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イギリスの多国籍ストリートに見る難民の受け入れ
近所の多国籍ストリート
私はロンドンの通勤圏の町に住んでいますが、そのタウンセンターの端っこには私が気に入っている通りがあります。そこには、いろんな国の人による飲食店や食料品店が並んでいるんです。
トルコ、ギリシャ、ナイジェリア、クルド、韓国、シリアなどの食堂やレストラン、アフリカやアジアの食料品店、などなど。
イギリスでは、おいしいものは高いお店に行かないとありつけず、手ごろでおいしいものはあまりないので、私はほとんど外食はしません。
が、この通りのお店はちょっと別。全然おしゃれじゃないけど、多国籍でお手頃価格でおいしい。私は中東系の食料品のお店で、無発酵の平べったいパンを買って帰るのが好きです。
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クルド料理のお店
いくつかあるお店の中でも、一番気に入ってるのがイランのクルド人の家族が経営しているお店です。「食堂」って感じで、同郷の人でいつもとってもにぎわってます。こんなにクルド人がこの町にいるんだな、ってわかります。
おいしいし、安いし、いつも何かおまけしてくれるし、で、人と外食するときはよくここに来ます。
実はこのご夫婦は「難民」としてイギリスに来たそうなんです。クルド人は独立国家をもたず、イラン、トルコ、シリア、イラクに散在して住んでいます。
彼は故郷で特に大きな反政府運動をしたわけではないですが、クルド人であるだけで差別や迫害の対象になり、安全な生活が難しくなって国を離れざるを得なかったそうです。
そして家族で難民申請をし、それが認められ、こうやってお店を営んでいるのですね。そうすると当然、税金も払うわけです。子供も地元の学校に行き、この国の次の世代となっていくんですね。
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「難民を受け入れるのは、この国にとってもいいことだ」というイギリス人
日本では「難民」というと、ネガティブなイメージが強いのかもしれませんが、ここで私の周りの人に聞くと、必ずしもそういうことはないようです。
周りの人のコメントを紹介します。
50代の女性
「いろんな人がこの国に来るのは多様性が豊かになるし、いろんな才能を持った人もいるので、イギリスにとっても祝福だと思う。」
「難民受け入れについて、高齢者はまだ抵抗があるようだが、若い世代はオープンになってきている。」
40代の女性
「誰でも子供が安全に学校に行き、心配せずに買い物に行ける土地に行きたいと思うのは当然。だから、難民もイギリスで助けるのは必要。」
近所の60代のおじちゃん
「政治のこととか法律のこととかよくわからんけど、難民の人、私に危害加えないなら別に問題ない。頑張っていい生活切り開いてほしいと思うよ。」
ほかにも、「難民申請する人には母国でいろんな技術をもって働いていた人も多いし、国が多様性に満ちてイギリスにとってもプラスになる」という意見は複数の人からも聞きました。
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アインシュタインも難民だった
なるほど、そういえば私の大学のモルディブ出身の教授は、国連人権機関の専門家なども歴任している人ですけど、彼もイギリスに来たのは難民としてでした。祖国でクーデターが起きて、すべてを置いて家族で国を離れざるを得なかったのです。
もっと言えば、あのアインシュタインだって難民だったし、日本に関しては、洋菓子の「モロゾフ」の創設者もロシアからの難民だったそうです。
それに、人気ロックバンドQueenのボーカリスト、フレディ・マーキュリーもです。
イギリスの難民受け入れ
さきほどの多国籍の通りの端っこに、難民支援団体があります。そこで話を聞くと、人口15万人ほどのこの町には、なんと104か国から3000人の難民の人が住んでいるそうです。
イギリスはアフガニスタン、エリトリア、シリアからの難民申請はほぼ98%承認しているそうで、平均でも、2022年には最初の申請時に76%が認定されているということです。
イギリスは2012年に当時のメイ内務大臣は「イギリスを不法滞在者にとって敵対的な環境とすることが目的」としたhostile environment (敵対的な環境)政策を打ち出し、ビザの延長や認定などもきびしくなりました。
現在も、フランスからボートで入国しようとする人は締め出す、というような内容の「不法移民法案」が発表されていて、国連の特別報告者が共同声明で厳しく警告するなど、国内外からの批判が出ています
そういう風潮ではあるのですが、それでも難民認定率76%ってすごいですよね。
日本の難民受け入れ
一方日本はどうでしょうか?日本の難民認定率の低さは有名で(というか悪名高い)若干の推移はありますが、2022年までずっと1%にすら満たない状態です。
それをイギリスでいろんな国の人に話すとほぼ間違いなく、口をあんぐり開けて唖然とするか、ふきだします。
日本もイギリスも難民条約の締約国です。
条約は難民認定のための条件を定めていますが、日本はそれを厳しく解釈しすぎて、ほかの国なら難民認定されるケースも不認定。本国に帰ると拷問や殺害の恐れがあるので帰れない人もいます。そして再度申請せざるを得ないわけです。
しかし今、日本の国会で審議されている法案では、3回目以上の難民申請者の強制送還が可能になります。でも迫害を受けるおそれがある国への追放や送還は、国際的に禁止(ノン・ルフールマン原則)されているので、この法案はその原則の違反となります。国連の人権専門家たちも懸念を表明する書簡を日本政府に送っています。
日本の難民問題や入管の問題については『武器としての国際人権』の7章をぜひご覧ください。
「この国は私と家族にとっての恩人」
しばらく前ですが、先ほどのクルド人夫婦のお店で、難民として渡英した経験を聞いてたら、彼が胸に手を当てて、満面の笑みでこういったんです。
「この国は私と家族にとっての恩人だ。本当に感謝している」と。
ほかにもテレビで難民認定された人の「助けてくれたイギリスのために貢献したい」というコメントが紹介されるのも時々見かけます。
一方日本では、難民受け入れに対して、政府の後ろ向きな政策に加えて、まだまだ一般の人たちの意識にも抵抗があるようです。
「助けてくれた日本は私の恩人だ。」
「難民を受け入れることは多様性が増すので、受け入れ国にとってもいいことだ」
日本でもそういう声がもっと聞けたらいいのにな、と思います。