#38 思い出を自らの手で形にして残す
(4歳のわが子が、15歳になったときに渡す手紙です)
最近、君は、らくがき帳で絵や文字を描くようになりました。黒いペンを片手に、ダイナミックに画用紙の全面を使って表現したいことを描いています。
それも最初は丸や三角の図形を描くだけだったのが、出かけた場所や家族のこと、幼稚園の友達のことを描くようになってきました。お友達の似顔絵と名前を書いて、一緒に遊んだことを説明してくれることもあります。
(画用紙にイラストを書いて、説明。まさにプレゼンテーションですね)
15歳になった君からしたら大したことがないと思うかもしれませんが、4歳にとっても結構難しいことです。なにせ、描くものが目の前にない状態で、頭の中で情景を思い出して描くわけですから。自分が体験したことを記憶している。さらには、それを文字や絵によって再現することが求められます。
何をしたのか、誰がいたのか、どこに行ったのか、は目に見えます。しかし、どんな気持ちだったのか、何を目的に行ったのか、いつ行ったのかは目に見えません。
4歳の君は、まず目に見えるものをきちんと自分の絵や言葉で表現できるようになりました。15歳の君は、目に見えないものを表現しているでしょうか。自分の気持ちを人に伝えるなんて恥ずかしい、とか思っていませんか。
私が思うに、今の君が生きている時代は、「言わなくても伝わる」なんて通用しないのではないでしょうか。何が好きで、何が嫌いなのか。賛成なのか、反対なのか。相手の気持ちを慮って、察することは大切ですが、それを相手に求めることはできないでしょう。自分の言葉で表現する重要性がますます高まっていると思います。
そして君が、仮に英語や中国語が堪能になっても、日本語ほど感情表現に適した言葉はないと、私は思っています(他国の言葉をたくさん知っているわけではないですが)なにより、目に見えないものを表現するときに、ベースになるのは「母語」です。外国語の学習をするのと同時に、母国語の学習を続けることをオススメしますよ。(私も学び続けているつもりです)
絵日記を描いていた君は、今どんなことを描いているのでしょう。文字や絵でなくても良いですが、自分の感情をイキイキと表現できる活動を見つけていることを願っています。