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皆勤賞、なくなるんだって。

世界中のだれもが、一生に一度はスタンディング・オベーションを受けるべきだ。
だって人は必ずこの世に打ち勝つんだから。ーオギー

『Wonder ワンダー』 R・J・パラシオ 作

中・高生に有名すぎる本『Wonder ワンダー』の最後に載っている、物語の主人公オギーの格言。

顔に障碍のある主人公オギーが、小学校の卒業式で表彰されるシーン。

自分が空中にふわふわ浮かんでいるような気がした。すごく変。
かんかん照りの太陽に顔をむけて、強い風に吹かれているような感じ。

ぼくは自分が出ている映画でも観ているような、自分が自分じゃないような、気がしていた。

私は、この一節をふいに思い出したのだ。

それは昨日、娘が憤慨しながら学校から帰ってきたことによる。

「今年から、『皆勤賞』がなくなるんだって!」

そうか、ついに娘の学校でも。
かなり前から、全国で『皆勤賞』を無くす動きはあったから、驚きはしない。

『皆勤賞』は、学校を欠席しなかったことを表彰する。
娘の学校では、卒業式の日に名前を呼ばれて壇上でひとりひとりに賞状が渡される。

・社会の実情にそぐわない。
・さまざまな事情の児童がいて、休むことは悪じゃない。
・具合が悪いのに無理して学校に来ないで!
・皆勤賞?べつに偉くないでしょ?一度も学校を休まないなんて、むしろ気持ち悪い。

いろんな考え方がある。


だけど、娘はずっと頑張ってたんだ。
だから悲しいんだ。

普段からたくさん賞状をもらってる友達とは、きっと価値が違うんだ。

「そうだね、ずっとがんばってたね。」
ぎゅっとハグをした。

娘はわんわん泣いていた。


高校生の息子は、幼稚園から中学校卒業まで、12年間『皆勤賞』。
保育園時代に、ありとあらゆる病気をもらってきて、私が泣きながら週5で病院に連れていってたのが嘘みたいに。

普段から、
「勉強や運動が人よりちょっと出来る子よりも、学校を休まない、給食を残さない子のほうがママは嬉しい。」
と言っていたから。
それは、仕事をしている私のために、すごく助かっていたから。
ほんとうに、感謝している。

息子に『皆勤賞』がなくなる話をしたら、
「別にいいだろ。高校生になってから思うけど、ぜんぜん休んだっていいんだよ。今までのオレ、頑張りすぎ!これからは休みたい時は休むから!」
と言われた。
 そっか、『皆勤賞』嬉しくなかったのね。


むし歯がない、本をたくさん読む、給食を残さない、落葉掃きをしてくれた、友達を大切にできる、学校にはまだ、いろんな賞がある。

「そんなんもらって嬉しいか?」
そんな意地悪な声も聞こえてきそうだけど、私はいつも思う。

どんな子にも、ひとりひとりにスポットライトがあたる、『特別な瞬間』があってほしい。

だれしも、一生に一度は、それを体験するべきだ。

生きてるだけで、息するだけで、いっぱいいっぱいの子だっている。
その子の頑張りは、どこにいく?
だれにも知られず、ひっそりと、ここにあるのに、ここで光っているのに。


『Wonder ワンダー』のなかで、一番好きなのは、表彰されたオギーにママが優しく言うこのセリフ。

「そのままのあなたに、ありがとう。」

とても、とても好き。

『そのままの自分』を
好きって言われるのが、
どんな賞をもらうより、
嬉しい。



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