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【ラノベレビュー 33】 『アオハルデビル』

こんにちは、Kanonです。今回は…

池田明季哉先生の『アオハルデビル』の感想記事です。

あらすじ

その夜、僕の青春は〈炎〉とともに産声をあげた――
スマホを忘れて夜の学校に忍び込んだ在原有葉(ありはらあるは)は、屋上を照らす奇妙な光に気づく。

そこで出会ったのは、闇夜の中で燃え上がる美少女――伊藤衣緒花(いとういおか)だった。

「もし言うことを聞かないのなら――あなたの人生、ぶっ壊します」 

そんな言葉で脅され、衣緒花に付き合う羽目になった有葉。やがて彼は、一見完璧に見えた彼女が抱える想いを知っていく。

モデルとしての重圧、ライバルとの対立、ストーカーの影、そして隠された孤独と〈願い〉。

「……僕は衣緒花のことを、もっと信じるべきだった」 

夢も願いも青春も、綺麗事では済まされない。〈悪魔〉に憑かれた青春の行き着く先は、果たして。

 『 アオハルデビル 』池田明季哉 電撃文庫 2022年10月07日 発行 より引用

こんな人におすすめ!

  • ボーイ・ミーツ・ガールものが好きな人

  • 思春期の少年少女がアイデンティティに悩むお話が好きな人

  • ちょっぴりSF混じりの青春小説が好きな人

感想

恋愛モノではなく、"青春"小説

あらすじからわかるように、ある時主人公は学校の屋上で美少女と出会い、そこから主人公の人生が変わり始めるボーイ・ミーツ・ガールものでした。

しかし、ラノベにありがちな少々えっちな展開や典型的なラブコメといった要素は少ないです。

基本的には願いを叶えるために周囲に危害を及ぼす悪魔を祓うために、主人公がヒロインの願いを叶えようと奔走し、その過程でヒロインは自分の深層心理と向き合い、主人公は己のアイデンティティを確立しようと葛藤する。

そんな様を鮮明に描いた、とても読後感の良い青春小説でした。

かといって恋愛の要素が皆無というわけではなく、ヒロインの衣緒花は主人公の有葉を意識していることが窺えるし、ライバルのロズィも有葉に気があることがわかります。

ボーイ・ミーツ・ガールものには切ってもきれないのが"恋愛"の要素ですが、そこがメインなのではなく、あくまで物語の一要素に留まっている塩梅がとても良かったです。

少年・少女の心を浮き彫りにするための…

例えば『青春ブタ野郎シリーズ』では、思春期症候群という現象を通して、少年・少女たちの悩みが浮き彫りになります。

また『天使は炭酸しか飲まないシリーズ』では、主人公の「触れた相手の好きな人の顔がわかる」という能力を通して少年・少女たちの恋にまつわる悩みを解決する中で、人間関係が構築されていきます。

こんな感じでボーイ・ミーツ・ガールものでは少年・少女の心の形を浮き彫りにする何か、が重要になるのですが、本作ではそれを"悪魔"とそれを祓う"エクソシスト"という役割が担っています。

この"悪魔"がまた斬新で、"悪魔"は取り付いた相手の願いを叶えるべく、周囲に危害を加えます。

それを防ぐためには"エクソシスト"が悪魔に取り憑かれた者の願いを把握し、それを叶えることが必要になります。

この"エクソシスト"である有葉と悪魔に取り憑かれた衣緒花が、二人で願いを叶えるべく多くの時間を共にしていくという形で物語が進むのですが、その中で目標に向かって突き進む衣緒花を有葉の目線を通して見せられるので、すごく眩しい物語でした。

絵を使った演出が斬新

私が出会ったことがないだけなのかもしれないのですが、この作品では序章と1章の間にこんな感じのイラストが入ります。

この絵を使った演出がアニメの1話目、映画の始まりのような感じですごく斬新でした。

あるいは漫画で言えば、『あひるの空』の新章が始まる時もこういう演出がありますよね。

池田先生のアイデア?それとも担当さん?

いずれにしてもカッコいい演出ですし、ゆーFOU先生のイラストも半端なくいい…惜しむらくはカラーでないことくらいか…

総評

ヒロインの衣緒花の心の奥底に抱えた悩みを鮮烈に描き、与えられた役割と真摯に向き合う主人公の有葉くんがとてもカッコいい作品でした。

電撃文庫の特設サイトから続きは読めるようですが、僕はこの作品はお金を払って続きを読みたいです。

それにこの作品はアニメ化しそうな予感がする…

この本の前に読んだ『呪われて、純愛。』といい、電撃文庫の10月新刊がアツすぎる。


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