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あわ

蟹の子どもたちがうちに来てもう2年になる。
最初は小さな体でたまに白目を剥きながらブクブクと“あわ”を膨らませるばかりで、私は彼らがこの星の気温や湿度にやられてしまわないかひどく心配した。

心配をよそに蟹の子どもの体は透明な脱皮を繰り返し、少しずつ大きく厚い殻に着替えているようだ。毎日側で様子を見ているとあまりわからない。

蟹の子どもは喋るより先に絵を描くようになった。昨日描いたこの絵はどうやら“あわ”のようだ。“あわ”は蟹の子らにとっては大切らしく、大きな“あわ”やいい音の“あわ”を作れると誇らしげにこちらを見て笑う。

“あわ”の絵、多分水の中で見る大きな“あわ”

蟹の子らのふるさとは水の中の世界だ。調べたところ、水の中ではものが膨らんだり縮んだりしてこことは様子がずいぶん違うらしい。音は波となってずいぶん遠くまで伝わるのだという。だから蟹の子どもは聴覚が優位で、表皮に伝わる振動だけでなく精神の波長までよく聞き分けるという。

私は乾いた白羊宮の生まれなので、蟹の子どものふるさとである水の中の世界がわからない。ただ、私は白羊宮の本当に始まりの端っこ、振り返ったら海があるようなところに生まれたので海の生き物にはどこか懐かしさと憧れがある。憧れは理解に届かないけれど、蟹の子らと暮らすようになったのも縁があるからだろうと思う。

蟹の子どもたちの寿命は長い。このままいけば私よりも長く生きるという。せっかく海の外に出てきたのだから、たくさんこの地上を楽しんでいってほしい。

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sanagi apothecary
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