角打ち物語② 日本酒との邂逅と市場
伝家の宝刀!掌返し
時は2007年。
焼酎を買い集め、売らない酒屋に頭を下げ、とにかくリッチなラインナップを作る。そんな辟易し、疲弊する行為を焼酎ブーム最高潮の時にやめようと決意した。
お酒を造る人、お酒を売る人、それを紹介する人、それを飲む人、この4つのバランスが均等でないと、造り手の意図は歪んで飲む人に伝わるし、売る人のパワーバランスが大きくなると、いい酒なのに悪いイメージが付いたりする。
焼酎に関しては、その当時完全にバランスを欠いた市場であった。だからその歪な勝負を放棄する勝負に出たのだ。
そして、僕らが選んだ次の一手が「日本酒」だったのだ。
焼酎を40〜50種類集めて、焼酎がめちゃ強い角打ちだったのが、突然日本酒をメインに扱う業態にチェンジしたのだ。コレが伝家の宝刀「掌返し」であるw
なぜ日本酒だったのか?
答えは簡単。その当時の酒屋さんのボスにそう言われたからだw
その当時から今現在に至るまで約16年以上お世話になっている酒屋さん。それが千葉に本拠地を構えるいまでやさんである。
今や、東京でも5本の指に入ると言っても過言ではないくらい大手の酒屋さんだが、その当時はまだボスの小倉社長が現場でバリバリ営業をやっている時代だった。
お酒の選び方、勧め方、どうすれば蔵元さんの価値を伝えられるか。そのすべてを僕はこの小倉社長に叩き込んでもらった。
言うなれば僕の師匠である。
株式会社いまでやの小倉社長の哲学がわかる!私サンチェスとの対談は↓から是非一読を!
その師匠から「次は日本酒。間違いないよ。一緒に日本酒を日本に広めよう!」と言われたもんだから、私サンチェスは熱い男にめちゃヨワイので、「やりましょう!!!」と即答し、1週間後にはラインナップが日本酒にガラリ、と変わっていたのだった。
当時の日本酒を取り巻くイメージ
我々が焼酎の次に力を入れよう、としていた日本酒。
私は恥ずかしながら、日本酒の知識はほぼ皆無だった。「オヤジ臭い酒」「飲みにくい酒」「飲んだら悪酔いしそうな酒」そういった悪しきイメージを勝手に持っていた。そして、今日本酒をなんとなく敬遠している人々も同じようなイメージを持っていると思う。
こんなアンケート調査がある。当時の僕とかなりピッタリとマッチする。
◆日本酒のイメージ
日本酒のイメージは(複数回答)、「伝統的」が48.9%、「大人向け」が25.7%、「悪酔いする」「香りがよい」が15~16%です。女性20・30代では、「大人向け」「においがきつい」「男性向け」の比率が他の年代よりやや高くなっています。日本酒を週1日以上飲む層では「飲みやすい」「気軽に飲める」「親しみやすい」、日本酒を飲まない・飲めない層では「悪酔いする」「においがきつい」が他の層より高くなっています。
しかし、我々が日本酒を取り扱い始めた平成19年(2006年)当時、日本酒業界の現状は決して楽観視できるものではなかった。
高付加価値の純米吟醸酒の台頭
僕らが日本酒を取り扱い始めた平成19年(2006年)頃、日本酒はどうなっていたかというと完全に焼酎の後塵を拝していた。そりゃそうだ。なんせ焼酎ブームだったから。しかも、昨今の日本酒ブームを見ていると日本酒市場って順調に伸びてるんだろうな、と思われがちだがコレも勘違い。以下のデータを見てほしい。
国税庁「酒のしおり」より
増えるどころか減っているのである。
つまり、日本酒市場は縮小傾向にあったわけだ。
しかしながら、全体感として縮小傾向にある日本酒市場の中でも、新しい潮流が確立しつつあった。
それが高付加価値の純米吟醸酒の登場である。
この当時に生まれていた、日本酒市場の流れは大きく2つの動きがあった。
1 特定名称酒である純米吟醸酒の増加
平成19年(2006年)に僕らが日本酒を取り扱い始めたのだが、平成20〜23年頃から純米吟醸酒の割合が伸びてきているのがわかる。
2 高単価の日本酒が売れ始める
平成24年頃から、お酒の単価が急上昇しているのがわかる。
まさに、現代の日本酒のトレンドのスタート前夜だったわけだ。
僕が抱いていた日本酒のイメージ、そして日本酒市場の動きはこの平成20年を境に、明らかに変化が始まったわけだ。
僕がその当時抱いてた悪しき日本酒のイメージを完全に覆す、香り高く、且つ甘美でフレッシュでグラマラス、そんな日本酒がシーンに登場し始めた。その代表格が「十四代」「飛露喜」というお酒である。
角打ち物語③ 「十四代」「飛露喜」というお酒 に続く