【今年のベスト映画】2ヶ月で12回 観たTHE FIRST SLAM DUNK
こんばんは。今年もいよいよ終わりですね。
この記事が2023年最後のnoteになります。
今年はおそらく人生で最も多く映画館で映画を観た一年でした。
『THE FIRST SLAM DUNK』(以下、ザファ)は2022年12月3日に公開されたので、今年の映画としていいのかグレーゾーンですが、私が観たのが2023年ということで見逃してもらいませう。
今は2024年2月28日に発売されるBlu-rayが届くのを首を長くして待っています。伸ばしすぎて大気圏を突破しそうです。
それにしても「同じ映画を12回も観るってどんな感覚?」という方がもしかしたらおられるかもしれないので、私の当時の心境も含めてお話しできたらと思います。
私も気に入った映画なら映画館で2、3回 観ることはあっても二桁はいったことがなかったので驚きました。
あと10年はここまでハマる映画はないと思います。
SLAM DUNKとの出会い
生まれた時には出会っていました。
というのも私の父がスラムダンク愛読者で全巻持っていたのです。その影響で母も読んでいました。
ところが私が3歳の頃に今の家に越してきて、その時に持っていた漫画のほとんどを譲ってしまったそうです。その中にスラムダンクも入っていました。
私にとってスポーツ漫画といえば『ハイキュー!!』なのですが、この話になると父はいつも「スラムダンクにはどんな漫画も敵わない」と言うのです。
ハイキュー読んだことないくせにと思っていましたが、私もスラムダンクを読んだことがなかったですし、読むつもりもなかったのでとくに話が広がることもなく別の話題になっていました。
なにせスラムダンクは私が生まれる前に連載が始まり、一世を風靡し、語り継がれる完結を迎えた作品。
わざわざ読もうと思うには思い入れがありませんでした。
そんなある日、『すずめの戸締まり(2022)』を家族で観に行ったらザファのポスターを見つけました。
私はすぐさまお父さんに「スラムダンク映画やるって!」となぜか興奮しながら伝えたのですが、当の本人はなんだか嬉しくなさそう。
父曰く、スラムダンクはあの終わり方がよかったんだ、あのままの状態で胸にしまっておきたいとのこと。
まあ本当に好きな作品ならその気持ちもわかるのです。
アニメーション会社や制作会社が介入するとどうしても作者や編集者が作り上げたものとは違う味のものができてしまいます。そこの擦り合わせができるかが脚本家や監督の腕の見せ所というもの。日本を代表するアニメーション会社である京アニやMAPPAはこういった面に優れています。
しかしながらザファは作画が原作から大きく異なっていました。
令和っぽい作画、なにより3DCGというのが当時の世代にとっては受け入れがたいものになっていたことでしょう。
平成中期からアニオタをしている私もうたプリが3DCG化した時はなんでだ?!と泣き崩れたものです。
おそらく父も当時の私と同じで、「スラムダンクの映画は行かない」とはっきり言いました。
そこから声優交代などで大炎上し(たしかに緑川さんの流川は何もかもがずるい)、気づけば上映が始まって6ヶ月が経っていました。
ある日、父がスラムダンク新装再編版を全巻大人買いして帰ってきたのです。
「急に読みたくなった。」
そう言ってしばらく部屋から出てこなかった父。
新装版の表紙は描き下ろしで、とてもカッコよく見えました。父がしきりに「せっかく買ったしりょうちゃんも読んだらいい」とリビングに飾るものですから、私もついに重い腰を上げて1巻を手に取りました。
これが私がザファを初めて観る1週間前の話です。
いざ映画館へ
正直、スラムダンク原作をスラスラ読み進めたのかというとそういうわけではありませんでした。
というのも読んだことがある方はわかると思うのですが、序盤は主人公・桜木花道がバスケにハマっていくまでが描かれています。私はそもそもバスケが好きでNBAを見る人間だったので共感できずにいました。
スポーツ漫画というよりは人情ストーリーの部分が強く、いつになったら湘北はチームになるのだろうと思いながら読み進めていました。
そして三井の部分で若干 心が折れ、やっぱり読むのやめようかなと思っていたらお父さんから「神奈川県代表決勝戦まではがんばって読んで」と言われ、しぶしぶ読み続けました。
私がスラムダンクにハマったのは、自分のミスで湘北が負けてしまったけじめだと桜木が丸刈りにしてきた場面。
それまでもそれからも桜木は試合で素人では片付かないほどの無茶を繰り返すのですが、このけじめをつける場面があることで桜木の中には確かにバスケへの情熱があり、チームの一員という自覚があることが示されているのです。
お調子者の揺るがない軸に弱い私はここでスラムダンクやばいかもと思うようになりました。
ここでスラムダンクの見方がわかった私は三井に対しても感情移入していくことになります。
原作では大事件を起こしたミッチーは意外とぬるっと部に戻ってきます。私は「ごめんでも済まされることじゃなかったけど?!」と湘北バスケ部の懐の深さに驚きました。とりあえずヤスはミッチーを1発殴っていい。
しかし大事なのは謝罪やそれを受け入れる美談ではなく、罪の意識を持ってそれを償おうと行動することだとミッチーから学びました。それでも謝れよとは思いましたが。
※その後、映画できちんと謝罪していたことが判明し、三井推しの私、無事死亡。
詳細は省きますが、神奈川県代表決勝トーナメントを勝ち抜いた湘北バスケ部はついに念願の全国大会の切符を獲得します。ところが2回戦で王者・山王工業と対戦することになり──、という王道ストーリーです。
この頃にはすっかりスラムダンクにどハマりし、最終巻まで一気読みしました。
怒涛の最終巻に圧倒されながら読了。
ありきたりですが「そんな終わり方ある!?」と思いましたね。物語にその先があることを願うけれど、たった半年の儚い物語でもあってほしくて、青い春を感じました。
読み終わったその日のうちに、その日の最後の上映を観に行くと父に伝えました。
お父さんは映画は見ないと言っていたけれど、私はやっぱり原作を見たからには映画も観ておきたいと思ったのです。
なぜかドキドキしたのですが、父からは「ごめん、もう見た。」と言われ肩透かしを食らいましたね。
そして「あ、パンフレット買ってきて。お父さんが観た時 売り切れてたからさ。」おい。めちゃくちゃ上映開始直後に行っとるやんけ。誘わんかい。
というわけで私は夜に一人で映画館に向かいました。
地元の小さな映画館だったので、お客さんの入りは少なく、ほぼ貸切で観れました。
ちなみに私は前情報一切なしで行きました。公式HPもYouTubeもネタバレも一切なし。
それではさっそく初見レポをしてきませう。
はじまりは、沖縄───。
ちょちょちょ、ちょっと待って?沖縄???
ど、どこから沖縄やってきた?????
てっきり体育館の前で湘北と山王が対面してメンチ切り合うとかそういうシーンから始まると思ってたけど???
そしてストバスしてる男児はどなた?????
リョータァ?!?!!!?!???!?
ええ〜〜〜〜!宮城って沖縄出身やったん?????
なにその絶妙な設定(笑)なんかの伏線???
冒頭は、湘北スタメン唯一の2年生PG・宮城リョータ(幼少期)と兄・ソータの日常が描かれます。
二人ともバスケ少年、とくにソータは身長も高くてチームの要を担っているらしいようす。その後すぐに宮城家にはすでに父親がいないこともわかります。ソータは家族の中でも精神的に中心にいる人物でした。
しかしまだまだ子供の部分も残していて、本人もそれを意地になって隠すわけでもなく、ありのままフラットな人柄であることが数分のやり取りで読み取れました。
宮城も兄に懐いていて、弟として素直に甘えられる存在だったようです。
ところがあるすれ違いが生まれ、それを解決できないままソータは帰らぬ人となってしまいます。
そんな過去を突然見せられたかと思うと、場面が全国大会が行われる広島の体育館のロッカールームに移ります。
一瞬「あの南国での出来事は夢だったの?」とも思えるほどの切り替えでした。
黒と赤のリストバンドを着けて、「いってくる。」と拳を握る宮城リョータ。
いよいよ神奈川県立湘北高校 vs 秋田県立山王工業高校の試合がはじまります。
結論から言うと、『THE FIRST SLAM DUNK』とは宮城リョータから見た山王戦でした。
別の世界線の話やIF話じゃなくて、原作では桜木が主人公として描かれていた『スラムダンク』を映画では宮城を主人公として描いた作品になっていました。
私はこの時点で大絶賛。
なぜなら宮城のポジションであるPG(ポイントガード)は、チームの司令塔と言われていますが、バレーボールのセッター同様、優秀なほど目立たなくなる漫画家泣かせのポジションなのです。
湘北メンバーの活躍の後ろには必ず宮城の華麗なパス回しがありますが、ストーリーの見せ方の都合上、描き切れてなかった感はありました。
原作でも宮城の活躍はあまり描かれてなかったですよね。
海南の牧を抑えていた宮城はこの試合の影の立役者だったみたいなナレーションはあったけど、それだけじゃ宮城のすごさは伝わらない!と思ったものです。
というか経験者からすれば「宮城って地味にめちゃくちゃすごいことしてるよな」とわかるのですが、バスケをしたこと/見たことがない人にとっては宮城はアヤちゃん大好きな騒がしい三馬鹿問題児の一人としか映らないのが本当に勿体ない!
なので脚本については、イノタケ先生のバスケ愛溢れる構想だと思うと同時に、インタビューで「キャラクターがどんな人物なのかは彼らと個々で話すと見えてくる」と言われていたのを思い出し、連載が終わってから何年も経ってからようやく宮城は自分の話をできるようになったんだなとも思いました。
宮城の過去、そして映画の中の現在軸はぜひ映画を観てください。
めちゃくちゃ泣ける。
兄弟妹の関係性、母親との溝、思春期の葛藤、自分への劣等感、バスケへの執着に似た愛情、再起、格上の同年代との邂逅、逆光に打ち勝つ底力、諦めない気持ちなどなど。
毎分推せるシーンが124分続きます。
それら全てがリアルで生々しくて、胸が痛くなったり熱くなったり、物語の最高峰までの疾走感を味わえる、そんな総合的に満足感のある作品でした。
私は帰ってすぐお母さんに「これは絶対に見ないとダメ」を連呼して、翌々日に連れて行きました。
あとスラムダンク読んだことない友達3人を個別で連れて行きました。全員 私がびっくりするほど号泣していました。一人はメリー号を燃やす時のそげキング並に泣いてました。
ちなみに私が布教用に作ったのがこちら↓
というわけで気がつくと終映した8月31日までの約2ヶ月で12回も映画館に通っていました。
朝練、昼練、夜練、実況解説付き上映に行きました。
もちろん8月3日11時30分の全国同時上映にも行きました。最高でした。沢北のチケット一生大事にする。棺桶に入れてもらう。
応援上映は日和って行かなかったので後悔してます。
でももう一回あったとしてもたぶん行かない(笑)
感動したのは実況解説付き上映。
ザファOPはノーマルでもバチクソ渋い。やっぱちょっとだけ語らせてください。
キャラクターが描かれていくのも最高なんですが、構図が最高オブ最高なんですよ。
無名の湘北高校は地をズンズンと歩いていき、王者・山王工業は階段を下りてくる。お前らとは同じ土俵ですらないと言わんばかりのシーン。つまり両校のパワーバランスを描いているわけです。
余裕の表情のエース沢北、一切の隙を見せないキャプテン深津(最終的に最推しになる男)、油断の欠片も感じさせない河田、野辺、松本。うーん、痺れる。
それでもってガラの悪い神奈川県第二代表・湘北。全員 何人か殺めてる?ってくらいの目付き。かわいい。
あらかじめ言っておくと、映画全体を通してリアルさが追求されています。その結果、やりすぎなギャグは省略。
そのせいで泣き虫の沢北や天然ボケの流川がただのイケメンバスケ馬鹿になってるのが一周して面白かった(笑)
話を戻すと、この激渋OPが実況解説付き上映になるとですよ。選手紹介になったんです。てっきり試合シーンだけだと思って気抜いてたからまじでビックリしました。
おそらく円盤ではこのあたりも特典で付くと思うので絶っ対に見たほうがいいです‼️
リアル超えてました。ただの現実でした。
脚本以外のとんでもないところ
何度も言ってますが、リアルさです。
こればっかりは人によって感じられない部分なのですが、はっきり言ってアニメーション作品の新境地に辿り着いた作品であることは間違いないです。
ただ悲しいことに普段からドラマ(実写)を見てる方にはピンと来ないかもしれません。
昨今のドラマは一昔前のお芝居感が強かった時代よりナチュラルさを重視している傾向があるので、なお感じづらいと思います。
ザファもあまりに自然で初見では見逃してしまうポイントが数え切れないほど存在します。
私は生粋のアニオタなので、ザファを見た時は度肝を抜かれました。私の知ってるアニメ作品じゃない。
ディズニー作品やジブリ作品のように根幹に統一感(独特の世界観)があると言えるほど作品数もないのでなんと表現するのが適しているのかわかりませんが、イノタケ先生の執念を感じました。
線の集合体を限界を超えて具現化させたのが『THE FIRST SLAM DUNK』なのです。
まずはモーション(動き)。
3DCGを使用していることもあり、基礎的な動きは手で描くよりそもそも高い次元にあると思うのですが、そこに2次元的な処理をすることであの独特な筋肉や服の質感が現れます。
アニメーションとしての地盤が固まっていることを前提に動きをリアルに近づけることで、あの作画ができていると思います。
視覚的な情報の中にアニメーションとリアル(実写っぽさ)が混同するので不思議な感覚になるのでしょうか。とても興味深いです。
ちなみにザファのディレクターやアニメーターは、選手たちの動きをより本物にするために自分たちもバスケをして理解を深めたそうです。これぞプロフェッショナル。
お次は音声(キャラクターボイス)。
アニメ版からキャストが交代し大炎上したのは知っていたのでぶっちゃけ身構えてました。
私個人の意見としては、上からで申し訳ないのですが、新キャスト陣はよくやったと思います。
そもそもスラムダンクのアニメが放送されていた時代のアニメは、元祖アニメ感というか特徴的な声が全面に出されていたので、今回のナチュラルさを追求したザファには根本的に適合していませんでした。
これもイノタケ先生のこだわりを強く感じます。
宮城や流川たちスラムダンクの登場人物は、超能力者じゃないし誰かを救うヒーローじゃないし何らかの使命を受けた勇者でもないんです。
どこにでもいる普通の高校生なんですよね。
全員漏れなくバスケ馬鹿だけども。
キャスト陣へのディレクションでイノタケ先生が強調したのは演技ではなく、自然に出た声だそうです。
三井寿のCVを務めた笠間淳さんは、ふっと力を抜いた時の声が三井なんだと言われて役を勝ち取ったそう。役者がキャラクターに合わせるのがこれまでの声優の常識でしたが、イノタケ先生の目指した形は役者とキャラクターの同化だったのでしょう。
言葉にするのは簡単ですがこれはとんでもない高難易度クエストなんです。
テレビで桜木花道のCVを務めた木村昴さんがお話しされていた「たった3文字のセリフを撮るのに3時間かかった」というエピソードからもわかるように、マイク前に立つとどうしても演じようとしてしまうのが役者なので、演じないでほしいというイノタケ先生のオーダーがいかに難易度が高かったことか。
ただ、宮城リョータのCVを務めた仲村宗悟さんは、個人的にイノタケ先生のやり方に嵌ったタイプの役者だったのだと思います。
本作の主人公であり、セリフ数も多く、キャラクターの解像度が上がる質量に対してうまくこなしていました。求められるものが高すぎてゾーンに入っていただけかもしれませんが(笑)
そしてサントラ(音楽)。
10-FEETの『第ゼロ感』、The Birthdayの『LOVE ROCKETS』はもちろんのこと、劇中のサウンドトラックが最高にかっっっこよかった…!
私のお気に入りは、「プレス突破」と「リングしか見えない」、「最強山王」です。
「プレス突破」は序盤、宮城が深津と沢北にダブルチームをつけられ20点差を開けられるという窮地から脱出する時のサントラです。
焦りつつもチームの司令塔としてクレバーに対応する宮城が死ぬほどかっこいいのと、宮城を信じてボールを渡した後すぐ走る三井も超かっこいい。
そんな三井の活躍シーン。いっぱいあるけど、「リングしか見えない」のところは格別ですな。
湘北で一番好きな選手は三井なんですけど、あのシーンは全員が徳男になると思ってます。みっちゃーーーん!!!
最後は「最強山王」。
これは後半の終盤に湘北に追いつかれ、窮地に立たされる山王がタイムアウト直後にゴールを強奪するシーンに使われたサントラですね。
何がかっこいいって「この程度のプレッシャー俺らは何度も乗り越えてきた」という圧倒的自負。高校生レベルの心臓じゃないんだって。
特にここの河田兄がクソ渋いんスよ。かっこよ。
行くぜ!復活上映
有給申請しました。
何がなんでも絶対に行くんだ。絶対にだ。
円盤をゲットしたとしてもやはり劇場で観れるなら1回でも多く観たいのがオタクの性質というもの。
もしかしたらもしかしたらイノタケ先生の新規コメントもあるかもしれないので、ワクワクが止まりません。
というわけで今回はここまで。
本当は山王への溢れんばかりの想いも語りたかったのですが、湘北への想いも語りきれていないので我慢します。
だがしかし、深津はいいぞ。
漫画として桜木や流川、沢北みたいに派手なプレースタイルが映えるのはわかるけど、宮城や深津のように華やかな舞台を作り上げてる影の存在が大人になると惹かれるようになります。
だって世の中にはそっちのほうが圧倒的に多いですからね。
そした二人とも真反対だとしても優秀なことに変わりはないので。
時間があればもっと語れたのに〜〜〜〜!
来年も映画館で観る映画を楽しみたいです。
それでは皆さん、良いお年をお迎えください。
喪中なので新年の挨拶は控えさせていただきます。
さあ大掃除のラストスパート!!!