#33 「お前って言ったらいけないんだ」
(4歳のわが子が15歳になったときに渡す手紙です)
誰に教わったのかわかりませんが、君は両親が「お前」という言葉を使うことをひどく嫌います。「お前何やってんだよ」とポロっと言うと必ず「あ、お前って言った」と指摘が入ります。
私も君にそんなことを教えた記憶がないので、きっと何かの動画や幼稚園で聞いたことなんでしょう。子どもに言葉遣いを注意されるなんて、考えたこともありませんでした。
今でも君は、「お前」って言葉を使ってませんか。
お前という言い方は、確かに丁寧な言葉遣いではないですね。なんか乱暴な響きがあります。ただ、心理的な距離が近いからこそ「お前」と呼べるとも言えますね。通りすがりの人を「お前」と呼んだら、かなり驚かれるでしょう。
4歳の君にとっては、どのように呼ばれるのかがとても大切だったのでしょう。どれだけ自分や弟が大切にされているのか、その思いを測る指標だったのかもしれません。
親は子どもより強い立場にあるので、ともすれば無理やり言うことを聞かせようとすることがあります。そのようなときは、必ずと言って良いほど、口調がきつくなり、言葉遣いが乱れます。
丁寧な言葉遣いで怒っている母親を見かけたことはありません。(他の家のお母さんたちを見てもそうです)身近な人ほど、本音で感情的に言葉を伝え合うものです。
ただ、自分にとって大切な存在であるという大前提は忘れたくないものです。きっと君は小学生くらいまで「お前って言った」と私を注意していたのでしょう。
私は、子どもの注意に耳を傾ける親でしたか。きっと私が耳を傾けた分、君が私の言うことを聞いてくれることを願っています。