エゴイスト
自助、株主資本主義について。
お付き合いくだされば幸いです。
解雇規制緩和についての街頭インタビュー。
企業がクビを切りやすくなるのをどう思うか。
賛否あれど、支持するか否かで、そのまま強者と弱者と言い換えてもいいようなトピックであり、雇用の流動化が生産性を向上させるという言説もあるようですが(絶対ウソや)、解雇するだけでその後のフォローがなければ格差、分断が拡がるのは間違いありません。
賛成の、一杯機嫌の50代男性会社員いわく、
「無能な上司をクビにできるようになるのは、いいんじゃないすかね」
なかなか強気ですが、この男性の現在のポジションがそう言わしめたというのは想像に難くない。きっと自分は「有能」で、解雇とは無縁であると自認しているのでしょう。「無能」が足を引っ張っているとも。
ある主体にとって有利となる発言を自らすることをポジショントークといいますが、元々は金融業界の用語であり、刻一刻と移ろう状況に合わせた当座の「正解」であって、つまりは刹那的に自分に都合のいい波に乗るということ、それ以上でも以下でもない。
たとえば自助努力という。
あなたの今置かれている状況はあなたの努力が足らぬからであると、成功者は自己啓発本にそう記す。私のように努力なさいと。
本を売るためのポジショントークである。
自助、自己責任がもはや “常識” である社会にあっては、誰もがまずは己の生存のために己の利を考えることが求められている。刹那的であることも、利己的であることも人目を気にするようなことではない、自明のことであり、利他的であることは時に無能の烙印を押されることでもありましょう。
たとえ近江商人の「三方(売り手・買い手・世間)良し」の精神を実践してきた経営者であっても、背に腹は代えられぬ状況とあっては、己の信念を貫けば経営者として無能と謗られる、故に信念を捨てざるをえないこともあるように。
強者であれ弱者であれ、いかなる判断も「今」の「自分」の状況に因るもの。
今だけ良ければいいのか、
自分だけ良ければいいのか、
という問いかけには「あなたはエゴイストである」という暗黙の非難が含まれている。
されど誰もが人目も憚らず、自分に都合のいい波に乗ろうとするのは、長引く停滞、グローバリズム、並びに新自由主義的政策を推し進めてきたこの国に身を置いてきたからこそ、骨身にしみてわかっているから、先が見えぬからである。
個人を責めても分断をあおるだけでしょう。
問題は、誰に問うかである。
エゴイストを生み殖やしたのは誰なのかと。
ここ20年以上、この国では賃金は横ばい、企業は利益を上げても労働者には分配せず株主に還元してきました🔗。株主の利益を最優先させるアメリカ式の株主資本主義は2000年頃から顕著になり🔗、国内の日本株外国人保有比率(時価総額)はそれに合わせるかのように増えつづけ、2024年3月末時点では31.8%を占めるまでに🔗。
さて、昨日新しく総理大臣となる人が決まり、市場では株価の暴落と急激な円高があったとか。
与党総裁選の結果も金融市場の動きも、どちらも現象でありますが、現象の下には必ずその現象を生じさせた構造がある。
失われた30年、政治不信、アメリカによる抑圧、グローバリズム崇拝。
構造とは強固なものですので容易には崩せないでしょうが、為政者には対処療法ではなく根治療法を期待したいところであります(棒)。
お読み下さりありがとうございました。
この国こそ、強者の顔色など窺わず、生存のために自国ファーストであるべきでしょう。
新自由主義が生み殖やしたのはエゴイズムばかりでは
自分すらどうでもいいというニヒリズムも
果ては死か
今必要なのは
人目なんぞ気にせず自在に踊る活力でしょ