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詩誌「三」72号掲載【メンバーによるオンライン合評会】

ーー72号では、水谷水奏の作品「世の中じゅうの」について合評しました。

石山 「たのしい」と「たましい」。「いみ」と「きみ」。似た響きを持つ言葉を並べて書き進めていってるね。
文量が短いので、もっといろんな言葉を連想させて次から次へと言葉を展開させて書いてあっても面白そうかなと思いました。
全体にアンニュイな雰囲気の漂う、水谷さんらしい作品だね。
誰に対して「リフレクターキーホルダーをあつめてきてくれたらかんがえてあげる」と言っているのか考えてみました。
私の想像では、若い男女がいて、男の方は女の子の気をひきたいと思っていて、女の子はあまり興味なし。
嫌いではないけど、自分のこと気に入ってくれるのなら恋人候補にかんがえてあげるわね、というような、ちょっと小悪魔的な女子なのかな〜と読みました。
 
正村 どういうことなんだろう、つまりどんな詩なんだろう…と読めば読むほど、考えれば考えるほど、「いみ なんてありません」と言われているかのような、煙にまかれているかのような…そんな読み心地でした。
リフレクターキーホルダーのところから後半はかぐや姫感があって怖くて可愛い言い回しですね。
わからない…けど気になる…そんな作品だと思いました。
 
飯塚 最初の「いみなんてありません」で「え、どういう事?」って驚きがあって、その後があっさりと終ってしまって、「え、結局なんだったの?」とさらに驚きが。それも含めて「いみなんてない」というのにはこの詩自身も含まれていて、そういうユーモアというか遊び心の作品なのかなと解釈しました。最後四行の「まぁ、出来るわけないんだけどね」っていう言外ににじませている部分も合わせて。ここは串田孫一の「妖精」を思い出しました。
タイトルの「世の中じゅう」ってあまり使わない言葉(似たニュアンスだと世界中?)だけど、作品の雰囲気には合ってると思いました。特に「中」ではなく「じゅう」というところが。

正村 私もそう思いました!
「世界中」とするより肩肘張らないというかラフな気がするし、「じゅう」という表記のゆったり感もったり感? がこの作品の空気を作ってるように思います。

石山 漢字表記と、かな表記とでは、同じ言葉でも読んだ時の印象が変わるよね。かな表記だと、柔らかな優しい印象になるね。
水谷さんの作品を読むと、あえてかな表記にしてるんだろうなと思うことがよくあるよ。
串田孫一の妖精って、どんな作品か気になるね…。ググっても出てこない…。
 
水谷 少し前に「楽しいことをしたい」と言ったら、「楽しいって、どこまでの?」と聞かれたことがあって、言った方はきっとそんなつもりないし、嫌いな人ではないんだけど、「楽しいは、楽しいでしかないし、いつまでもどこまでも...」「私の楽しいは、草に寝転んで楽しい、みたいなことだから、いつだって...」と思って、勝手にどこか腹ただしいような、悲しいような気持ちになってしまって。それで書いた詩です。
「世の中じゅう」を感じてくれて嬉しいです。初め世界中、と書いていたけど少し違うなあと思って直しました。
ひらがなと漢字のバランスは気にしています。
どういうのがどういう場合にいい感じ、なのかうまく説明出来ないけど、書いて、見て、直して書いて、をしてます。
あとは世界中のリフレクターキーホルダーを集める、みたいな不思議でどうでもいいこと好きだなあと思ってひらめいて。
最初リフレクターも「きらきら」と書いてたけど、具体的な方がいいと感じて。ちょっとかぐや姫っぽさあるよね。
リフレクターキーホルダーが地球上から全部集まってきたらどれくらいの量あるのかはほんとに今でも気になる。
日本、小さな国だけど割とたくさんある気がしてます。
串田孫一の詩私も気になったけれど、見つけられなくて。どの詩集に入ってるのかとかもし分かれば教えてください。
 
石山 勝手に悲しい気持ちになってしまった…。なるほどね、そういうことってあるね。
 
正村 この作品のわからなさというのは水谷さんの少しの腹立たしさや悲しさから来ているのかなとおもいました。
 
飯塚 たぶん本人は意識してないんだろうけど、「楽しいをどこまで」ってなかなか難しい質問。
それを聞いてこの作品がどういう作品か分かった気がします。
ただ、そう考えるとこの作品が捉えどころがない (他の方が言うところの「煙に巻かれた」)印象を与えてしまったのは、「たましい」という一語のせいかなと思うのだけど、作者としてはきっと必要だったんだろうなという感じもします。
「世界中」と「世の中じゅう」の違い、世界中は地理的な意味も含んでて絶海の孤島や人の住まない山奥とかも含まれるけど、世の中は人間社会の方がニュアンス的に感じるので、「きみを知りたい」この作品にはやっぱり適していると思います。
妖精は詩ではないんだけど、「音楽の絵本」という本に収められていて、梅田先生が授業で取り上げられて、串田孫一を初めて知った作品です。
 
水谷 「音楽の絵本」ありがとうございます。見てみます。 
ちょうどたまたま、ふと串田孫一について気になって調べてたところだったのでタイムリーでした。


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