#10 新しい世界へのドアを手に入れて
(4歳の娘が15歳になったときに渡す手紙です)
「パパ、いりくちって書いてあるよ。こっちから入ろう」
君は、最近ひらがな読めるようになってきました。まだ、「わ」と「ね」や「め」と「ぬ」みたいに、形が似ているものが難しいようで、読めないものもあるけどね。
ひらがなが読める、と自信を持った君は、街にある看板やお店の中で字を見つけると、大きな声で読もうとしています。多少の間違いなんて気にしてません。「なんたって私、ひらがな読めるんだから」と自信満々に声を出しています。
今まで何度も通った道で見た、意味のわからない記号に関して、今では、意味と音を持つ「ひらがな」であるとわかったわけです。同じものを見ても、君に見えている世界が変わったんだと思います。
これは、すごいことなんだろうね。
「わからなかったことがわかる」
人間だからこそ感じられる
最高の感覚だと私は思います。
この手紙を読んでいる頃の世界がどうなっているかなんて、私は想像できません。けれども、きっと変わっていないだろうと思うことがあります。それは、人は何か新しいことを学ぶと楽しいってことです。
(ちょっとカッコつけて書いてます)
仮にその考え(わからないことがわかるのが最高の感覚)が、正しいとするならば、君に必要なことは「文字」と「数」、そして「身体」を自由自在に扱える力だと私は考えています。
人が何かを考える時は、必ず言語を使います。知っている言葉が多い方がたくさんのことを考えられるし、より細かく(深く)考えることができます。
そして、本当にそうなのか、事実を確かめたり、実験をしたりする時には数字を使います。より抽象的な概念を扱うのが数学。物事の考え方の見本が数学です。
また、自分の「身体」と思っても、人は想像以上に、身体を思い通りに動かせないものです。腕を地面と平行にあげている、と思っても少し斜めになったりしています。スポーツが上手になりたいなら、まず自分の身体を思い通りに動かせるようになるのが、上達の近道です。
さらに言えば、テクノロジー(最新技術)がどれだけ進化しても、その仕組みを理解するには、「文字」と「数」が基本中の基本になるはずです。プログラミング言語だって「言語」だからね。(君が読んでいる頃は、人間がプログラミングなんてやらない世の中かな)
何か新しいことをやらなければ、と悩んだりすることもあると思います。しかし、人間の知恵の基本は「文字」と「数」です。焦らず、原点に立ち戻ってください。