シェア
砂明利雅
2023年3月31日 01:02
「私に、侍女の働きをしろと?」 つい語気を強めてしまったことに気付き、慌てて口を押さえた。 机越しに向かい合う玉英が、頭を下げている。その隣で椅子に座る菊花様は、その大きな漆黒の瞳で彼女の顔を覗くようにじっと見上げていた。 ここは菊花様の部屋の隣で、元は侍女が住んでいた部屋だ。壁際の棚には巻いた糸や糸きりばさみなどの裁縫道具が並んでおり、また別の場所には化粧台がある。そこにも櫛や小瓶が置かれ