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隣の声

僕は最近、都会の一人暮らしを始めたばかりで安いアパートに引っ越してきたばかりの大学生だ。

部屋は狭いが家賃が安く、大学も近いので満足していた。

しかし、夜になると隣の部屋から毎晩聞こえてくる奇妙な声に懸念を覚えるようになった。

その声は夜になると聞こえ、何かをぶつぶつと言っていた。

声の主は中年の女性だろうか?いつも同じ言葉を繰り返していた。「返して…返して…」と、かすれた声で訴えかけている。

最初は気味が悪いと思いながらも、ただの独り言だろうと気にしないようにしていた。

しかし数週間が経ち、声はますます大きくなり、はっきりと聞こえるようになった。

眠れない夜が続き、ついに意を決した僕は隣の部屋の住人に文句を言いに行くことにした。

翌日、僕は隣のドアをノックした。
「すみません、おたくの声が昨晩もずっとうるさくて…」

しかし、返事はなかった。

不審に思った男は大家に隣の住人について尋ねた。大家は眉をひそめ、重々しく言った。

「その部屋には誰も住んでいないよ。あの部屋の女性は、数年前に心臓発作で亡くなったんだ。」

それを聞いて、恐怖に凍りついた。毎晩聞いていた声は亡くなった女性のものだったのか?
そして、なぜ彼女は「返して」と繰り返していたのか?

その夜、僕は再び隣の声を聞いた。しかし、今度ははっきりと聞こえた。
「返して…私の心臓を返して…」

僕は自分の胸に手を当てた。
心臓が、いつもより早く脈打っているのを感じた。

その時、僕は思い出した。引っ越しの直前、心臓の手術を受け、ドナーの心臓を移植されたばかりだったことを。


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