家づくりの疑問をさくっと解決! “げげ流”お悩み相談室 〜耐震性、環境への配慮……家の性能は何をメインに考えるべき?
一級建築士であり、登録者数7万人を超える建築系YouTuberでもあるげげさんが、実際に家づくりをスタートした家族に対し、お悩み相談を実施! 誰もがぶつかる家づくりの壁から、個々の思いを家に反映する方法まで、家づくりの疑問をさくさく解決していきます。 これから注文住宅を建てようと思うなら、「先輩たちの悩みとその解決法」は、きっと参考になるはずです。
〈相談者プロフィール〉
Tさん夫婦夫婦と2歳の娘の3人家族。
Tさんは会社経営、奥さんは会社員で、現在ともに在宅勤務。家づくりの予算は5000万円で、神奈川県で検討中。
夫婦二人で働ける、快適な仕事部屋がほしい
Tさん夫婦(以下、T):YouTubeいつも観てます!よろしくお願いします!
げげ:ありがとうございます。というかTさんも、YouTubeをやってるんですよね。
T:そうなんです。だから、快適に収録ができて、かつ夫婦でストレスなく在宅で仕事ができるような部屋が欲しいっていうのが、家づくりの動機の一つです。
げげ:なるほど。ではさっそく、さくっと解決しちゃいましょうね。
T:よろしくお願いします!
げげ:快適さって人それぞれだと思うんですが、僕が考える快適な仕事部屋に必須なのが、窓ですね。窓をしっかりとることで解放感が生まれ、外の景色を眺めれば気分転換ができます。収録も、自然光がある程度入ったほうが、昼間はきれいに見えますよね。
T:窓は欲しいんですが、そうすると収納をどこにすればいいか……
げげ:確かに、窓を優先すれば壁が減り、収納スペースが削られがちですが、たとえばラックなどをうまく使えばカバーできます。(部屋の様子をカメラで映して)僕の部屋も、東側に窓を大きくとり、収納はこのラックを使っています。
T:設置型の収納グッズを使うとすると、部屋の広さが結構重要ですよね。
げげ:そうですね、もちろん広いほうがいいでしょうが、予算や建坪の兼ね合いもあります。二人で机を並べて働くなら、6畳から8畳ほどかと思います。ちなみに予算5000万円だと、土地の値段や家の性能にもよりますが、仮に坪単価50万円だとすれば40坪で2000万円、残りの金額で建物を作るなら、建坪は30~35坪くらい。そうなるとやはり、8畳以内には抑えたいかと。
T:そうなんですね。
げげ:あとは、収録という点でいうと、防音室にするのもいいと思います。例えばピアノを弾くならしっかりした防音が必要でしょうが、収録なら比較的ライトな設備でいいかと。予算はかかりますが、やはり快適ですよ。そのほかに、細かい点ですが、冷蔵庫や流し台などを設置し、ちょっと休憩ができるような環境にしておくのもおすすめです。
耐震性、環境への配慮……家の性能は何をメインに考えるべき?
T:耐震性能に関してなんですが、今、話を聞いている自然派素材推しの工務店は「木材の質がいいから、耐震性能も高い」って言うんです。木造の場合、やっぱり木の質によって耐震性能が変わるんでしょうか
げげ:……建築業界では、昔から言われてきたことを大切にする人がけっこういます。木の質がいいので地震に強い、吸湿性がある、熱効率がいい……。そうした話は、裏付けがないなら「ポエム」として聞いておきましょう。
T:ポエム……ですか。
げげ:はい。イメージだけの話は、あまり真に受けないほうがいいです。耐震性能を始めとした、家の性能に関わる部分には、できるかぎりその根拠を数字で求めるべきです。耐震性能でいうなら、代表的な指標は耐震等級。建築基準法を満たす「耐震等級1」というレベルでも、確かに倒壊は防げるかもしれません。しかし、家が残ったとしても、雨漏りや構造体の破損など著しいダメージが出れば住み続けられませんし、修繕にも大きなお金がかかるでしょう。それを考えると、耐震等級はやはり3を取るほうが安心して暮らせます。
T:家づくりの指標というところでいうと、「ZEH(ゼッチ)」を推しているハウスメーカーが多いように感じます。
げげ:その通り。創エネ、省エネ、断熱でエネルギーの自給自足ができる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」として、政府も推進する目標がZEHです。ただ、実はその基準は、けっこう緩いんですね。それよりも、「HEAT20」という基準の数字を意識したほうが、より環境にやさしく、性能の高い家を作れます。今後、より厳格化される国の基準に遅れをとらないためにも、より高レベルの基準であるHEAT20「G2」レベル以上を目指すことが望ましいと思います。
T:環境への配慮は、やはりしっかり考えたほうがいいでしょうか
げげ:そうですね。今はともかく。20年、30年経つと、環境に配慮している家が優遇されるようになるという流れは確実にあります。太陽光発電についても、環境を考えればやはりつけたほうがいいと僕は思っています。
T:なるほど。
げげ:ただ、性能の高い家を建てる第一目的は、家族が安心して健康に過ごしていける環境づくりです。耐震性はもちろん安心に直結します。断熱性でいっても、何十年も暮らす場所ですから、毎年冬でも暖かく過ごせるかが、家族の健康にかかわってきます。省エネはあくまでおまけのようなもので、家族の健康のために予算を割くイメージをもってほしいところです。
コスト、デザイン、性能の中で、重視したい要素はどれか
T:私たちは今、土地を探しているんですが、土地が決まってからじゃないと間取りを提案してくれない業者の方もいたりして、業者さんもなかなか決まりません。やはり注文住宅は「土地ありき」が基本なんでしょうか。
げげ:そんなことはありません。不動産と建築が切り分けられているのは、業界の問題点ですね……。確かに、架空の土地に対してでも、建築家に実際に間取りを作ってもらえば、お金がかかるかもしれません。しかしその前段階として、「こんなイメージなんです」と相談するのは、大いにありだと思います。
T:それを聞いてくれる業者さんを探すほうがいいと。
げげ:はい。ただ、業者さんを決める前だからこそ固めておきたいのが、自分たちの家づくりの優先順位です。家づくりを左右する要素は、コスト、デザイン、性能の三つ。このどれを優先するかをあらかじめ話し合って、それに合わせたパートナーを探しましょう。例えばコスト重視ならローコスト住宅、デザインなら建築設計事務所、性能はそれを強く打ち出している工務店、といった感じです。
T:コスト、デザイン、性能……。
げげ:これはあくまで僕の考えですが、間取りについては、そこまで大きな差が出ないと思います。業者間の差が出やすいのが、性能です。相手がどんな性能の家づくりが得意なのかという点だけは事前にしっかりと確認し、自分たちの要望と合っているか照らし合わせておくといいでしょう。
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