランクのある大人の人には、ぜひ一度見てほしいと思います。
あなたの中にも、忍たま乱太郎の記憶がしっかりと残っているかもしれません。
子供の頃の楽しみ方とは違う忍たま乱太郎の魅力を、ぜひ見つけてみてください。


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