【ラノベレビュー 17】 『君は僕の後悔』
みなさんこんにちは、Kanon です。今回は…
しめさば先生の『君は僕の後悔』の感想記事です。
あらすじ
こんな人におすすめ
登場人物たちの心理描写をしっかりと読まされ、読書の世界に没入したい人
思春期の恋のすれ違いの物語が好きな人
青春ジュブナイル小説が好きな人
一人の女の子と向きあう系のストーリーが好きな人
感想
結弦の考え方
作中に何度か書かれている通り、結弦は『確かなもの』が好きで、『文章に書かれていることがすべて。文章の流れに身をゆだねればただそれを汲み取るだけ』という考え方でした。
なので、他人の言葉の裏に潜む「うらはら」を汲み取ることができませんでした。
また、自分の感情を押し込めて、爆発の寸前まで我慢し、結局最後には爆発するというタイプの人間です。
藍衣と交際していた中学時代には、その性格のため藍衣と破局してしまい、それが結弦の後悔になっています。
ただ、後悔しているのは"破局"したという事実そのものではありません。
という一文に表されている通りで、結弦は自由に振舞う藍衣に惹かれたものの、結弦自身は『確かなもの』を求めているので、結弦のこともお構いなく自由に振舞う藍衣と一緒にいても、確かな好意を感じることができず、辛かったということですね。
"ちょうちょ"の藍衣と"花瓶"の結弦
教室に迷い込んできたきれいな蝶は、教室の中を自由に飛び回る。
しかし、外に出ようとも窓が締まっており、結弦は窓を開けてあげるものの、蝶は窓とは反対の壁のほうへ向かいます。
見かねた結弦は花瓶とノートの切れ端を使って花瓶の中に蝶を閉じ込めます。
そして窓の外で花瓶の中から蝶を解き放ち、外の世界へと蝶は羽ばたく。
…というくだりがあり、これは蝶=藍衣、花瓶=結弦の暗喩になっています。
自由に飛び回る綺麗な藍衣に惹かれたにも関わらず、自由にではなく、結弦だけのものになってほしいという願望を実現した場合、結弦自身が花瓶ということになります。
足りないものは対話だった
結弦はただ藍衣が「結弦のことが好きだ」という証明が欲しかったんだと思います。
それを言葉に出して、藍衣にぶつけることができれば、きっと破局とは違う結末があったのかもしれません。
しかし結弦は「自由にいてこそ自分が好きな藍衣」という考え方にしばられてしまったせいで、それを口にすることができませんでした。
一方で藍衣も、「結弦ならわかってくれる」と考えていたからこそ自由に振舞っていたものの、それを結弦が汲み取ってくれることはなかったため、藍衣は藍衣で結弦のことを本気で好きでいるものの、言葉にすることはありませんでした。
こうして2人は1度はすれ違ってしまいます。
しかし、再会後、2人はそれぞれの気持ちを言葉にします。
藍衣「嫌いだなんて言わないでよぉっ……!」
結弦「嫌いじゃないよ!」
結弦「でも……」
結弦 「つらかった……」
結弦 「君と付き合って……ッ、僕は、すごく……つらかったんだ……ッ!」
このシーンで。これまで結弦の心理を読まされてきた読者は泣きそうになるのと同時に、喉に引っかかった魚の小骨が取れた気がしたのではないでしょうか?
総評
この作品を言葉で語るのは難しいのですが、この作品を読み終わったときの気持ちは、表紙絵・挿絵担当のしぐれうい先生が表現してくれています。
クライマックスまで
クライマックス後
以上、『君は僕の後悔』の感想 レビュー ネタバレでした。
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