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眉毛を剃りすぎた話

寝坊した。その事実に気がついた時の絶望感は、言葉では言い表せない代物だと思う。

12月某日。
私はとあるメッセージを見て飛び起きた。

「11:30待ち合わせで!」

紛れもなく自分が送ったメッセージだ。

現在時刻8:47。約1時間10分後に家を出ないといけないが、困ったことに私の支度スピードは遅い。

アラームは何度も鳴ったし、何度も止めた。スマホも(寝ている状態では)手が届かない場所に置いた。

それでも布団から出れず、ずっとゴロゴロしていた。結果この時間になってしまったのだ。

これはまずい。

かなり急がないと間に合わない。

飛び起きて、リュックに必要なものをひたすら詰める。以前にハンカチを忘れて絶望したことがあるので、一番最初に詰めた。
ティッシュに関して、以前未開封のポケットティッシュを突っ込んだから大丈夫なはず。

次に、朝食の調理に取り掛かる。ゆで卵を茹でつつ、トマトを洗い、パンを焼き、水筒に中身を入れる。火から目を離さないようにしつつ、こちらも水筒ケースに入れてリュックに詰めた。

支度スピードが遅いのに、なぜ私は朝食を食べているのか。その理由は、お腹が鳴らないようにするためだ。

恥ずかしながら、私は空腹時に鳴るお腹の音が大きい。以前静かな空間で何度も大音量で鳴ってしまい、とても恥ずかしい思いをしたことがある。

特に、静かな映画館。シリアス+音がないシーンでお腹が鳴ってしまった時が一番恥ずかしい。そのため、「映画系は家で視聴したい。映画館の場合、可能であればご飯を食べた後に…」と感じるのは私だけか。

「あっ、今この人お腹鳴ったな」と思われるのが嫌なので、朝ごはんを急いで胃に詰める。もちろん、ふぐぅ…では無く、腹痛を起こさないようにスピードは調整している。

殻剥きも、急いでいたためボロボロになってしまった。明日はちゃんと剥くぞと決意する。お皿を落とさないように洗って、次のステップへ。

歯を磨き、顔に水をぶちまける勢いで洗顔する。そして、次の段階で事故が起こった。

そう、化粧である。

私の周りでは化粧をしている人が多い。最近はメンズメイクも認知度が高まってきていると聞いた。そのため(多少は)気が楽になり、抵抗感も減ったと感じる。

ただ、面倒臭いことに変わりはない。

そもそも工程が多すぎるのだ。また、不器用な私の場合(大体1個は)ミスすることが多い。(はみ出したり、まつ毛と瞼を一緒に挟んだり…色々である。ちなみに、痛くて涙が出かけることもある。)急いでいると尚更だ。

そんな時、やらかしてしまった。

鏡を見ていると、左眉毛の形がガタガタになっていることに気がつく。

以前剃ってから結構な時間が経っているため、また毛が伸びてきたのだろう。

そこで私は、眉毛用の剃刀を手に取った。ガタガタになっている部分に当てる。

その時、首を少しだけ傾げていたのが良くなかった。

ザリっという音と共に、毛が剃られる。

あれ?

…剃られ…る?

ここ、いつもは細めに残しておく部分じゃないか…?

鏡を再び確認すると、左眉がまろ眉になっていたのである。

いやいや、ちょっと待て。

「なっていたのである。」で達観している場合ではない。どうにかして、隠蔽工作しなければ!

慌ててパウダータイプのアイブロウ(眉毛を描くやつ)を手に取り、まろになった部分に乗せる。少しぼかしつつ、線を作るとそれっぽい眉毛の出来上がりである。

その後顔中にパウダーを叩く。盛大なくしゃみをしつつ、ベースメイクを完成させた。鼻水は出なかったため、一安心。

ヘアセットを行い、前髪を垂らす。まろに上手いこと被せて、見えないようにしたら完璧だ。

これだったら、強い風が吹くか誰かに前髪を捲られでもしない限り、見られることはないであろう。

これを全て終えた時点で、出発時間ギリギリになっていた。

その後、待ち合わせ時間に遅れることはなかった。これで一安心である。

移動中、音楽を流していると”I’ve had enough of you”(意訳:お前には、もううんざりなんだよ)という歌詞が聞こえてくる。

いやほんとだよ。寝坊した挙句、眉毛を剃りすぎた自分にうんざりするよ、と自分自身に悪態を吐いた。

私は元々手先が不器用なのだ。折り紙は上手く折れないし、鋏で紙を切ろうとしても曲がってしまう。そんな人が急いで、眉毛を整えようとした。この決断こそが間違っていたのだろう。

この経験から学んだことは2つ。

1つ目、自身の起床時間はきちんと管理しなければならない。余裕を持って行動することが大事。

2つ目、急いでいる時に眉毛は剃るな。

以上である。

読まなくても良いあとがき:

前髪は結局めくれてしまった。隠蔽工作失敗。

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