市場で学んだ
勉強
実用
コミュニケーション
子どもの頃・昭和40年代の夕方、市場はカゴを腕にした主婦で一杯だった。
母に連れられて混雑した市場を歩き
私はおもちゃ屋さんの前で立ち止まりたかったのにいつも母は通り過ぎた。
おもちゃ屋さんの子どもが同級生だったので
子ども心に単純にうらやましかった。
さて母と一緒に八百屋さんや魚屋さんや乾物屋さんを見て回ったが
魚屋さんは素早く魚をさばいて
八百屋さんは新聞紙の袋にトマトを手早く・そっと入れてくれて
誰もが信じられないくらい計算が速かった。
自分はそんな店のおじさん、おばさんの様子と
そこにいた人たちのやりとりを見て・聞いた。
考えてみると
自分が魚のさばき方を覚えたのは母の台所仕事を見ていただけでなく
市場の魚屋さんがさばくのを見たり、教えてもらったりしたから。
「まずね、イワシさばいてごらんよ。こう、こうやってさ。」
「次、アジね。アジできたら、魚は大体おンなじだから。」
おかげでサケだろうとタラだろうと身おろしできるようになった。
市場ではお店の人たちばかりじゃなくて
近所のおばさんや、たまに友達とも顔を合わせた。
母はおばさんたちとニコニコおしゃべりしていた。
おそらく、今思い出せるよりずっと色々なことを
市場でのやり取りで学んでいたのだと思う。
そして学ぶだけでなく色々な人たちとやり取りすることで
コミュニティーに参加していたのだと思う。
人が社会で生きていくためには他人との交流が欠かせない。
市場の対面販売は確かにそういう場の一つだったのだ。