【ラノベレビュー 14】 『呪われて、純愛。』
こんにちは、Kanonです。今回は…
二丸修一先生の『呪われて、純愛。』の感想記事です。
あらすじ
こんな人におすすめ
幼馴染ものが好きな人
背徳感ある恋愛ものが好きな人
記憶喪失モノが好きな人
主人公だけでなくヒロインの心理描写もじっくり読みたい人
感想
この1巻を単巻で読むだけでも楽しめる
記憶喪失モノというのはこれまで何度か読んできました。
このテの作品のいいところは、まず結論が提示されていてそこから過程が小出しになっていくところですよね。
最初は「?」となっているのですが、そこに至るまでの過程が徐々に明らかになっていくことで、次第に「?」から「次どうなるんだろう」と思われます。
そうしてページをめくる手が止まらなくなるわけです。
この作品の場合、序盤で提示される「?」はどうやら主人公は二人の女の子と恋人関係にあることと、何らかの"共犯者"であること。
特に"共犯者"という強い言葉と記憶喪失というのは、衝撃的な出来事を読者に期待させてくれますよね。
案の定、衝撃的な出来事が廻と魔子の間で起こっているのですが、そこまでは書かないでおくことにします…
実際に読んでみてほしいです。
後悔はしないと思います。
白雪と魔子の対比が鮮明
表は弱そうに見えるけれど、芯の部分で強さを持ち合わせている白雪。
表は強そうに見えるけれど、芯の部分は弱い魔子。
この対比が物語の中ですごく重要になっています。
物語の最初の時点では秘密の三角関係が出来上がっている状況なのですが、この三角関係は魔子が実は芯の部分でも強い女の子であれば発生していなかったはずなんです。
上部だけ取り繕うこともなく、真正面から白雪と魔子はぶつかりあってどちらかが純愛を手に入れる。
そんな未来があったのかもしれません。
しかし、気丈に見せていながら実は寂しがり屋で、嫉妬深くて、我慢強い性格だからこそ、魔子は白雪と真正面からぶつかり合えません。
廻と白雪が結ばれそうなことを予感していたからこそ、廻と魔子が"共犯者"となる出来事を利用して、二人は"本当の恋人"となります。
これはあれですね。
名探偵コナンに登場するベルモットさん曰く「Secret makes a woman woman」ですね。
同シリーズの映画『探偵たちの鎮魂歌』に出てくるセリフに「秘密を共有することが男女の中を深める」的なモノがありますが、まさにそれだなと。
作中で魔子が「表はあの子にあげる。でもーー裏はあたしがもらうわ」と言っていますが、誰にも言えない"共犯者"となった出来事を共有した廻と魔子の関係を"本当の恋人"と言っているわけですね。深い。
一方で白雪との関係は眩しいくらい王道のラブコメヒロインとして描かれます。
記憶を無くす前の事件で生きる気力を失ってしまった廻が立ち直るためのきっかけを与えたり。
家庭の中でうまく振る舞えない廻の相談に乗ったり。
引っ越しを廻に打ち明けた時、ふたりでそのまま駆け落ち未遂をしたり。
その後再会して恋人になったり。
眩しいくらいの青春イベントがこれでもかと盛り込まれます(笑)
本当の意味で惹かれあっていて、廻と揺るがぬ絆で結ばれているのは白雪の方なんですよね。
こうして廻と白雪が絆を深めていけばいくほど、嫉妬を深める魔子。
そうすると魔子は一層廻に背徳的な行為を迫り、白雪には言えない秘密を作る。
白雪には言えない秘密を作れば作るほど、何も知らない白雪の行為が健気で、可哀想に思えてきて。
すると罪悪感を包み隠すように、廻は白雪との思い出で上書きする。(最初に戻る)
っていうループを無限に繰り返すわけですね。
これが本作でいうところの、"呪い"なんでしょう。
総評
二丸先生のイメージは『おさまけ』しかなくて、最初この作品のタイトルを見た時は「たぶん本当に純愛モノなんだろう」と思いました。
(その割には表示の絵が背徳感あるなと思いましたが)
そして読み進めていくうちに「あれ?これはいわゆる最近流行りの『不純モノ』というやつでは」と思い始め、読み終わったあとは「本当に『おさまけ』書いた人か?」となりました(もちろんいい意味でです。)
本当にページをめくる手が止まらなくて、今年ベスト5に入る面白さでした。
余談ですが、あとがきにて、二丸先生自身が、胃が痛くなるような展開なのに面白くてしょうがないという作品が先生自身が大好きで『呪われて、純愛』はそれを形にした作品とおっしゃられています。
この作品、先述の通り単巻でも面白いのですが2巻に続くようです。
確かにこの後、白雪と魔子との関係がどう落ち着くのかがすごく気になるところ。
「二丸めぇ!この畜生が!いいところで終わってんじゃねーかよ!クソが!」という感じなのですが、
続きの2巻はすぐに出るようです。これは買わないと…