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宇宙ドラゴンとモルダバイト その2

何だか夏が早めに終わりそうなので、暫く空いてしまった続きを急ぎます(笑)

恐らくは、私が過去に体験したであろう少年の記憶はドラゴンとの時間だった。
星間戦争の時代において宇宙空間を飛び回るドラゴンとは生体でありつつもどこか戦闘兵器の様な扱いで、他の星ではそんなドラゴンを捕らえ戦闘マシンにするために生け捕ると言う行為、それは即ち犯罪なのだが、その様な捕獲も横行していた。

在る時少年はそんな生け捕られたドラゴンが敵方の星へと送られる護送船に潜り込み、彼らを開放しようと企んだのだが、ドラゴン達からそれは不可能であると拒まれる。

その際に、それでも、せめてこの子だけでも・・・
と、捉えられた母親であるドラゴンから涙ながらに卵を託されていた。

その母ドラゴンを含む大量のドラゴンが、捕虜として戦闘兵として、これから辛く悲しい戦の日々を送ることになるのは明白だった。
母ドラゴンは何としてでも自分の子供だけは逃したかったのだろう。
忍び込んだ少年に、自分の卵を託したのだ。

彼はそんな経緯で母ドラゴンから預かった卵を大切に大切に孵化させ、赤ちゃんドラゴンを愛し育てて行った。
いつしか自分の背丈よりも大きく成長したドラゴンと少年は、唯一無ニの親友であり、家族であり、大切な相棒となった。


しつこく書くがこれは古代宇宙における星間戦争の時代の記憶である。

つまり、どこどこの星系という大きな括りごとに信条、概念、この宇宙がどうあるべきかと言った基本的な意識の基盤が大きく異なる世界だった。

だからドラゴンに対する扱いや、接する態度なども星によって全く違う。
彼らシリウスのドラゴンライダー族にとってドラゴンとは大切な戦闘要員でありつつも自らの相棒として、一心同体の心の通い合うパートナーだった。

片やそうではない世界もあって、
序盤に私が見た戦闘シーンで暴れていた真っ黒な多頭ドラゴンなどは恐らく、捉えられて連れて行かれた先の星で遺伝子改造などが施されたものだ。
愛の概念、心というもの、それらを消去されたかのような怪物へと。


だから、彼らと戦うのはとても哀しいのだ。


本来ドラゴンという生き物は、とてもとても温和で献身的な愛の種族だ。
戦闘などもってのほかであって、その献身的な愛を利用するやり方は、やはりとても哀しいものだった。

かくして少年の内には、いつしか葛藤が芽生えて行く。
自らが大切に育てた大事な相棒と共に戦闘に出向くという行為はとても危険だが、それがドラゴンライダーとして在るべき姿であり、一族の誇りでもあるワケだ。

弟の心に芽生える葛藤に、リーダーである兄は冷淡だった。
あくまでもドラゴンは戦いのための要員であり、弟の心の揺れはチームの結束を揺るがす危険をも孕んでいた。

それに加えて弟の心には兄へのコンプレックスが上乗せされるからコトはより複雑になる。
兄への反抗心、コンプレックスから繰り出される無茶な戦闘スタイルと、
ドラゴンを危険に晒している己のやり方との葛藤は、次第に大きく膨らんで行った。

そしてついに事件が起こってしまう。

いつにも増して荒れていた弟は、兄の命令を無視して無茶な攻撃に出る。
そして無鉄砲に相手方へ深く切り込んで行ってしまった先に、遂にドラゴンに重傷を負わせてしまったのだった。

次第に動かなくなる自らの相棒。

肉体側のリアルな私自身も、涙が止まらなくなる。

彼は大切な大切な愛する存在を、自分の無鉄砲さによって失ってしまったのだった。

当然、兄からは厳しい叱責を受ける。
どうしてお前はいつもそうなんだ!!!! と。

不貞腐れ、思いの行き場を失った弟。
彼はより一層頑なになり、次第にチーム全体から孤立して行った。

規律、戒律を何よりも重んじるシリウスのドラゴンライダーチームに
その様な要員は不要だ。
明晰な兄は、弟をチームから外すことを決定する。

しかし弟の鬱憤、癇癪はとうとう爆発し、兄と対峙することとなってしまう。


皆の見守る中で、兄弟はついに、互いに剣を抜く。
決闘が始まった。

そして何と言うことか、弟は兄を倒してしまったのだ。

呆然とする弟と、彼を冷たい目で囲むチームの仲間たち。
その視線にいたたまれず、彼はその場を抜け出した。

いよいよ行く先が無くなった弟がフラフラとたどり着いたのは。。。


そこは、冒頭に出て来た真っ黒な多頭ドラゴンが捉えられている牢だった。
真っ黒な身体に小さく光る赤い目が、いくつもこちらを見据えている。

暗黒ドラゴンは人々のどす黒い想念を吸い取って益々そのパワーを増すシステムであり、その赤い目が捉えた弟の姿とは、とてもとても  ”美味しい”  感情を燻ぶらせた状態だった。

赤い目が、ギラリと鈍く光る。

弟は魂が抜けた様に、その真っ黒な姿に引き寄せられる。
次第に息が苦しくなり、意識が遠のいて行った。


私がビジョンとして視た世界はここまで。
それは自らの内に燻ぶる怒りやネガティブな波動によって暗黒ドラゴンに呑込まれた哀れで愚かな一人の少年のお話だった。

こうしたスターウォーズ的世界観が好きな方、無性に惹かれる方は、もしかしたら貴方の深い部分にも私みたいに宇宙戦争時代の記憶が潜んでいるかも知れませんし、貴方も同じシリウスのドラゴンライダーだったかも知れません。

さて、次回はこのお話がどう終息したかを綴ります。

橙香














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