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Occupational Hazard
先日読んだとある論文で非常に考えさせられるものがありました。ジャーナリストが抱くストレスに関してです。具体的には戦場ジャーナリストについてでした。普通の記者と比べると、人の生死にかかわる状況や場面などに遭遇する戦場特派員は、かなりの確率でストレスにさらされるそうです。鬱になったり、不眠症になったりするとのこと。
確かにそうですよね。ごくありふれた毎日を送っていたら目撃しないであろう状況を目の当たりにするのです。カメラという画像を通じて見るのではなく、同じ場所で同じ空気の下でそれを目にすることになります。いくら仕事とは言え、いくら気が張っているからとて、それが蓄積されればかなりきついものがあると思います。
私自身は放送通訳業に携わって20年以上になります。映画の予告編で出てくる銃撃やホラーシーンなどはとても直視できないのですが、ニュースに出てくるものはなぜか普通に見られます。いえ、見ているというよりも耳から聞こえてくる英語を日本語に直すのに必死で、その場面をじっくりと吸収する間がないというのが正しいでしょう。
一方で、数年前のこと。動画サイトでとある惨状の現場を偶然見てしまったことがあるのですが、そちらの光景は今なお思い出しても辛いものがあります。CNNの戦場・事故現場の光景はほとんど記憶に蘇らないのに、です。
いくらCNNの放送通訳現場では仕事と割り切っているとは言え、それが一切自分の心身の深層部分に影響を及ぼしていないとは断言できない気もしています。疲れやすくなったりするのもそれが一因かもしれません。
戦場ジャーナリストのストレス軽減対策などは少しずつ広まっているとその論文にはありました。一方、戦場カメラマンへの対処は記者と比べると少ないそうです。そんな論文を読みながら、実は通訳者もそうしたoccupational hazardに対するケアが必要なのではないかと改めて感じています。